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April 03, 2014

アドラー心理学とトラウマ

 アドラー心理学本がベストセラーになる中で岩井俊憲先生が、少しだけ注意を促しています。岸見一郎著「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)にある「トラウマはない」というキャッチコピーのような文言に、読者は安易に「決めつけをしないように」とおっしゃってます。

 アドラー心理学ブームについて(4) トラウマを巡って(1)

 アドラー心理学ブームについて(5) トラウマを巡って(2)

 アドラー心理学ブームについて(6) トラウマを巡って(3)

 重要なところですので、私の臨床的経験からの考えを述べておきます。ここでもずいぶん前にアドラー心理学から見たトラウマについてテキストから引用したことがあります。

 トラウマとショック

 アドラー心理学ではトラウマという言葉を使わず、「ショック」というだけです。それをどうその人が使うか、ということが重要ということだと思います。
 トラウマがあるかなないかは定義の問題ですが、世間がそれを使うなら合わせていくことも大事でしょう。実際、昨年の北米アドラー心理学会誌では「トラウマ特集」の巻がありました。トラウマへのアドレリアン・アプローチが検討されていました。

 私自身は、トラウマには2種類あると考えるとやりやすいと思っています。心理学の基本中の基本の概念を使うだけです。

 一つはレスポンデント条件づけの結果としてのトラウマ

 俗にいう条件反射で、「パブロフの犬」で有名ですが、梅干しを見ると口の中に唾が出るとか、交通事故の現場近くを通ると思わず緊張するとかいうようなやつです。「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」ともいえ、生理的レベルで条件づけられて、思わず体と心が反応してしまうものです。
 災害や犯罪被害などひどい体験による一般的にいわれるトラウマは、このレベルの現象を指しているのでしょう。

 もう一つはオペラント条件付けの結果としてのトラウマ

 これはスイッチをつつくと餌をもらえる鳩など、「ある行動をするといいことが得られるのでその行動が増える」というやつで、ほめられれば親の求める行動をする、罰されるとしなくなるなど、私たちの生活は基本的にこの原理で動いています。
 問題は、「トラウマを使うといいことがある」と思ってしまった(学習してしまった)人が実はいることです。トラウマを表現することで、人生の課題や責任から逃れられたり、所属感が得られると思ってしまって、人生のシナリオに組み込んでいる人がまれにいます。

 アドラー心理学ではそのレベルの「トラウマ」を否定しているのだと思います。

 前者の条件反射としてのトラウマは生理現象みたいなものですから、EMDRとか曝露法とかが効くと思います。

 後者のトラウマ的行動には、より良い考え方(認知の修正)、生き方(勇気、共同体感覚など)を学んでいただくのがよいと思います。

 かなり大雑把な見方で合っていないかもしれませんし、レスポンデント的トラウマが認知など上位レベルの活動に影響を与えることもあるかもしれませんが、多くの急性トラウマ反応はやがて自然治癒することを考えると、大体こんな視点を持つことが現場ではいける気がしています。

「今、この人にとってのトラウマとはなんだろうか」と考えてみることが大切だと思います。

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