「栗本慎一郎の全世界史」
経済人類学者・栗本慎一郎先生の「意味と生命」(青土社)は、若い頃何度も読んだ本で、私のものごとの認識方法の重要なところを作っています。
その栗本先生の「遺作」ともいえる(本人がそう言っている)のが「栗本慎一郎の全世界史」(技術評論社)です。
一度目はざっと読んで軽くイメージを作り、二度目は精読したらぐっと頭に入ってきて、面白くて興奮しました。
世界史の隠れた主役はギリシア・ローマの西欧人や東アジアの中国人ではなく、ユーラシアの騎馬民族であったという論は、日本の古代やユダヤ人問題とも絡んで非常に面白い。
日本については、
日本の文化は中国や朝鮮とは全く違う文化だ。北満州やその先の北ユーラシアとむしろ直接的に繋がっている。
まず、日本列島の文化ははじめから世界的に孤立していなかった。青森の三内丸山遺跡は紀元前3500年ほどからのものだ。ただそれが世界とどう繋がっていたのかは、はじめから問題外にされてきた。
だが時期的に言って、ユーラシアの歴史と連携することを理解しなければならない。特に、太陽信仰における文化的要素の繋がりである。 p16
ということで、栗本先生によれば、そもそも日本は漢字文化圏ではないそうです。実際には漢字は、古代日本語を基軸にすることは変えずに、「補助」として使ったにすぎません。もっと大きなネットワークの中にいたということです。
古代日本とユーラシアのつながりについて、太陽のネットワーク(日本中の夏至線と冬至線の交点にたくさんの遺跡、聖地が設定されたこと)、聖方位(北を、実際の真北から20度西に振った方角を北とする考え。何とペルセポリスと鹿島神宮は同じ設計思想で作られているという)、大王(オオキミ、スメラミコト、後の天皇)の誕生(神武天皇)の日本神話と古代スキタイ神話が全く同じ物語構造をしていることなどを例示しながら、強く主張しています。
ちなみにヤマトのヤマについては、東イランから中央アジアでは「霊界」を意味する言葉で、トは古日本語で場所ですがユーラシアでも場所を表していたらしい。ヤマトとは「よい霊の場」「祖霊の地」という意味になります。ユーラシアにも、ヤマトはたくさんあるのではないかとのことです。興味深いですね。
本書は日本を含めた世界の歴史の骨組みを、経済人類学、生命論的視点から一気通貫的に俯瞰しています。個別の事実の実証が歴史学であるという研究者、歴史家(他の科学者、学者も普通そうでしょう)ではたどりつけない、見いだせないところを思想家が喝破した、というものです。
歴史好きは視点を大きく揺さぶられるかもしれませんが、哲学の生命論に対する関心がないと、ちょっと難しいかもしれません。是非、トライしてください。
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