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October 08, 2014

「脳を活性化する」

 武道がなぜいいのか、脳科学の立場から説明した良書です。

 有田秀穂「脳を活性化する-武道とセロトニン」(日本武道館)

 脳科学の先駆的研究者として知られる著者が武道や礼法、座禅、気功に興味を持って、それらの意義を脳科学の知見から考察したものです。
 図解も多く、脳科学からいえることを精一杯解釈するようにしているので、説得力があります。一般の人が脳科学の基本を学ぶのにもよいと思います。

 本書の主張は簡単といえば簡単で、武道や座禅などで重視される「丹田呼吸法」は心技体を鍛えるのに有効であり、それはセロトニン神経の活性化と前頭前野の血流増加によって説明できる、といったものです。
 全体的に、西洋のスポーツは興奮と外的報酬(金銭、地位など)を目標としたドーパミン神経活性化の道であり、東洋の武道的技法はセロトニン神経の活性化を通じてドーパミン的興奮を抑制し、共感を発達させ、記憶や表情、姿勢など様々なところにポジティブに働きかけるといいます。

 本書で考察されているのは、座禅、空海、弓、修験道、沢庵和尚の「不動智」、精進料理、茶道、能、俳句、小笠原礼法、四股、書道、王選手の一本足打法、日本の祭り、素潜り、空手、丹田呼吸法、気功など単に武道だけでなく多岐にわたります。文化論としてもおもしろいです。

 太極拳については次のように書いています。

 私たちは、動的な導引・吐納術として太極拳の研究も行い、同様な結果を得てきた。
 すなわち、吐く息に意識を集中させて、ゆっくりと呼吸法を実践するだけで、大脳皮質の活動が変容し、特殊なα波が出現するようになり、心理的には緊張・不安や心の混乱が低減、いわゆる平常心が得られる。自律神経の面では、交感神経と副交感神経の陰陽バランスが維持されるようになり、姿勢筋・抗重力筋の緊張が高まり、溌剌と若々しい姿が形成される。このような心と体への効果は、既述の導引・吐納術の効用とよく対応するのであるが、それをもたらすのは脳内セロトニン神経の活性化によるのである。 p271
 

 研究者としての著者の歴史も語られていて、医学生時代、海の素潜りにはまって、勉強そっちのけで日本中の海に潜るために旅をしていた変わった学生だったそうです。それで呼吸の大事さと潜ったときの幸福感が後にセロトニン神経への関心につながったというところが興味深かったです。

 武道の効用についてはいろいろな切り口があると思いますが、やはり現代人には科学、特に最近は脳科学を引っ張り出すと非常に説得力が上がります。還元論と言われればそうだけど、確かに心身相関の現象として、本書でいうようなことが起きているのは間違いないようだから、知識として取り入れればいいと思います。
 本書はそのネタとして大いに使えます。

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