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January 26, 2015

アドラー心理学って知ってる?

 先日深夜、NHKの「お正月スペシャル 100分de日本人論」の再放送を観ました。代表的日本人論を著名人が紹介するという内容で、松岡正剛さんが九鬼周造の「いきの構造」、赤坂真理さんが折口信夫の「死者の書」、斎藤環さんが河合隼夫の「中空構造日本の深層」、中沢新一さんが鈴木大拙の「日本的霊性」を取り上げていました。

 どれも書名は知っていて、内容も何となくあちこちで聞くので何となく知っている気がするという「名著」でした。でも、どれも実は読んでいない。
 最近私も50の声を聴くようになって、あと死ぬまでに読める本が限られていることに気づいたので、名作や名著と呼ばれるものをできるだけ読もうかなと思っているところです。
 今はドストエフスキーにはまってます。遅ればせながら。でも大半の人は名前だけ知っているという感じですよね。

 番組では日本人の心の深層にあるものをつかもうとする論者の話がとても面白くて、上記の本もいつかトライしたいです。

 一方でこういう知識人たちが、彼らに限らず、昨年あれほど売れた(アマゾン年間1位!) 「嫌われる勇気」やアドラー心理学に全く触れてないという現実にも気づきます。別にこの番組で取り上げろとか、言ってくれないからさびしいわけではなく、単純に興味深いと思いました。

 もしかしたら、これまで触れている人もいるかもしれないけれど、そういう感じはしないよな。

 これはそれ自体が、アドラー心理学の立ち位置や特殊性が現れているようで興味深いと思います。

「自己啓発の祖」とも言われるアドラー心理学は、社会評論や思想には役立たないといえばそうかもしれない。あまりに実践的です。私たちは岩井俊憲先生はじめ多くのアドラー心理学の本を、批評や思索のためではなく、使うために読んでいますから。

 しかし思想といえば、これほど思想的な心理学はそうはない気がする。実際件の書は哲学者が出したのだし、切り口はけっこう斬新で論理的です。アドラー心理学は明確に原理原則を主張する分、議論はできそうですが、実際はない。

 多分、リベラル系のマルクス、フロイト、ユング、ラカンなどを参照する知識人たちや右派系の背景(何だろ、伝統文化や三島由紀夫とか保守思想?)を持つ知識人にも相性が悪いんだろうという気がします。アドラー心理学はどっちにも属さないというか、どっちにもなり得るというか、関係なく見えるというか。

 あと知識人層にはフロイトの影響が大きすぎて、アドラーは「裏切った弟子」のようなイメージが強くて、精神分析学をよりどころに偉くなった人は無意識のうちにアドラーを軽んじたり、関心を公言できない感覚があると思います。どうしてもフロイトとアドラーは対立的な関係で語らざるを得ないとなってしまいます。

 これに対して、アドラー心理学側も、カッコよく言えばこれまで抽象的な議論に入らず、「実践」の「運動」にまい進してきたからともいえますが、悪く言えば内輪の中で運動とやらにふけってきて、学問としてのアピールや他の考え方をする人たちとの対話、議論を怠ってきたともいえます。

 反原発運動や市民運動もそうだけど、感情やパッションが動因になっているように見えるとイマイチ感を感じるのが専門家やインテリ層で、そういうのを見て「実践してない!」と批判するのが運動家というのはよくあること。

 そこのところは西の方のやたら頭の良い指導者に一時期期待しましたが、どうだったかなあ。今後の活躍に期待します。

 実は、臨床心理士の私としては、河合隼夫先生が存命の頃に、アドラー心理学とユング心理学の対話をしたかったという大それた思いがありました。しかし、河合先生が活躍していたころの私は年齢もキャリアも足りず、臨床心理士の仲間もほとんどいない中で、絶対に不可能なまま終わってしまいましたが。

 ただ、こう知られてきた以上、これからは、私の世代以降の方が、アドラー心理学を一般の人たちや運動家だけでなく、専門家や研究者を含めて、さらに広げて深めていくことになると思いますし、それが社会的責任だと思うし、そう期待したいです。

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