« 覇権は変わるか | Main | なぜ戦争が起きるのか »

April 11, 2015

「余剰の時代」

 怖い本です。でもおそらく、社会の極めつけの真実を突いていると思います。

 副島隆彦「余剰の時代」(ベスト新書)

 現代は物が余っているだけでなく、何より人が余っている。余った人をどうするか、どうやって食わすかが政治、経済の最重要課題であり、超難問である。それができないときはどうするかが最も難しい。結局、戦争という名の「殺処分」というのが本当の歴史ではないか、という怖い内容です。

 余剰・過剰問題は、ものすごく恐ろしい問題なのだ。触ると怪我をする。今の人間世界で解けない最大級の問題だ。
 ここで私ははっきり書く。余剰とは、ふつうは余剰生産物(余りもの)あるいは過剰生産(作り過ぎ)による過剰在庫のことだ。だが余剰とは、そんな生易しいものではない。余剰とは、ズバリ、余ってしまった人間たちのことだ。失業しそうな者たちのことを指す。だから、今のあなたが余剰そのものなのだ。 p5

 余剰な人間たちが出現した。だから、人間も大量に処分するしかない。それを戦争という。巨大な建物や都市文明そのものを爆撃で破壊してしまうのが戦争だ。が、ついでに人間もたくさん死ぬ。死んでしまうと腐るが、1か月も放っておけば地面の上で腐り果てて、消えてなくなる。あるいは、死体は埋めてしまえばよい。肉体はすべて地面に還っていく。そして、戦争が終わってから、もう一回都市をキレイに立て直せばよいわけだ。これを「スクラップ&ビルド」という。 p76

 私もあなたも、「余りもの」なのかも。普通、余りものは福があるというけど、実社会ではどうも難しそうな雰囲気です。

 著者によれば、この問題に気づいて立ち向かったのが経済学者のあのケインズやシュンペーターということです。
 ケインズは、とにかく需要を作れ、死にたくなかったら、戦争をしたくなかったら、「国が借金を抱えてもいいから、公共事業(パブリック・ワーク)をやりなさい。失業している人々に仕事を与えなさい。大きな道路や建物をつくりなさい」という考えで、実は基本的に今でも有効な考えです。すっかり私たちは財務省だかマスコミだか知らないけど、「無駄な公共事業!」というプロパガンダに洗脳されていたから、最近まで理解していなかった。でも、最近はさすがに見えてきた人もいるようです。

 他にもこの厳しい時代を生き延びる智慧にニーチェを引いたり、人権思想の歴史をヴォルテールとルソーの対決からわかりやすく解き明かしたり、思想史の勉強になる良い本だと思います。

 副島先生はニーチェの他に、リバータリアニズムという反税金、反福祉、反国家統制、反海外侵略という思想を強く勧めています。実はあの懐かしいテレビドラマ「大草原の小さな家」がアメリカでリバータリアン思想を体現した生き方らしく、確かに魅力的ですが、日本での実践はなかなか難しいかもしれません。

 まあ、「余り者同士」で仲良く食いつないで生きるにはどうしたらよいか、ここはやはりアドラー心理学の思想で、といきたいところではあります。

|

« 覇権は変わるか | Main | なぜ戦争が起きるのか »

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/81571/61424682

Listed below are links to weblogs that reference 「余剰の時代」:

« 覇権は変わるか | Main | なぜ戦争が起きるのか »