未来時間を創る
故森俊夫先生の「心理療法の本質を語る」(遠見書房)は、私には深く共感できる非常に重要なポイントが語られています。これがわかると何心理学だろうが、必ずセラピーがうまくなります。
それは、心理療法とは「未来のオプションを創る」ことだという主張です。「未来志向」です。本書で語られていることをメモします。
(森)人間って意外にオプションを持っていなくて、だいたいの人は、明日はこうなるっていうワン・オプションしかないわけですよ。それがいいオプションだったらいいけれど、悪いオプションの場合、悪いことしかなくなってしまう。特に患者さんはとってもたくさん悪いことがあるからね。だから、予想課題を出したときに、もちろん悪いオプションも思い浮かぶけれど、それ以外のオプションをとりあえず考えるんですよ。そのとりあえず、がいいのかな。とりあえず、いろいろな未来のオプションを考えること自体に意味があるかもしれない、というふうに考えるようになった。・・・(略)
黒沢 発見でしたよね。
発見だった。最初はなんで予想課題で患者さんがよくなるのか、よくわからなかった。でも、予想することで、未来のオプションをつくっていたのよ。こういう発見が未来志向につながっていくわけですね。だから、ダイレクトにこうやって聞けばいいわけです。「明日はどうなると思う?」「いつ治る?」「どうやって治る?」
黒沢 「どんなふうになっている?」とか
「ゆっくりやる?」「ちょっと急いでやる?」・・・・なんでもいいですけれど、未来にかんするいろいろなオプションを提示して、「どれがいい?」という感じの投げかけをすること。このこと自体がものすごく治療的な意義をもつ、というふうに今は思えている。 p123-124
ここは、アドラー心理学の真髄の部分でもあると私は考えています。
そこから森先生は、時間論に関心を持ち始めたとこの後で述べています。私も同様でした。未来志向を哲学的に基礎づけるには、単純に時間は過去から流れている、という常識というか、科学的というか、普通の時間感覚ではダメだと思っていたからです。いつかその話もしてみたいと思います。
現在というのは刻々と流れている。どっちに向かっても流れていける。この時に未来時間イメージが関わってくるのね。 p126
セラピストやカウンセラーが唯一できるのことは、今、現在進行形の未来時間イメージにちょっとした操作を加えてあげること。それが成功すればよくなるし、失敗すれば失敗。私はそう考えていて、解決志向というより未来志向なんです。未来をどう使うか、それに時間はかからない。瞬間に起こる。 p128
面白いなあ。
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