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December 01, 2015

『日本戦後史論』

 今年前半に出て評判になった内田樹・白井聡『日本戦後史論』(徳間書店)を読みました。対談なので内容がスイスイ入ってきて楽しい読書でした。

『永続敗戦論』で世に出た白井先生と内田先生ですから、当然日本の支配層のアメリカへの属国状況を厳しく指摘し、安倍首相からネトウヨまでの浅薄な愛国主義者たちのねじれた精神を批判する内容です。とても面白い。

 日本の問題を明らかにするところ以外に初めて知って興味深かったのが、第2次大戦後のフランスは、本来「敗戦国側」になってもおかしくなかったのが、巧妙に隠ぺいして「戦勝国側」になったことです。「敗戦の否認」はフランスにもあったのです。

内田 …今、フランスであれだけ移民の問題や貧富格差の問題や極右の進出が起きているのも、元を辿ればフランスなりの「敗戦の否認」の帰結なんです。自分たちがナチスに加担して、さまざまな戦争犯罪を犯し、ほんとうは敗戦国としてうなだれて終戦を迎えるべきだったのに、ド・ゴールの力業で「手の白い、戦勝国」として戦後国際社会に登場しようとした。その過程でさまざまな隠蔽工作をしたわけです。ヴィシー政府の官僚たちの相当数がそのまま横滑りで第四共和制の官僚になったわけですから、戦争犯罪の解明なんかできるはずがない。

白井 そのテーマで言うと、福田和也さんのデビュー作『奇妙な廃墟』(筑摩書房)という本、あれはもうフランスは言っちゃいけないことになっているところに切り込んだ本ということになるんですか。

内田 フランスではヴィシー政府の研究はほとんど出ないんです。・・・略

白井 それは公に禁書になっていたんですか?

内田 法律的に禁書であったということがあったかどうかは知りませんけど、そういう名前に触れることはほとんどタブーでした。  p228-230

 フランスで「ナチスに対するレジスタンスをしていた」と主張する多くはかなり疑わしい、いかがわしい人たちだそうです。

内田 (レジスタンスは)ノルマンディー作戦の後、戦局の帰趨が定まってから、それまでのヴィシーやナチスにくっついていた政治勢力が旗色の悪くなったドイツ軍に攻撃をしかけるという「勝ち馬に乗った」運動だった。極右勢力や民兵組織など、それまで相当あくどいことをしていた連中が「レジスタンス」を名乗る。 p230

 負けたこと、負の経験を認めることは勇気の要ることです。「敗戦の否認」は日本だけでなくフランスやドイツで戦争直後からありましたが、戦争当事者たちがこの世を去ってから、歴史修正主義者が表立って現れました。
 先般、戦中派で反戦を貫いた漫画家・水木しげるさんが亡くなりましたが、こんな時期に本書は最適と思います。

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