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March 26, 2016

『依存症臨床論』

 私は児童相談所に長くいたから子どもや思春期が専門と思われることが多いのですが、総合病院や精神病院、ハローワーク、開業などで実際は大人の臨床も多いのです。特に最近はクライエントの7、8割が大人です。
 
 その中で私がアルコール依存症のような問題に関わって7年目になります。
 
 依存症が専門と威張って言えるほどではありませんが、開業しているとアルコールやギャンブル、嗜癖の問題に出会うことがよくあります。基本的にはアドラー心理学と認知行動療法で対応しているのですが、依存症の心理臨床の歴史に詳しいわけではありませんでした。
 
 信田さよ子先生の『依存症臨床論」(青土社)は、その私の知識の欠落を補い、依存症臨床の歴史や位置づけを知ることができて大変勉強になりました。
 
 現在依存症治療のメッカとされる国立久里浜病院は、前回の東京オリンピックの際、町中で寝起きする酔っ払い、アル中(当時の呼び名)たちを一掃して収容するために造られたことを初めて知りました。
 
 なんにつけ、東京オリンピックが始まりになるこが多いですね。今でもその夢を追い続けている人がいるようですが。
 
 本書では、統合失調症が中心だった精神医学の辺境としてのアルコール依存症、そのまた辺境にいる心理臨床に携わる辺境者、越境者としての著者の視点が私の立ち位置とも重なり、面白かったです。
 
 本書は「現代思想」誌に連載されていたのを単行本化したものです。アルコール依存症とともに歩いた筆者の歴史と思想が綴られています。
 
 興味深いエピソードが多いのですが、DVという言葉を知ったことで、依存症者の妻たちの語る話が、「あれはDVだったのか」と著者にして気づいたというところが印象的でした。それまでは聞いてはいても、そういうとらえ方をしていなかったことに著者は愕然とします。言葉を得ることが、どれだけ大事かと思います。
 
「アダルトチルドレン」「共依存」という言葉を世に広めてきた著者ならではです。
 

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