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April 15, 2016

『親と子のアドラー心理学』

 アドラー心理学の子育て本はけっこうな数出るようになりましたが、本書はその中でも出色だと思います。
 
 
 アドラー本の中でも岩井先生の著者は特に多く、最近は大活躍されていますが、本書は先生のアドラー心理学の実践ぶり、人柄がストレートに表現されていて、「アドラー心理学を実践するとはこういうことなんだな」と読者は感じ取ることができます。
 
 それは本書で岩井先生は、息子さんの子育てで実際に実践されてきたことを報告しているからです。
 そして共同執筆者といっていいのが奥様。
 本書は奥様の子育て日記がベースになっています。
 息子さんの誕生から日記は始まるのですが、個々のエピソードを描く奥様の筆致が実に柔らかいので、岩井先生の優しいけどキッチリした説明と相まって、本書にふくらみを持たせています。
 
 これは『嫌われる勇気』において、単著だと哲学者的な硬い文体の岸見先生が、優秀な編集者とコラボして哲人と青年の対話というエピソードにしたら、とたんにわかりやすくなったのと共通しているかもしれません。
 
 だから本書は実質的には、息子さんも含めた岩井家の共著といえるでしょう。
 エピソードがベースなので、心理学の理屈が入りにくい人でも、そのエッセンスを感じ取ることができます。
 本書で展開される子育ては別にドラマチックでもありません。いわば、どこの家庭にもある風景です。むしろ、穏やか過ぎるくらい穏やかといえるかもしれません。
 
 障害や病気や事故に見舞われたわけでもなく、子育てに深刻に悩んだわけでもありません。その点はAmazonの書評の中にある通り、物足りなさを感じる人もいるかもしれません。マイナスからプラスへの飛躍が大きいほど、人はドラマ性を感じるものです。
 
 ただ、アドラー心理学を学ぶと基本的に悩まなくなるんですね。ネガティブな感情になりにくいというか。もちろん生きていれば、「困ること」はいっぱい出てきます。でもその困ることに悩むのではなく、静かに向かえるようになり、ことさら感情を振り回すことは減っていくことが多いようです。
 
 岩井先生たちはアドラー心理学を学んでからの子育てなので、しかもその理解度、実践力は飛びぬけていたので、実際の子育ては大体こんな感じになるのだろうと思います。普通はなかなかこうはいかないかなあ。私もそうだし。
 
 本書のメッセージは、
(1)親が子どもに接する基本的な態度は、「尊敬」「共感」をもとに「勇気」を与えること。
(2)親が子どもに接する際は、いつも「親が・・・・すると、子どもは何を学ぶか?」の判断基準を持っていること。
(3)親の態度と判断基準は、子育ての最終目標である「社会性」と「創意工夫力」と「臨機応変力」が育つよう「自立心」と「責任感」と「貢献間」を指針として、子どもが身につけられるよう支援すること。 p141
 
 私は本書を自分のオフィスのカウンセリング・ルームの書棚に置いて、関心のある人に目にとめてもらえるようにしようと思います。ペアレント・トレーニング・プログラムに参加できない人には、良いテキストになると思います。
 

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