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October 11, 2016

目的と目標

 アドラー心理学の基本用語について岩井俊憲先生が指摘していました。
 
 目的と目標の区別です。
 
  purposeは目的 、goal は目標と訳すべき、ということです。
 目的は本質的、長期的、目標は手段的、短期的のニュアンス、イメージでとらえているようです。
 ネットで「目的 目標 違い」で検索すると、同様の説明のサイトがたくさん出てきます。自己啓発、ビジネス系では共通認識になっているようです。
 
 実際ドライカースらの有名な「goals of disruptive  behavior」 と goal が使われていますので、goal は短期的な未来のニュアンスがありそうです。だから「不適切な行動の目標」と訳した方がよいことになります。
 
 同様のことは解決志向ブリーフセラピーの故森俊夫先生が、セラピーにおいてクライエントの解決イメージを作る際に、北極星と電信柱の違いを例えとして、長期的目標と短期的目標を区別することを主張されていました(『森・黒沢の解決志向ブリーフセラピーワークショップ』(ほんの森出版))。ただ、森先生は「ゴール」しか使っていなかったと思います。「ゴールには短期目標と長期目標がある」という言い方だったかな。
 目的と目標の区別はされていなかったかもしれません。よく覚えていませんが。
 
 きちんと調べていませんが、アドラー心理学の西の代表格、N先生とK先生の著作でもその区別はなく、「目的」が使われているようです。お二人とも概念にはうるさそうな人ですけどね。
 
 私の辞書で調べたら、日本語(目的と目標)も英語(goal  と purpose)もほとんど同義で、同じような例文が使われて相互に交換可能であるような感じで、ニュアンスの違いが分かりにくい気がしました。
 
 そこでアメリカ人の知人に聞いてみたら、「goal は end of doing something 、purpose は reasoning 、前者は到達 reach するが、後者は到達するとかしないは関係ない。両者は明確に違う」と言っていました。私の英語力では十分に確認できませんでしたが。
 
 goal と purpose の違いは明確だとして、目的と目標はどうか。自己啓発、ビジネス系の説明は明快ですが、「人生目標」という言葉や、アドラー心理学の「目標追求性」「最優先目標」と訳語に「目標」が使われており、purpose に近い感じです。「人生目的」「目的追求性」というのはなんかしっくりこないので、実際は目的と目標はデジタルに分けられるものではなく、重なっている部分も少なくないともいえます。
 
 訳語や基本用語を明確にしておくのは良いことですから、基本的には日本のアドラー心理学界がその方向に進むことは良いことでしょう。
 
 ただ、正直に言うと私の語感では、目標と目的の時間感覚は逆なのです。目標の方が長くて、目的の方が短い。あるいはほとんど変わらない。私だけかな。
 
 弓道をやっていたせいか、「的」は遠いといってもわずかな目の前にあって、一瞬に到達できるもの、目標の方が「道標」の感じで旅や散歩の感じで目指すもの、時間をかけて向かうというイメージなんです。目的は刹那、一瞬、目標は長い先にあるもの。「的に狙いを定めるから遠くにある。目的の方が目標より遠い」はありません。やはり私だけかな。
 
 だから拙共著『アドラー臨床心理学入門』(アルテ)では的か標か迷ったけど、自分の語感にしたがって、「不適切な行動の目的」にしたのを覚えています。
 いつか改訂の機会があれば「目標」に直そうかな。基本、日和見なので。
 
 まあソシュールの言語学やベイトソンのコミュニケーション理論によれば、語の音と意味に必然的なつながりはなく、恣意的であり、文脈関係のネットワークに依存するわけですから、本質的には辞書の中に「意味」というものはありません。私は私の文脈の中での意味づけであったと思います。これをアドラー心理学の文脈とどう関連づけるかということですが。
 
 さらに、アメリカのアドラー心理学の何冊かのテキストの索引を見ると、goal は用語として頻出するけど、purpose はなく、何かの説明で見た覚えがあるけど、アドラー心理学用語としては使われていないようです。やはり文脈の中でいろいろと使い分けているのかもしれません。
 
 だから日本では訳語としてこだわる必要はなく、「目的論」の説明言語として、岩井先生のように目的と目標を使い分ければいいと思います。その方が概念的に整理できればメリットがあることになるでしょう。あるいは気にならない人は、従来通りになってしまうかもしれませんね。
 
 改めてアドラー心理学のテキストを、少し注意して読んでみようと思います。
 

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