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December 01, 2016

『ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル』

 キャリア・カウンセリングのテキストで今最も注目されているらしいキャリア構成理論のマニュアルです。
 
 
 いわゆる職業相談、進路相談のような現場で今まで使われてきたのは、「職業ガイダンス」と「キャリア教育」という発想でした。
 
 職業ガイダンスは、心理学的な検査などで客観化されたパーソナリティーと職業とのマッチングを探るものです。キャリア教育とは、「発達課題という予測される軌跡を拠り所にして、成熟した態度や能力を個々人の中に育て、階層組織の内側でキャリアを展開していく準備をさせる p80」ことを目指すものでした。ハローワークや職業訓練校、学校などでよく行われてきたアプローチだと思います。
 
 しかし著者のサビカス氏は現代社会、ポストモダンの時代にはそれだけでは十分ではないと考えて、「ライフデザイン」という考えを提唱しています。
 
 それは、クライエントが自伝的ストーリーを語りながら、自分の人生の意味と目的を探っていき、自分の職業人生をデザインすることをカウンセラーが援助するものです。
 根底にあるのは社会構成主義、ナラティブ・アプローチです。本書ではそれだけを言っているのですが、実は著者のサビカス氏はれっきとしたアドレリアン、アドラー派の心理学者です。アメリカには氏が分担執筆しているアドラー心理学の基本テキストもあります。
 
 何より本書で展開しているアプローチがアドラー心理学のライフスタイル診断のエッセンスであることは明らかです。
 その証拠に自伝的ストーリーを抽出するために、早期回想(early recollections)の方法がしっかり使われています。本書では「子どもの頃の思い出」と訳されていますが、訳者は著者とアドラー派のかかわりを知らないのだろうか。
 
 私は本書などでサビカス氏のキャリア構成理論を知るずっと前から、甲府のハローワークで心理相談を月1回担当しているのですが、そこは病院臨床やスクールカウンセリングとはまた違った主訴やクライエントさんに出会います。症状や問題の改善、解決だけではなく、自分の人生を改めて考え直すアドラー心理学のライフスタイル診断の技法がとても役に立つことに気づいて、よく使っています。
 その点で本書は、私が実践していたことを裏打ちしてくれており、自信を持つことができました。
 
 ちなみに早期回想の方法については、拙共著『アドラー臨床心理学入門』(アルテ)で、私が解説しているので、関心を持った方は当たってください。
 
 キャリア構成理論は、「21世紀のキャリア・カウンセリングの語るうえで。最重要のテーマ」だそうで、『嫌われる勇気』に始まる日本のアドラー・ブームだけでなく、支援現場でもアドラー心理学が重要になってきたことを示しているのかもしれません。
 
 そして、山梨でサビカス流のキャリア・カウンセリングの講座を企画しています。詳細が決まりましたらここでもお知らせしますね。
 
 

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