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January 19, 2017

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』

 2011年に出版され、武道、格闘技関係者のみならず戦前・戦後文化に関心のある人たちに衝撃と興奮を与えた増田俊也著『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)をようやく読みました(大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品)。
 
 700頁にも及ぶ大作なので、ここ数年の多忙の中であえて手を出さなかったのですが(読みふけってしまいそうだから)、この年末年始の休みにやっと読むことができました。
 
 やはり、素晴らしかった。
 
 もちろん、不世出、無敵の柔道家・木村政彦の個性的で、凄まじく起伏のある生涯を追いかけているのですが、木村以外の有名、無名、歴史に埋もれてしまった武道家たちにも光が当てられ、戦前と現代の武道界がいかに断絶、変質してしまったか歴史的経緯も丁寧に説かれています。私も漠然と知っていたことが明確になったり、初めて知るエピソードもたくさんありました。
 
 熊本の貧乏の家に生まれた木村政彦はどういう人物で、どう育ち、どうやって強くなったのか。彼を創り上げた戦前の柔道界、武道界はどういう人物がいて、どのような状況だったのか。
 そして昭和29年(1954年)12月22日の、あの「昭和の巌流島」といわれた力道山との一戦の真相は何だったのか…
 
 普通の人は柔道は今の講道館だけであり、しかも明治時代に古い柔術に嘉納治五郎率いる講道館が勝ったから取って代わったと思っているかもしれませんが、史実は全く違います。戦前は講道館以外にも有力、強力な団体はあり、むしろ講道館より実力、勢力があったのです。木村政彦はそのすべての柔道界の中で頂点でした。
 その彼がなぜあんな無様な負け方をしてしまったのか。
 
 いろいろ紹介したいエピソードはありますが、まとまりがなくなりそうなのでやめておきます。
 常識や物事への思い込みを相対化してくれる本はいい本です。
 
 しかも構想から完成まで18年を要し、学術論文並みに徹底的に調べ上げながらも、柔道家でもあった著者の木村政彦や無数の武道家、柔道界への熱い思いもしみ込んでいて、読者の気持ちも熱くなる名著です。
 
 遅れて読んだ私が言うのもなんですが、是非一人でも多くの人に読んでもらいたい。特に武道関係者には。
Amazonより)

内容紹介

昭和29年12月22日----。プロ柔道からプロレスに転じた木村政彦が、当時、人気絶頂の力道山と「実力日本一を争う」という名目で開催された「昭和の巌流島決戦」。試合は「引き分けにする」ことが事前に決められていたものの、木村が一方的に叩き潰され、KOされてしまう。まだ2局しかなかったとはいえ、共に生放送していたテレビの視聴率は100%。まさに、全国民注視の中で、無残な姿を晒してしまった木村、時に37歳。75歳まで生きた彼の、人生の折り返し点で起きた屈辱の出来事だった。柔道の現役時代、木村は柔道を殺し合いのための武道ととらえ、試合の前夜には必ず短刀の切っ先を腹部にあて、切腹の練習をして試合に臨んだ。負ければ腹を切る、その覚悟こそが木村を常勝たらしめたのである。約束を破った力道山を許すことができなかった木村は、かつて切腹の練習の際に使っていた短刀を手に、力道山を殺そうと付けねらう。しかし、現実にはそうはならなかった......その深層は? 戦後スポーツ史上、最大の謎とされる「巌流島決戦」を軸に、希代の最強柔道家・木村政彦の人生を詳細に描く、大河巨編!!    

出版社からのコメント

『ゴング格闘技』誌上において、2008年から2011年まで、約4年間にわたって大反響を呼んだ長期大型連載が、待望の単行本化です。戦前、史上最年少で「全日本選士権」を制し、1949年に優勝するまで一度も負けず、15年間、不敗のまま引退。木村政彦は間違いなく日本柔道史上、最強の柔道家です。また、力道山戦の3年前、ブラジルに遠征し、ホイス・グレイシーの父、エリオの腕を骨折させて圧勝、その技が「キムラロック」として、世界に定着しており、総合格闘技の父ともいえる存在です。「鬼の柔道」を継承した師匠・牛島辰熊、そして自身が育て上げた岩釣兼生、三代続く師弟関係を中心に、戦前から戦後の柔道正史、思想家でもあった牛島による東條英機暗殺未遂事件の真相、プロレスの旗揚げなど昭和裏面史の要素もふんだんに織り込んだ、長編ノンフィクションです。著者の増田氏は、この作品を書くために、18年もの歳月を費やし、資料収集と取材にあたってきました。ボリュームある装丁ですが、増田氏の丁寧で真摯な取材と文章が、最後まで読む人の心を掴んで離しません。ぜひ、多くの皆様に読んでもらいたいです。

 

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