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February 14, 2017

庵堂蘭子は正しいアドレリアンである

 柔道家・木村政彦のことでも書こうと思ってたら、思わぬ日本アドラー心理学会のドラマ『嫌われる勇気』への抗議のニュースで、ネタが次々に浮かんできてしまった。黙っていると体に悪いので、すっきりするために書いておこう。
 雑駁なものだから、よい子のアドレリアンの皆さん、あまり真に受けないように。
 
 それにしても、ドラマなんだから笑いながら突っ込んでいればいいのに、毎週楽しんでいる身にとって日本アドラー心理学会は迷惑なことをしてくれたものだ。
 
 といっても抗議の内容や学会内部のことは私には関係ないし関心もない。勝手にやっていればいい。頭のいい彼らのことだから、きっと何か意味があるのだろう。社会のお役に立てればいいね。
 ただ、これに触発されて、私の視点から、このドラマをどう受け止めて楽しめばいいか、遊びのつもりで考えてみよう。
 
 日本国民の皆さん、あの程度で怒るアドレリアンばかりではないのだよ。
 
 私から見ると、庵堂蘭子は「正しく」「厳密に」アドラー心理学を実践しようとしているのは間違いない。どのような場面でも、相手が誰であっても、アドラー心理学の理論、思想、技法を忠実に実践しきろうとしている。まさに字義通り、理論通りに言葉を発していく。そしたらあんな感じになってもおかしくない。
 その結果が、周りの人たちの戸惑いだ。
 
 しかし、アドラー心理学の威力、実践力によって次々に問題を見切り、解決していく。素晴らしい。
 
 つまり彼女は、文字通りのアドラー心理学原理主義者なのだ(ちなみに私はいうなれば、折衷主義者、もっというとアドラー心理学ベースの心理臨床学統合主義者という自己認識)。
 
「そんなことはない!」「アドラー心理学とかけ離れている!」「あんなことは私はしない!」「あそこはこうすべきだ!」という真面目なアドレリアン諸氏もいるかもしれない。
 
 もっともである。私もあんな風には振る舞わない。でも、それはアドラー心理学の部分ではないかもしれない。あなたの「ライフスタイル」の可能性大である。あなたの自己イメージや他者イメージ、自己理想が作り出す、いつもの対人関係パターンだ。
 あるいはあなたのいる時代、空間の要請、価値観をあなたがいくらか受け入れた行動様式もあるだろう。そうしなければあなたは、集団のつまはじきだ。
 
 そして、「ナチュラル・ボーン・アドラー」という言葉に釣られて、勝手にあなたの「理想のアドレリアン」を投影したのに、庵堂蘭子のあまりの違いに怒りを感じたのだ。
 
 アドラー心理学に類似性の高い対人関係療法では、怒りは相手に対する「役割期待」が満たされない時に生じるという。「正しいアドレリアンはこうするべきだ」という行動を、こともあろうに影響力のあるテレビドラマで演じてくれなかったことに対して、イライラや、怒りを感じたのだろう。
 
 ナチュラル・ボーン・アドラーとは、アドラー心理学だけでできているロボットである。真面目なアドレリアンが戸惑うのは、AIの打つ手に戸惑う名人棋士みたいなものだ。
 
 だから、正しい考え方は、
「あんなのアドラーじゃない!」ではなくて、
 
「あそこに私がいる!」である。
 
 あなたは庵堂蘭子なのだ。
 
 アドラー心理学を学んだ以上、間違いなくその要素が入っているはずだ。
 庵堂蘭子と同じく、周りの人に戸惑いや怒りをわき起こさせたことがあったかもしれない。原理主義者に近いほど、そうだったはずだ。
 
 そう考えると今回の日本アドラー心理学会の反応は、自分の姿に直面した時に生じる「認識反射」とも考えられる。いや同意していないから、精神分析学でいう「治療抵抗」か。
 
 まあ、それは極論かもしれないが、庵堂蘭子が純粋アドレリアンであることはわかっていただけるかもしれない。
 
「確かに庵堂蘭子は理論や技法は愚直なまでに実践しようとしているかもしれない、でもアドラー心理学の最重要思想「共同体感覚」はどうか、彼女は共同体感覚に欠けているのではないか」、そう問う人もいるかもしれない。
 
 それについては、他の機会に考えてみたい。ただ以前、がんばれ!「嫌われる勇気」でも書いた通り、別に問題にするべきレベルとは私には思えない。一般社会人レベルであろう。共同体感覚は定義が多義的で、内容に限界はないので判定できないからである。
 
 こう考えることができれば、抗議どころか共感が湧いてくるに違いない。
 

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