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April 15, 2017

コンテキスト、プロセス、コンテンツ

 前回に続き、 『吉福伸逸の言葉』(コスモス・ライブラリー)より、メモします。
 吉福さんはセラピーを3つの要素から考えて、実践していました。
 
 コンテキスト、プロセス、コンテンツです。
 
 コンテキストはセラピストが作る場、雰囲気です。
 コンテンツはクライエント、セラピーの参加者がセラピーの場で表すもので、内容は十人十色です。
 吉福さんはセラピーにおいて、セラピストがクライエントのコンテンツをあらかじめ決めておくのを禁じていました。それはあくまで本人が自発的に、自然に現すべきものと考えたのでしょう。
 
「吉福さんは、セラピストが唯一、クライエントに本格的に提供できるのはコンテキストだけだと断言しています。 p41」
 
 ではそのコンテキストは何かというと、一般にはセラピストとクライエントの関係性やセラピストの志向する心理学的理論だと思いますが、吉福さんは究極のところ、セラピストの人間観、世界観のようなもので、いうならばセラピストの「人間の器」としかいいようがないものであると考えていました。それが、暗黙にクライエントに強い影響を与えているとしていたようです。
(引用開始)
 例えば、セラピストが怒りとはよくないものだと考えていたとします。するとそのセラピーの場では怒りというものが出てきにくくなります。セラピストが怒りというものに十分向き合っていない場合、セラピーの現場に怒りが出てきたとき、十分に対応することができません。セラピストの限界がそのままセラピーの現場に出てきてしまいます。 p41
(引用終わり)
 これは本当にそうだと思います。いわゆる苦手な人、苦手な問題、苦手な関係性はセラピストならみんな多かれ少なかれあると思います。
 
「セラピストの人間存在そのものがコンテキストなのです。 p42」
 
 そして、セラピーで最重要なのがプロセスです。
 
「プロセスとは、一言で言えば、セラピーの現場で起きるすべてのことです。
 濃密なコンテキストの内側で起きることは、ポジティブなことであれネガティブなことであれ、何らかの治癒的な経過の一つだと考えられます。 p46」
 
 プロセスはその人の自然治癒の経過そのものと吉福さんは考えるので、セラピーでは徹底してそのプロセスを信頼していきます。
(引用開始)
「コンテキストを提供することによって、参加者が、何が起こってこようと恐怖感や拒絶感なしにそれに触れていくことができるような状況を作るのが、セラピストに先ず要求される役割です」と吉福さんは言います。
 実際にはセラピストが用意したゲームや作業を通して、プロセスが起こり始めます。
 大切なことは、それら発言するさまざまな症状(プロセス)に対して、決めつけたり判断したりしないということです。  p47
(引用終わり)
 とにかくそのプロセスをクライエントや参加者がしっかり体験できるように、セラピストはその場にい続ける、という感じだと思います。
 この認識論からは、いわゆる病理論や診断行為は吹っ飛んでいます。
 
 具体的に吉福さんがどのようにプロセスを扱ったかは、本書に印象的なエピソードがいくつもあります。
 私も見たことがありますが、本当に解釈とか説明とかはなく、ただその場で必要なワークは提示して、そこで起こることをできるだけ表に出させようとしているのを側で見届けているように見えました。
 参加者は時に激しい反応を示したのですが、当時私は参加者としてそれを見て、人はこんな風になっても大丈夫なんだと、妙に納得した覚えがあります。以後、多少のことではビビらなくなったのは良かったかもしれません。
 
 もしそんな吉福さんがご存命で、最近の心理療法界をどう見るか聞いたとしたら、「型にはまりすぎている」、「人を本当の意味で自由にしていない」、と一喝するかもしれません。
 
 プロセスを信頼しきるとは、もしその人に症状やトラウマなるものがあったとしても、あくまで大切なのは、それを含めた生命としての治癒プロセスであり、それを促進させよ、ということでしょう。例えばトラウマがあって、過去に何があったかわかったり、脳科学的に脳がどうなっているかがわかったとしても、それはトラウマの原因でも本質でもなく、単なるプロセスに過ぎない、という風に考えたかもしれません。
 
 過激に聞こえるでしょうか。
 
 科学としての心理学は「行動の予測と制御」ですから、「予想するな、制御するな」というのは真逆かもしれせん。
 
 ただ、大きな枠組みでは、制御というか、ワークによって流れを作り、落ち着くところに落ち着くはずだという予測(信頼)はしていたといえるかもしれません。対象としている時間軸が普通のセラピストより長かったとも考えられます。
 また、吉福さんは行動科学としての心理学を否定していたわけではなかったことも念のため記しておきます。本書でも吉福さんは、「9割は認知行動療法で対応できる」と言っていたとあります。
 これは吉福さんが元々、「人間は機械である」という認識論をベースにした20世紀最大の神秘思想家、グルジェフをベースにしていたことがあったと私は推測しています。グルジェフについては、長くなるのでもうここでは言いませんが。
 
 とにかく、是非答えをうかがってみたかったです。
 
 

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