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May 17, 2017

『人間科学におけるエヴィデンスとは何か』

 心理学は、科学的とは何か、何がエヴィデンスになるのかについて喧々諤々と議論してきた歴史があります。
 
 私は研究者ではありませんが、アドラー心理学を学び、伝える機会が増える中で、何を拠り所にしたらいいか考える時があります。
 実は私は、「これが正しいアドラー心理学だ」といっても、あまり意味がないような気がしていました。ただの内輪向けです。つまりアドラー心理学界隈での差別化をしたい場合にだけ使えるということです。
 
 一方で、若い頃から竹田青嗣先生の著書を通して現象学に触れてきたので、自分が使うとしたらその辺かなと当たりはつけてきました。
 ただ、現象学も現代思想も簡単じゃないからいまだ半可通の域を出ませんが。
 
 
 著者たちの立場は量的研究ではなく、質的研究と現象学の立場から、心理学等におけるエヴィデンスを根元的なところから考えようとしています。
 
 私にはとても刺激的で、アンダーラインをいっぱい引きました。
 
 「自然科学のエヴィデンスと人間科学のエヴィデンスのちがいの問題」が、近代ヨーロッパの学問における「主観・客観一致の難問」にまで遡るものであることをまず指摘します。そのうえで、学問の客観性とは客観世界との一致ではなく、じつは「共通了解をどうつくりあげるか」という問題であることをフッサール現象学にもとづいて明快に示します。 (プロローグ)
 という竹田先生は、実証主義の心理学を丁寧に批判していて、私が昔から心理学に感じていた疑問に対してある答えを与えてくれています。でも多分、普通の心理学者はこういうところはあまり意に介さないかもしれないけど。結局、実証主義者と現象学者の溝は埋まらないような気もします。
 
 本書では、現象学の実践として、現象学的還元による「本質看取」の方法がワークショップのスタイルでわかりやすく説明されています。これは、「勇気」とか「共同体感覚」などのアドラー心理学をやっている人には自明の概念を改めて検討するときに使えると思いました。
 
 今度どこかでやってみてもいいかもしれません。
 
 本書を契機に、また現象学や質的研究にトライしてみたくなりました。
 特に臨床心理学を原理的、哲学的に考えたい人には良書だと思います。
 

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