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May 19, 2017

真のアドラー心理学

 アドラー心理学の世界も狭いようで広く、実践者によっていろいろなスタンスがありますし、あり得ます。現在たくさんの団体、グループ、個人が活動していますが、それぞれ特徴があり、キャッチフレーズみたいなものもあるようです。すべてを直接知っているわけではないので、以下は長年アドラー心理学界隈に過ごしている私の主観に過ぎませんが、代表的なものを。
 
 一つは、 「正しいアドラー心理学」を標榜するところ。何が正しいアドラー心理学かを追求し続ける姿勢のようです。
 
 その志や良し。
 
 男子たるもの(女子の方が多いか)、一つの学問を究めるなら、そうでなければいけません。
 
 おそらくそこから発信される情報は質が高く、参考になる可能性があるでしょう。
 岸見先生とその著作が、最高のモデルだと思います。
 
 でもおそらくすべてのアドラー関係者が「自分は正しい」と思っているだろうから、正しさをうたう以上、「その根拠は何?」ということにはなります。私個人は、どんな分野でも一人のカリスマが牛耳っていて、その発言が根拠になっているようなところはダメだと判断しています。
 
 また、私がアドラーに限らずいろいろな運動体を見てきた経験では、「正しさ」を内輪でだけ言い合っているうちはいいのですが、社会的なムーブメントとして動き出したときに、妙なことをしだす場合もあります。
 
 そうすると、「あんたらの正しさって何?」「おいおい、大丈夫か?」という疑問や心配が出てきてしまいます。
 
 ドラマ『嫌われる勇気』を巡る日本アドラー心理学会の抗議に対して、私がこのブログビジネスジャーナルの取材であっさりと否定した時がまさにそうでしたね。あれは「正しさ」を稚拙に適用した例で、私はほんとに心配したのですよ。
 
 ただ、私は「正しさ」を原理主義的に追い求めることは実は支持しているのです。クリアーさには惹かれますね。そういうものも世には必要です。
 政治でも思想でも社会運動でも、原理主義は、全体のあるパーセントは存在しているものです。そこでは、カリスマに夢中になるような熱狂的な信者みたいな人たちが盛り上げています。基本冷めている私には、ある意味うらやましい。
 
 それに対して「寛容なアドラー心理学」をうたっているのが、岩井先生のところ。 「統合的」と言い方もしているようです。ペルグリーノ博士や岩井先生の雰囲気や人柄が、まさに寛容さを醸し出していて、実際そのために様々な分野のたくさんの人たちが集う大きなグループ、ネットワークになっています。
 おそらく日本のアドラー心理学関係では、一番多くの人が集まっているんじゃないのかな。私もその一人。
 
 寛容さがキーワードですから、穏やかで、適度に保守的で、あまり過激なことは言いません。大人の雰囲気がありますね。
 ある有名な臨床心理学者がその関係者の集まりに出て、「ここはほんとに健康な人たちでいい。臨床系は暗くて何言っているかわからん」とおっしゃっていたのが印象的でした。
 
 そのため社会的に受け入れられやすいのですが、横に広がりすぎて、いかに深めるかということで課題を持ちやすいと感じています。
 
 長々と何を言っているかというと、先日アドラー仲間と会って話していて、自分たちは何とするか、となったときに、上の二つではない、 「真のアドラー心理学」というのはどうだろう、と言った人がいたからです。 「しんの、あるいは、まことのアドラー心理学」ですね。
 その時は、ただ笑い合ったのですが、なかなかいいフレーズかもしれません。
 
 真のアドラー心理学は、時には「正しさ」を原理主義的に詰める一方で、時にはそれにこだわらずアドラー心理学が本来持っている寛容さ、鷹揚さも失わず、その精神の本質を探し続けようとします。
 
 そもそもいくら議論しても、「真」なんて、究極的にはわからないのだから、そういう姿勢を持つことで、絶え間ない対話に開かれているともいえます。
 
「正しさ」はどうしても判定的、評価的なニュアンスが出ますが、真理なんてないというポストモダンの時代だからこそ、「真」を出すことに開かれた意味が生じると言えるかもしれません。
 
 ということで、私は、真のアドレリアンを標榜しよう。

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