虐待やトラウマの問題について、カウンセリングのみならず、研修や講演を話をする時に絶好の本です。
著者たちは児童相談所や情緒障害児短期治療施設などで心理職として働いてきたバリバリの臨床家みたいです。
一般の方、教育・保育関係者に、「扱いにくい子」の背景に虐待やトラウマの問題があるかもしれないこと、そういう子どもにどう考えて関わったらよいかをわかりやすく説明してくれています。
私も最近、この手の研修をする時にとても役に立っています。
トラウマというとアドラー心理学と関係ないと思われるかもしれませんが、アドラー心理学的に見ても本書のアプローチは共通するところが多く見られます。
アドラー心理学の子育てのモットーに「やさしく、毅然と Kind & Firm」というのがあります。
本書では「職員は威力よりも魅力」という表現でそれが表されています。
- 援助関係は支配関係の対極にあるべきで、恐怖感や威圧感によるコントロールは不適切
- しかし、指示や制止が効果を発揮する際に、子どもの中に「コワイから言うことを聞こう」という考えが介在することも事実
- ここでの「コワイ」とは、戦慄する恐怖ではなく、信頼する大切な大人が見せる真剣みへの驚き
- 「この人との関係は大切だ」子どもに思われるような魅力的な職員でありたい p31
愛着障害については、
「愛着障害」と言われると、とても大変で複雑な問題を抱えていて、何か特別なことをしないといけないような気がしてしまうのですが、「体験不足」と考えると話は単純になり、大人が何をすればいいのかわかりやすくなると思います。彼らは赤ちゃんの頃から、普通はもらえるであろう優しい関わりや楽しい思い出をもらい損ねてきたので、遅まきながら、今それを欲しがっているのではないでしょうか。 p37
として、トラウマを持った子どもを勇気づけて自立するための関わり方について教えてくれています。
子どもの臨床や教育にかかわる方はご参照ください。
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