アドラー心理学の未来
少し前に紹介した『Adlerian Psychotherapy』の終わりの方に、アドラー心理学の課題、未来のあるべき方向性を考察した章があります。著者以外にアメリカの主なアドレリアンが答えていて、いろいろな意見があるのが興味深いです。
例えば、著者は次のように言っています。以下、意訳、要約します。
・もっとアドラー心理学についての調査や研究をしたり、奨学金によって、エビデンス・ベイストのアドラー心理学(Adlerian evidence-based psychotherapy)の輪郭を描き出すことが必要である。
・アドラーのアイデアは、スクールカウンセリングの分野でよく確立されている。ペアレンティングやコンサルテーションや子どもの発達に関するガイダンスに力を入れているからだ。
・アドラー心理学は二つの領域に特に適している。一つは多文化やコンテキストを考慮しなくてはならない領域と、ポジティブ心理学のような成長志向、ストレングス志向の領域である。
科学的なアドラー心理学を目指す著者に対して、ドライカースの娘、エバ・ドライカース・ファーガソンは、反対のようです。
・多くのセラピストは症状とそれを楽にすることに焦点を当てすぎている。アドラー派のアプローチは、長期的な社会・認知的な変化(long-term social-cognitive changes)を目指すものだ。所属とか意味の感覚を。
・アドラーの社会変革の強調は、未来の心理学でも生き残っていくだろう。
反対にロイ・カーンという学会誌の編集長は、
・アドラー派のライターや研究者は、もっと他の認められたジャーナルで発表するべきだ。
・アドラー心理学を教える専門家、学部が必要である。
・アドラー心理学は大学をベースにしないと、その理論は心理学のテキストの中のただの脚注に過ぎなくなってしまうだろう。
とまで言っています。
このようにいろいろな意見があり、アドラー心理学の未来に対してある種の危機感を抱いている人もいるようです。面白いので、次回以降もメモしようと思います。
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