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December 27, 2018

『ひきこもりでいいみたい』

 子どもだけでなく、青年、成人のひきこもりが昨今問題になっています。一般に本人がカウンセリングに来ることは少なく、親や家族が来ることが多いと思いますが、どう対応していいか難儀しているカウンセラーは多いのではないでしょうか。

 今年夏に、私の知人がひきこもり本人、家族にとてもやさしく、支援者には実に示唆的な本を出しました。

 芦沢茂喜『ひきこもりでいいみたい 私と彼らのものがたり』(生活書院)

 タイトルがいいですね。

 著者の芦沢さんは精神保健福祉士、社会福祉士でソーシャルワーカー、私が以前勤めていた精神病院の同僚でもあり、今は山梨県の保健所で働いています。私は開業してからも、メンタルヘルス関係の講演の依頼をいただいたり、ケースを紹介していただいたりして、大変お世話になっています。

 芦沢さんは、ひきこもりの人がいる家庭に積極的に訪問します。ソーシャルワーカーの強み、腰の軽さを最大限に使って家族、本人にアプローチし、ジョイニングして、少しずつ彼らのニーズを引き出し、周囲や社会と折り合わせていきます。その手並みがすごく自然で、ユーモラスでいいです。

 家庭訪問する時の芦沢さんの車には、ドラえもんのポケットみたいにいろいろなものが入っています。

(引用開始)

 私の車の中には沢山の道具が入っています。ゲーム機、テレビ、プロジェクター、マンガ本、ライトノベル、コーヒーミル付き全自動コーヒーメーカー、雑誌(ゲーム、アニメ、歴史など)、プラモデル(ガンダムなど)、インスタント食品など、家族から聞き出したものを揃えています。使い方については後述しますが、私は車の中にある道具を想像しながら、訪問時本人と行うことを考えます。

 そして、前述のとおり、例えばゲームが好きということであれば、本人に渡してもらう手紙に、「今、Nintendo Switch(スイッチ)の○○をやっています。伺った際には、それをやって頂くだけでも結構です」という一文を加えることにします。

 本人はなんで私が来るのかを分かっています。家族が相談に行ったというだけで、自分の状況をどうにかしたいと思って、私が来るに違いないと思います。私であれば、そのような人と会いたくはありません。でも「ひきこもり」の問題とは関係のない、自分の好きなことであれば、少しの時間、会ってあげても良いと思うかもしれません。大事なことは、この少しの時間だけなら会っても良いと思わせることができるか否かだと思います。 p56

(引用終わり)

 いいですね。楽しそうな家庭訪問です。

 コーヒーが好きな人には、持参のミルで厳選した豆でじっくりコーヒーを淹れていきます。コーヒーがぽたぽたと落ちるのを、二人でじっと見ているのでしょう。

 また、集団活動は必要性が叫ばれても、なかなかひきこもりの人には難しいところがありますが、芦沢さんは所属機関で「ゲーム大会」を催して、ひきこもりの人たちを呼び寄せたりして成功を収めています。 

 公的機関でもここまでできるんだと、すごく参考になります。

 私も児童相談所時代、不登校児の家庭訪問をよくやっていました。ゲームやキャッチボールなんかをやりました。

 スクールカウンセラーになってからも、たまに家庭訪問をします。でも年を取るとなかなか子どもに合わせた遊びができないところがあって、どちらかというと親面接が主になっています。やはり世代的に、親にかかわるのはどんどんうまくなっていると思います。いや、もうすぐお爺ちゃん、お婆ちゃんか。

 こういうやり方は、若いうちにどんどん経験しておくといいと思います。

 スクールカウンセラーは家庭訪問ができない自治体があるらしいですが、できれば経験しておいてほしいと思います。本人や家族の暮らしぶりがわかりますし、メリットがいっぱいあります。

 特に若いお兄さん、お姉さんカウンセラー、ソーシャルワーカーは、本書にあるような感じでかかわっていってほしいですね。

 ひきこもりの支援者の方に強くお勧めします。

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