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February 25, 2019

『インテグラルシンキング』

 一昔前、トランスパーソナル心理学の論客として名をはせたケン・ウィルバーは、単に悟りを目指す個人の意識に留まらず、世界を真に統合的に見る視点を提供しようと思索し、現在それはインテグラル理論として発表されています。

 鈴木規夫著『インテグラルシンキング 統合的思考のためのフレームワーク』(コスモス・ライブラリー)は、それを丁寧に紹介した本です。

 著者の鈴木規夫さんは、昨年の日本トランスパーソナル学会で私と仲間が発表したときに座長を務めてくださりました。日本の斯界では代表的な先生です。なかなか謎の多いケン・ウィルバーの数少ない日本人の友人でもあります。昨年の発表の後、鈴木さんとお話しさせていただく時間があり、ウィルバーの近況や人物像などについて、大変興味深いお話をうかがうことができました。

 私は本書を学会の書籍コーナーで買い、早速鈴木さんにサインをいただきました。サインとともに書いてくださった言葉は、
「深沢さんへ
   あれもこれも」。
 まさに何ものも否定することなく、正当に位置づけて、使えるものは使い切ろうという統合的態度とお見受けしました。

 本書の原点は、アドラー心理学でいう「認知論」です。人は見たいものを見る、見たくないものを見ない、それらで自分の世界を構築する、単純で普遍的な真実ですが、私たちは自分の視点からの世界を正しいと思い込んで、他を否定してしまいがちです。

 結局のところ、「知る」という行為は、その人独自の「レンズ」を通して世界をとらえるということです。ひとつひとつのレンズは、その持ち主の感性にもとづいています。また、ひとつひとつのレンズは、その持ち主が生きている時代や社会の文化的・文明的な条件の影響の下に形成されています。世界のどこにも「これこそがいっさいの偏見を排して世界を完全にありのままにとらえている」といえるようなレンズはないのです。 p9

 まさに「認知論」ですね。

 ではどうしたら私たちは、統合的に思考することができるのか。そのための枠組みを提示しているのがインテグラル理論です。

 それは、「世界の四領域」という視点で示されています。

 四領域とは、「個の内面」「個の外面」「集団の内面」「集団の外面」です。

「私たちが経験することになる、ありとあらゆる状況や課題には、これら四つの領域が内包されている」といいます。

 本当にそうかな?と思うかもしれませんが、本書を読み進めていくと確かに世界の見方はこの四つに集約されそうなのです。ただ、私たちは自分の好みの世界観を採用しているため、他の世界観に明るくないのです。

 この枠組みに立つと、心理学者やサイコセラピスト、取り分け精神分析家やユング派は「個の内面」に住み、行動主義者は「個の外面」にいて、システムズ・アプローチやエコロジストなどは「集団の外面」、宗教団体や日本社会そのものは「集団の内面」を重視していることがわかってきます。

 読み応えがありますが、世界を俯瞰する視点を持ちたいときは、是非本書を熟読してください。

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