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September 09, 2019

『古の武術に学ぶ無意識のちから』

 武術研究家で著名な甲野善紀氏と、幸福学の研究者の前野隆司氏との対談本です。

『古の武術に学ぶ無意識のちから』(ワニ・プラス)

 この7月末に出たばかりです。

 徹底的なアナログの甲野氏と、実証主義で科学者魂を持つ前野氏との対話で、かみ合わないと思いきや、けっこう面白くてひきこまれました。それは知識人との対話に慣れている甲野氏の語りが哲学的な趣を持ち、前野氏も普通の心理学のパラダイムから飛び出そうという志向が強い方だからのようでした。関心が重なるのでしょう。

 そもそも甲野氏は、強くなりたいから武術を志したのではなく、「人にとって自由とは何か、運命とは何か」という解きようもない問いを人生の課題にして、それを解く手掛かりに武術を選んだので、こういう深い対談にはとても向いています。

 お二人とも楽しそうに語らっている様子がうかがえます。

 内容ですが、フローとかヒモトレとか、AIとか新宗教とか、出てくる話題は多彩で飽きることはありません。

 キーワードの無意識も本書に出てくるのは、精神分析学的な無意識でもなく、ユング的な無意識に近いですが厳密には違う気もします。あえて言えば、ポランニーの暗黙知とかミルトン・エリクソンの無意識観に近いものが感じられます。本書にもエリクソンの逸話が一つ出てきます。

 無意識の叡智を信じるという態度とそこから生まれる技術です。単にそれを信じるというだけでは足りません。武術ですから、できてなんぼの世界です。

「表の自分」と「そうではない自分」を操ることで全力で打ちかかてくる木刀をなんなく躱せるようになると、甲野氏は言います。最近会得した意識操作法だそうです。どういうことなんでしょうか。普通の型稽古の中にはそういう技もありますが、ガチで振ってくる刀をさばくのは容易ではありません。

 70歳を超えても高度な術理を求めて、体現してしまう甲野氏は凄いですね。ある人から聞いたことがありますが、甲野氏の良いところはそういう高度な技の体現だけではなく、稽古中に自分ができない、技が利かない場面になっても、素直に「利かないね」と認めて、威張らず、間違いから謙虚に学ぼうとする姿勢だといいます。

 とかく、武道家や格闘家は劣等感の裏返し、アドラー的には優越コンプレックスで、誤りを認めず威張る人が多いですからね。

 年をとっても若々しいお二人から、我々「後輩」も刺激を受けるでしょう。

 

 

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