「ケーキを切れない非行少年たち」の話を聞いた
12月に入って、4日(水)は山梨県中央児童相談所で行われた里親更新研修で県内の里親さんたちに発達心理学の講義、翌5日(木)は富士吉田市立下吉田中学校で「アルコール乱用防止教室」の講師をしました。忘年会の季節だから中学生も飲みすぎないで、なんてわけはなく、しかし親や周囲が飲むことを見る機会が増えるだろうから、この機会にアルコールの問題を啓発しようという趣旨です。
アルコールに限らず、ゲームや恋愛の依存性の話をいつもするので、生徒さんたちに受けていたようでした。
昨日13日(金)は受ける立場、山梨県精神医学研究会主催の講演会に行ってきました。
なんと今年のベストセラーのひとつ、『ケーキを切れない非行少年たち』(新潮新書)の著者、児童精神科医の宮口幸治先生(立命館大学)が来県、講師をされました。テーマは、
「ケーキの切れない非行少年たちの背景~困っている子どもたちの理解と具体的支援」
会場には県内の精神医療関係者、教育関係者、司法関係者がたくさん来ていたようでした。
私のように長年子どもや発達の臨床をやってきた者には実に共感し、勇気づけられる内容でした。それは別に感動的な物語というわけではなく、もっとシビアな現実だけど、具体的な方策まで教えてくれたからです。
それは知的な能力が十分ではない子どもや成人たちの持っている問題です。知能指数おおむね85~70程度のいわゆる境界域の知能の人たちは、考えることや判断すること、記憶することのもっと基盤にある「認知機能」が劣っているという事実です。そのため、生活や勉強や人間関係で失敗をしやすく、でもそれを周囲に理解されず、本人たちは傷ついて非行、犯罪や不登校になってしまうリスクが高いという問題です。これは臨床家ならだれでも知っている事実です。
実は本ブログでも随分前に、境界知能の子どもたちの存在と問題は指摘していました。
本ブログの最人気記事です。たくさんの方が訪れてくれたみたいです。関心を持つ人がいらっしゃるのかもしれません。
「ケーキを三等分に切る」といった簡単な課題がさっぱりできない、単純な図形模写はなんかいびつな形になってしまう、そんな少年たちをたくさん見た宮口先生は、彼らの根本的な問題は、家庭環境とか性格とかいう以前に認知機能の発達が遅れているからではないかと気がつきました。
認知機能が弱いと、
・口頭で何度伝えても、なかなか理解してもらえない。
・指示通りに動くのが苦手、伝えたことをよく忘れる。
・分かっていなくても「はい」と言ってしまう。
・周囲を見て適切な行動ができない。
・見落としが多い、被害的になることもある。
・目標が定められず努力するのが難しい。
・見る力、きく力、見えないものを想像する力が弱い (当日資料より)
といった特徴が現れます。
もちろん虐待や学校、社会の問題は多々あれど、そのような認知機能の問題を抱えた子どもたちに、単に普通の教育やしつけをしようとしてもまず難しい。いくら反省文を書かせても、約束をしてもほとんど無駄かもしれません。何を言われているか、まったくわからないわけではないけれど、十分に理解できないし、どう考えていいかわからないからです。
認知行動療法だって限界です。それは基本的な認知機能の上位の能力に働きかけているからです。
宮口先生の素晴らしいところは、単に境界域の子どもや認知機能の弱い人の存在を指摘するだけでなく、具体的な対応法、認知機能を高めるためのトレーニングを編み出したところです。
それをコグトレといいいます。
私も今回初めて宮口先生の仕事を知りましたが、スクールカウンセラーとしても知っておくべき内容だし、開業臨床家としても新たな道具にしてもよいかもしれないと思いました。
ちょっとやってみたいと思います。
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