東畑先生に学ぶ
先日の日曜22日は、山梨県臨床心理士会主催の研修会に行きました。私は一応会長なので、主催者側でもあります。
今売り出し中の気鋭の臨床心理学者、医療人類学の東畑開人先生(十文字学園女子大学)をお招きして、一日の研修会でした。
東畑先生は近年興味深い論文、著作を次々と出し、今年は沖縄の精神科クリニックのデイケアに勤務した経験をもとにした『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)で、臨床心理学界隈で話題になりました。私もうわさを聞いて読んで、大変面白く、感銘しました。
セラピーに燃える若き心理士が、統合失調症の患者さん中心のまったりとした生活が繰り返されるデイケアに放り込まれて、戸惑いと共に、デイケア独特のケアの在り方に気づき、ケアと心理療法の異同やそれぞれの意義について考察を加えたものです。
私もデイケアに勤務した経験があるので、「あるある」ととても共感を持って読むことができました。精神医療の内幕を知ることができます。
ところが本書自体はそんな固い内容ではなく、とても面白いのです。学術的に興味深いと言ったことだけではなく、単純に笑えるといったレベルでストーリーが面白いのです。すごい筆力です。
専門家内の内輪受けの本かと思いきや、一般の世界にも強く訴えるものがあったらしく、今回の研修会の直前に「大佛次郎論壇賞」を受賞したという知らせが入りました。「日本の政治・経済・社会・文化や国際関係などを扱った優秀な論考を顕彰することを目的にしている」賞(Wikipedia)で、過去には小熊英二氏や中島岳志氏、貧困問題の湯浅誠氏などが受賞しています。
先生にお会いした時に県士会として、読者として、お祝いをお伝えさせていただきました。
とにかく素晴らしい。これまで臨床心理学から世に出た書き手というのは、そんなにいません。
神話や古事記をテーマにしたりして、精神分析学やユング心理学などから日本文化を論じたもの(河合隼雄氏や北山修氏)、社会へのプロテスト・主張、啓発を目的にしたもの(信田さよ子氏など)、そしてアドラー心理学のように一般大衆に強い訴求力を持ったもの(岸見一郎氏など)がありましたが、みんな基本まじめな文体で、面白おかしい、という感じではありませんでした。『嫌われる勇気』もデフォルメされているけど、コメディ的というほどではなかったと思います。
本書はこれまでにない喜劇的な文体で、まったく画期的です。
そんなこれからの臨床心理学界、あるいは論壇を引っ張っていく予感の東畑先生の講義は、「ありふれたローカルな臨床論」と題され、臨床心理士の社会的位置、シャーマニズムや拝み屋さん、スピリチュアル関係のヒーラーたちと臨床心理士や公認心理師との異同(実は共通項も多い)、比較心理療法論、そしてケアとセラピーがまじわる日常臨床について、興味深い話ばかりでとても刺激的でした。
実はその前日に山梨入りした東畑先生と少人数で飲んだのですが、そこでも「ここだけの話」満載でとても楽しかったです。研修会終了後は会場から甲府駅まで、私が車で送らせていただきました。
実は東畑先生は自身の臨床では精神分析的アプローチをとりながらも、ヒューマン・ギルドで講座をしたこともあり、アドラー心理学についてもけっこう詳しい方です。
とにかく頭が切れる人で、しかも面白く語れるという稀有の人物です。
これからも注目ですね。
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