« 自粛要請の目論見 | Main | この時期に倒れた »

March 27, 2020

『インテグラル理論』

 まさに東京ロックダウン前夜か、という感じになってきましたが皆さん、お元気でしょうか。

 まあ私の山梨は元々ロックダウンされているようなところで、ホントにするとしても主要幹線道路と鉄道を止めればロックダウンできてしまいます。数年前の大雪の時はまさにそうでしたね。

 新型コロナや自粛についていろいろ思うところはありますが、せっかくの自粛ですから本を読んだり勉強する時間にしたいですね。

 アドラー心理学をさらに進化させるために、そしてポスト・コロナの世界を展望するために、最近トランスパーソナル心理学のケン・ウィルバーに改めて注目しています。大学時代、『意識のスペクトル』(春秋社)で心理学、神秘思想、宗教学に開眼した私は一時期傾倒していましたが、臨床現場に出るにつれて次第に関心がなくなり、最近約30年ぶりに戻ってきました。

 昨年出た、ウィルバーの思想をまとめたのが、ケン・ウィルバー著『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』(加藤洋平監訳、門林奨訳、日本能率協会マネジメントセンター)

 以下は研究顧問を務めていたある企業の幹部と行った研究会で、私が書いたレポートの一部です。日本の古神道と臨床心理学、発達発達学を統合しようという試みの一部です。

 覚えにここでも載せておきます。

 本書の概要を知ることができると思います。

(転載貼り付け)

 統合と意識進化

はじめに

 ケン・ウィルバーは、トランスパーソナル心理学の代表的論客として知られている。80年代前半、「意識のスペクトル論」によってアメリカの心理学界に衝撃のデビューをしてから30年以上経つが、現在も精力的に著作を発表をしている。

 特に最近は「ティール組織」のアイデアを提案し、組織論の世界でも注目されているという。

 本書『インテグラル理論』はウィルバーの著書『The Theory of Everything』の最新訳であり、彼の関心の中心である人類の意識進化論と人間科学に関するあらゆる科学理論を統合する枠組みを、「インテグラル理論」として提案している。ウィルバーの仕事は、○○株式会社の研究開発、○○の関心、理論と重なるとことが多いと思われるので、ウィルバーの発想の主なところを抽出し、比較のための資料として供したい。

問題意識:意識進化の時代的必然性、統合への関心

 ウィルバーは将来の人類社会の方向性を、「意識進化」「統合」という方向で見定めている。

「人類は孤立した部族や氏族から始まり、小さな農村へと、古代国家へと、征服を求める封建帝国へと、国際的な法人型国家へと、そして地球共同体へと、歩みを進めてきた。この驚くべき進展の先に、統合的共同体(インテグラル・ヴィレッジ)が現れることは、もはや必然であるように思える。

 言い換えれば、今日、意識進化の最先端は、来るべき統合的時代ー少なくとも、その可能性―の一歩手前にまで到達しているのである。統合的時代とは、全ての人間が、人類が現在もっている全ての知識、知恵、テクノロジーに触れることができる時代である。そしてもちろん、私たちは遅かれ早かれ、全てを説明する「万物の理論」を手にすることになるだろう・・・。  p34」

 これは、現代における意識進化の必要性、必然性を訴える○○とほとんど同じ問題意識に立っているといえる。網羅性、階層性を重視するところも同様である。

ウィルバーの仕事

(1)意識進化モデルの構築

 初期のウィルバーの意識進化モデルは、心理学の心の発達理論を、仏教やスーフィー、キリスト教やユダヤ教の神秘主義の理論を接続したところに特徴があった(意識のスペクトル論)。

 本書では、さらに発達心理学や組織心理学の最新の理論を駆使して、さらに詳しく8段階のモデルを構築した(スパイラル・ダイナミクス)。各段階を色で表現しているところが特徴的である。(詳細は本書を参照)

 

世界観1 ベージュ 古代的 生存の感覚 本能と生まれ持った感覚と研ぎ澄ます

世界観2 パープル 呪術的 血族の精神 神秘に包まれた世界の中で調和と安全を求める

世界観3 レッド  呪術的-神話的 力のある神々 衝動を表現、自由になる、強い存在

世界観4 ブルー  神話的 真理の力  目的、秩序、未来を確実にする

世界観5 オレンジ 合理的 努力への意欲 分析、戦略を立てる

世界観6 グリーン 多元的 人間らしい絆 内なる自己を探求、他者を平等に扱う

(以上、第1層)

世界観7 イエロー(ティール) 統合的 しなやかな流れ 複数のシステムを統合、調整

世界観8 ターコイズ 全体的 全体の眺め シナジーを起こす、巨視的視野

(以上、第2層。ウィルバーの図は第1層が最下位にある)

 

 ウィルバーの見立てでは、現代は人口比において、ブルー段階にいる人は40%、オレンジ段階は30%で、ほとんどの人は秩序や制度、合理性の世界(ブルー、オレンジ)に存在していることになる。

 世界の多様性を認め、ポストモダンやエコロジーに関心があり、新しい世界像に関心のある人(グリーン)は10%程度しかいないという。

 それらよりもっと原始的な意識(途上国や未開社会、紛争地域にいる人:レッド、パープル)は20%程度もいるとしている。

 そして、統合的な意識に達した人、ティール組織を実践できる人(イエロー)は1%ぐらいしかいないと見ている。つまりほとんどの人は、平等性、無支配性の高い組織を作って運用するほどのレベルに達していない。

 そのためウィルバーは、人類の意識進化の道筋を描きながらも、そこに至るにはまだまだ時間がかかる、100年単位の出来事と見ているようである。そこで、意識進化の障害になるところも考察している。例えば、ベビーブーマー世代の自己中心性や、エコロジーや精神世界に関心の高いグリーンの人たちの、非合理主義や反科学主義には警鐘を鳴らしている。

 バラ色の理想をただ描くのではなく、発達の妨げになる個人心のあり様や社会の問題にも目配せしているところは参考になると思われる。

 そのようなウィルバーの現状の社会に対する認識は、広範な文献や研究を網羅しているだけあって、妥当性が高いと思われる。ただ、その意識進化の速度については、我々との認識の違いがあると思われる。

 禅を中心に修行していたウィルバーは、意識進化の方法は本書では明示していないが、瞑想を中心にした「気づきのライフスタイル」を徹底させることにあるように見える。いわば、アナログの修行方法、生活態度を中心にしている。

 その過程で、人の心理的ブロックやトラウマ、誤った価値観などで意識進化が停滞したときは、サイコセラピーや代替療法などで修正していきながら、コミュニティーの改善や政治的実践を行う(ディープエコロジーなどと呼ばれる)といった方向性と推測される。

 したがって天才と呼ばれたウィルバーでさえ、基本的には修行的、伝統的なアナログな方法による以外のイメージは乏しく、デジタルデバイスを使用しての意識進化の可能性はまったく考慮していないようである。

 また、仏教や神秘主義思想の該博な知識があるウィルバーも、日本の神道に関してはまったく言及がないので、知らないといってよいだろう。むしろ、多神教的、呪術的な宗教を意識の発達の初期の段階と捉えている(パープルやレッドの段階)ので、もしウィルバーが一般的な神道について教えられれば、意識進化の初期の段階と位置づけたかもしれない。

(パープル、レッド、ブルーの説明 p51-53)

(2)意識進化とはどんな状態か

(イエロー(ティール)、ターコイズの説明 p59-60)

 現在の人類が意識進化した状態では、柔軟さ、自発的、機能的であることがもっとも重視される。差異や多源性は統合される、自然で様々な流れが相互に依存しあう。

 全ての存在が網目細工のように絡み合っているという認識。多種多様なレベルの相互作用を認識できるようになる。どんな組織にも調和と神秘的な力を感知し、フロー状態が遍満している。

 ウィルバーは、「発達とは自己中心性の減少である。」「発達においては基本的に自己愛の減少と意識の拡大という二つの出来事が起きる。」と端的にまとめているが、自己愛(ナルシシズム)の狭い世界から人が抜け出して、「公」という広い視点を得るプロセスを意識進化とする○○のアイデアを、別の面から表現しているといえるだろう。

 ウィルバーの描く意識進化した状態と、我々の描くそれとの異同は、今後の論点となるかもしれない。

 

 

 

 

 

|

« 自粛要請の目論見 | Main | この時期に倒れた »