« 『個人心理学研究」発刊 | Main | コロナと武道 »

May 11, 2020

新しい生活様式とライフスタイル

 緊急事態宣言が5月末に延びて、「新しい生活様式」なるものが提案されました。

 これは今後の我々のライフスタイルに、どのように影響するでしょうか。

 生活様式とライフスタイルはふつう同じ意味で、翻訳し合える言葉ですが、アドラー心理学では「性格」に近い意味でライフスタイルを使っています。一般社会とは、少し違った特別の意味をライフスタイルという言葉に込めています。

 その人なりの価値観とか、人生の目標とそこにいたる道筋の行動パターンとかいった意味です。

 このパンデミックの生活への影響については、今後はアドラー心理学だけでなく臨床家の仲間と研究、議論するテーマになるかもしれません。私も日頃の生活や臨床で気づいたことをいろいろ拾っていきたいと思います。

 例えば、人との距離を2メートルぐらい置くソーシャルディスタンスって、健康な人にはいかにも不自然です。でもこれが基準になると、相手が距離を縮めようとすると不快を感じる人も現れるでしょう。新しいハラスメントが登場するかもしれません。

 反面、助かる人たちも確実にいます。

 不登校の子どもたちからの、「調子いいです」「よく眠れてるし、意外に昼夜逆転していない」「元気にしてます」という声を保護者や教師からよく聞いています。みんなが不登校状態ですから、罪悪感を感じなくていいからかもしれません。

 これは大人のうつ、ひきこもりの中にもあてはまる人がいるかもしれません。私のクライアントさんでも「調子いいです」「散歩してます」と逆に少し外に出ていて、それがちょうど、自粛生活に最適レベルになっているようです。

 家庭でも物理的に距離が取れて、「課題の分離」が自然にできてしまうかもしれません。ソーシャルディスタンスの方が心地よかったりして。

 まさにアドラーが喝破したごとく、「すべての心の問題は対人関係である」を証明するような話です。

 また一方で、「みんなが不登校だとつまならい、自分だけだから意味がある」と気づいて話した子どももいたと、知人のスクールカウンセラーが教えてくれました。まさに「目的論」ですね。

 気になるのは、愛着、アタッチメント系の問題、アドラー心理学でいう共同体感覚の育成に対する影響です。

 世の中には、何でも字義通りに捉えて融通性の利かない人がいます。ソーシャルディスタンスだ、感染防止だと強迫的になって、幼い子どもと身体接触しない、遊ばない、近づけさせないといった親が出てくる可能性はあると思います。目的論的には、子どもや他者と親密になりたくないために、ソーシャルディスタンスを使用するとも考えられます。

 今、心理臨床界の主要な学会では、自粛生活中のメンタルヘルスについてアナウンスをしたり、資料提供をHPでしていますが、どちらかというと官製情報をメンタルヘルス的に言い直したものだったり、これまでの災害支援の知見を繰り返している印象が私にはあります。

 今後は、この事態に合ったより細かい問題意識と対応への発想が求められると思います。発達心理学系、アタッチメントを中心にする臨床家がどのような発信をするのか注目です。

 さてさて、先月だったか、Twitterに流れてきた中にこんな感じのジョークがありました。

 コロナQ&A

  質問:エッチしても大丈夫ですか?

  医師:2メートル離れてれば、やってもいいです。

 意中の人にアプローチしたい人には苦労する時代になりそうです。

 

|

« 『個人心理学研究」発刊 | Main | コロナと武道 »