古武術は説教しない
『古神道と古流武術』に、直接古神道とは関係していないけれど、古武術研究家の平上信行氏が私にとって興味深いことを話していたのでメモします。
よく武道の道場で先生が生徒に長々と説教する場面に出くわすのですが、それは本来の姿ではないとのことです。
本来の真理は文字にして伝わるものではなく、心と心が通じ合う中で伝わるものであると大宮司朗氏が述べた後で、
平上 わかりますね。精神性を説けば逆に精神の道が壊されることとなる。だから古流武術の稽古では断じて精神的訓話をすることがないのです。
大宮 古流武術の道場ではそうした指導はされないのですか。
平上 少なくとも道場の当主が成すことはありません。あってはならないことだと思います。現代武道では礼儀ということがうるさく言われますが、言えば言うほど精神の道が失われる・・・。それは精神の監査ということができなくなってしまうということです。 p159
そういえば、私も御年90を超えた中国武術の師匠や今の先生に、「人の道」やら道徳やらを説かれたことはなかったですね。ただひたすら先師の残した型に正確に動くことだけを求められていました。
少しでも間違うと、
「違います」と穏やかに指摘されたのでした。怒られたことはありません。
それがかえって恐縮して、冷や汗をかいたものです。
改めて本当の教えられ方をしたのだと気づいて、感謝しかありません。
私が普段稽古する武道場は大きなアリーナで、いろいろな武道団体と共有しているのですが、少年剣道や高校の部活の剣道部の先生たちの小うるさいこと、遠くから耳に入ってくる声を聞いていると、
「すごく立派な勇気くじきだなあ」と感心することしきりです。
説かずに伝えられるような境地になりたいものです。
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