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December 05, 2020

野田俊作先生、ご逝去

 日本を代表するアドラー派の精神科医・野田俊作先生が亡くなったという知らせが入ってきました。

 お体の具合が悪いとうかがっていたので、「やはり、ついにか」という感じでした。

 身近に接していた方たち、先生を師として就いてきた人たち、信じて従っていた人たちには相当ショックなことでしょう。

 野田先生の最大の功績は、やはり日本に初めてアドラー心理学の全体像、全体系を紹介したことだと私は思っています。そのことのインパクトは80年代初頭から現在までの各方面に、たくさんの人たちに、大変大きなものがあったと思います。私も確かにその一人です。

 フロイトもユングもとっくの昔に紹介されていたのに、精神分析学やロジャーズの時代から認知行動療法が主流になりつつある時代になって、ようやくという感じでした。野田先生がいなければ、いまだにアドラー心理学は日本で知られないままだったかもしれません。

 ただ、その後の先生によるアドラー心理学の世界のマネジメントの仕方には、評価が分かれるでしょう。

 与えた影響も大きかったが、作った溝も深かった…

 少し経ったら、改めて野田先生の遺したもの、業績と課題などを検証する必要があるかもしれません。

 私がアドラー心理学を学び始めた1980年代末、20代初めから30代にかけて、野田先生は大阪から、まだ仲が良かったヒューマン・ギルドに毎月いらっしゃっていました。私も毎回カウンセリング演習や事例検討会に参加し、積極的に質問していたことを覚えています。ケースもいくつも出しました。だから先生から教わったことは多かったと思います。

 ただ、少なからず疑問があっても、当時まだ臨床家として駆け出しで、アドラーも心理療法もわからないことばかりで、野田先生のお話をうかがうばかりのことが多かったです。それでも先生が説かれるアドラー心理学はすさまじく明快で、いつも楽しかったです。

 多分それは当時の精神分析学やユング心理学の曖昧さとは全く違い、切れ味と使い勝手のよさが、新鮮だったからでしょう。

 袂を分かって約20年、お会いすることもなく、自分なりの学びを進めてきました。今なら私も十分に準備も整い、先生に議論を挑める自信があり、さあ、いよいよこれからだ、という思いでいました。

 それがかなわないことが残念です。

 さらに私から見た野田先生の興味深いところは、実はアドレリアンとしてよりは、宗教への深い関心、いわば神秘家、オカルティストといった側面でした。ご自身がそう言われて認めるかはわかりませんが、先生のブログを見ると、「神霊を信じる」といった言葉や「呪い」についての言語的分析などの記事があったり、晩年はチベット仏教に傾倒していたらしいので、一般的な括りとしては間違っていないでしょう。

 けして安易なスピ系ではなく、かなり硬派な中身です。

 そして、僭越ながらそれは、私と「同じ種族」ということになります。

 ただ、「専門ジャンル」は違います。

 だから先生の関心には共感でき、読んで難なく理解できたとともに、鋭く対立する面があったように思います。

 また、政治思想も独特な右寄りでした。

 いつか再会できれば、そういったところも問い質したいと思っていました。また、私が知っていて先生がご存じないこともありそうで、教えて差し上げられる部分もあると思っていました。まあ、聞く耳持たないでしょうけど。

 すべては今となっては、ですな。

 アドレリアンとしても、スピリチュアル・タスクとしても、お互い違う修行の道を歩んでいたので、死後は同じ世界に行くのかはわかりませんが、あっちでお会いしたら、今度はいろいろと議論をさせていただきたいです。

 改めて私から見た野田先生を一言でいうと、あまりにも過剰なエネルギーと才気のある人でした。

 お疲れ様でした。

 貴重なことを教えていただき、ありがとうございました。

 

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