『気のはなし』
武術や精神的なことに関心があると、必ず「気」にぶつかります。
「気」とは何か、どう考えたらいいか、真面目な人ほど考えます。
心理学的な解釈もあるし、宗教的、スピリチュアル的な解釈もあるし、全く否定する立場もあります。
臨床心理の世界では精神分析家とかユング心理学者が多少言及したことはあったけれど、気そのものにアプローチしたものは見当たらず、それぞれの理論の範疇から出ることはありませんでした。
最近、最もバランスよく気について解説した本に出会ったので、紹介します。
若林理砂著『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)
著者は鍼灸師で、古武術をやったり、ブラジリアン柔術やカポエラもやったりしているそうですが、本書は特に武術方面からの気の解説はあまりありません。
気に関心を持った普通の人向けに、あまり妖しく思われないように、慎重に、可能な限り幅広い視点で書こうという姿勢です。
つまり古今東西、東洋哲学から東洋医学、西洋医学、現代科学まで網羅しようという意欲作で、とても面白かったです。
孔子、老子、孟子、道教における気。
易と風水における気。
東洋医学における気。
科学における気の研究の現状。
養生や臨床における気の運用。
ほぼ網羅していて博覧強記、よくここまで学んでいると感心しました。
ただあまりにバランスが良すぎて優等生的な気がして、私的にはもっとぶっ飛んだもの、苫米地英人博士や物理学者の保江邦夫博士や古神道などの言説を好むのですが、これまでの気の世界の全体像を知りたい人は先ずは本書で勉強するといいでしょう。
それでも最後の方で、著者自身の治療の時の感覚、体験を少し描いていて、やはりすごい気の感覚をお持ちで、それを実践されている方なのがわかります。実際に「気をリアルに感じることのできる」人なのだと思います。
今度は遠慮せずに、バンバン開陳したものも読んでみたいです。
妖しくたっていいじゃないか、人間だもの(笑)。
本書によって、東洋はじめ現代社会において気は最重要の概念であり、思想であり、技術でもあり、そしてこれからの社会にも必要なものであることを理解できると思います。
強くお勧めします。
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