「いだてん」、よかったじゃんねえ
昨日、大河「いだてん」が終わりました。
これまでにない時代設定で、視聴率的には苦戦したとのことですが、ドラマのクオリティとしては最高に素晴らしかったです。
私的には「風と雲と虹と」「黄金の日々」「武田信玄」「風林火山」「真田丸」に並ぶ傑作でした。
最終回は次から次への複線の回収がされ、全てがつながり、感動の連続で、改めて宮藤官九郎さんのすごさを感じました。
時々テレビなどで見るあのひょうひょうとしたキャラが、なんでこんな風に複雑なドラマを描けるのだろう、表現するのにこんなに難しい時代はないのに、見事に綱渡りを渡り切ったように感じました。
「いだてん」を観た人ならわかるように単純な五輪礼賛ではなく、五輪批判、近代史批判、スポーツ批判、そして現代政治批判の部分も絶妙に見え隠れして、でも最終的にはスポーツのすばらしさを強く訴えていて、一筋縄ではいかないドラマでした。
何度もあった出演俳優たちのスキャンダルも、何とかうまく切り抜けました。私には、ピエール瀧さんの逮捕、徳井義実さんのリークのタイミングには何かきな臭いものを感じざるを得ませんでしたがね。それでもバレーボール女子の大松監督を演じた徳井義実さんを消さずに、最後まで出したのは良かったです。
これらは宮藤さんだけの力でなく、スタッフや俳優たちの協力関係もさぞかし強かったからだろうと思っていたら、それだけでなく、意外にもNHKのトップが「いだてん」を守ろうという意思を持っていたからだという、記事がありました。もしそうなら、最近のNHK報道部の安倍政権の阿諛追従ぶりはひどいものですが、それ以外には機能しているところも残っているということなのかもしれません。
型破りな大河ドラマ『いだてん』を守ったのは誰だったか 文春オンライン
(転載貼り付け始め)
公平に言ってNHKは一年を通じて、驚くほど毅然とした態度で作品を守ったと言っていいと思う。定例記者会見のたびに視聴率や俳優の不祥事について記者からの質問の矢面に立つことになった上田良一NHK会長は、何度水を向けられても「芸術的な評価は高い」「私も楽しんで見ている」という静かな答えを繰り返した。終盤に起きた俳優の不祥事でも、出演のカットはSNSからの声もあり最小限のものに押さえられた。
この原稿を書いている12月10日、NHK上田会長の一期限りの退任をメディアが報じた。三菱商事の代表取締役から経営委員会監査委員を経てNHK会長に就任したこの人物について、僕は実際の人物像をほとんど知らない。2013年にNHK職員となって以降、朝の連続テレビ小説を録画視聴を含め全話視聴している、とりわけ『あまちゃん』のファンであるということもインタビュー記事を通じた知識でしかない。
「(複数の関係者によれば)首相官邸は『上田会長は野党に気を使いすぎだし、政権批判の番組へのグリップが弱い』と不満を持っていた」という 毎日新聞の報道 、「複数の関係者によると(経営委員会が上田会長の再任を認めなかった)交代劇の舞台裏では、NHKの政権に批判的な報道に不満を持つ官邸が、一部のNHK幹部と連携して人事を主導した」という 朝日新聞の報道 が真実であるかどうかも知らない。
だが確かに言えることは、彼が1年の放送期間中に嵐のように続いたアクシデントとバッシングの中、最後まで静かに作品を見守ったということである。
「NHKを潰せ」を掲げる政党が100近い票と取った年に
定例会見で繰り返された視聴率の不振と不祥事に関する質問に対し、彼はいつも作品そのものに対しては評価し、擁護する静かなコメントで答えた。それはもしかしたら、宮藤官九郎という自由人と、その作品を愛すると公言した企業人との、たった任期一期の3年間、文字通り「一期一会」の出会いとすれ違いだったのかもしれない。
宮藤官九郎の脚本による『いだてん』42話の戦後シークエンス『東京流れ者』では、なぜ今のNHK東京放送局が渋谷にあるのかというルーツが描かれた。2019年は参院選で「NHKを潰せ」と掲げる政党が100万近い票と1議席を獲得した年でもある。
『いだてん』が多くの逆風やアクシデントの中でテコ入れや介入を受けず、全47話を1話も欠けることなく、それどころか最終回は60分に15分拡大放送でフィナーレを迎える中、その放送と準備に一期3年の任期を重ねた1人の企業人が会長の座を降りると報道される光景は、まるでそれ自体が『いだてん』の白眉の一つである政治劇、人間ドラマの一場面のように見えた。
(転載貼り付け終わり)
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