August 27, 2009

政治と広告代理店と心理学

 選挙戦真っ最中ですけど、前回の郵政選挙の時とマスコミの乗りや雰囲気は少し違うような気がしますけど、どうでしょう?
 酒井法子事件を煙幕にして選挙戦を盛り上がらなくさせたりしているような気がするくらいかな。

 前回、どのテレビ番組もあからさまに小泉自民を勝たせようとしているようでしたね。古館一郎も田原総一郎も、郵政民営化賛成の改革派には存分に喋らせ、「抵抗勢力」側とされた人には途中で遮ったり、罵倒めいたことを言ったりとひどいもので、実家の年老いた母親もそれまでは「古館さん」と慕っていたのに、「あれはひどい依怙贔屓だわあ」とあきれていました。

 その他にも様々な印象操作がなされ、結果はご承知の通り自民大勝でした。

 あの時以来、私は「マスコミによる大衆操作」がどのようになされているのか、気になるようになって、テレビのヴァラエティーや評論家や学者とされる人の発言に注意をするようになりました。併せてその背景に、心理学のテクニックや知識がふんだんに利用されているのを疑うようになりましたね。

 といっても業界人でない自分に政治やマスコミの内部の詳細はわかるはずもありませんでした。

 そんな私の気になるブログ記事があります。
 副島隆彦氏の愛弟子、アルルの男・ヒロシこと中田安彦さんの「ジャパンハンドラーズと国際金融情報」の3年前の記事です。

 広告代理店というのは、「国民洗脳産業」である

 当時の「永田偽メール事件」(覚えてますか?)の背景を考察していて興味深いのですが、さらに広告代理店の影の側面にも言及しています。

 私たちは「広告代理店」というのは、新商品を売り込むために、CMやキャッチコピーを考えるという、何とも非常にカッコイイ職業だと思っている節がある。表向きはそういう仕事もある。しかし、彼らが売り込むのは何も具体的なモノとして存在している「商品」だけではないのである。

売り込むものは、モノとして存在しない、思想・イデオロギーであっても構わないし、何らかの現象であっても構わない。以前、「戦争広告代理店」という本が出て、一部の読書人階級で話題になったが、彼らにとっては「戦争」も商品である。

郵政選挙を売り込んだのも、小さなところでは竹中平蔵の利権が絡んだ、スリード社という小さな広告代理店であり、大きなところでは自民党をクライアントとしている、電通、BBDOである。

 80年代私が就職する頃、広告代理店なんて「あこがれ」でした。
 私の知り合いの心理学科を出た人たちも博報堂や電通関係の会社に入ったっけな。今はどうしているだろう。

 当時就活中の私も、面白そうだと思いましたね。
 でも広告代理店は高給だけど、やたらと仕事もきつくて徹夜続きみたいな話を聞いていたので、習い始めた武術の稽古はしたいし、満員電車は避けて、やりたいことだけやってのんびり暮らしたいという人生目標があったのでやめたのでした(今思うと正解かなあ)。

 広告代理店に勤めている人ならわかると思うが、広告代理店の宣伝キャンペーンというのは、相手をいかに効果的に「説得」「納得」させるかという技術を高度に進化させたものである。そのようなことをやってのけるには、心理学のテクニックが必要不可欠だ。広告業界の先進国である、アメリカやイギリスでは、そのような「人間心理の動き」を研究する場所が沢山ある。例えば、映画「エス」のモデルになった、スタンフォード・リサーチセンターがそれであるし、それ以外にも二〇世紀半ばくらいから「~人間関係研究所」というような名前の研究所が何件が作られている。

これらの人間心理を研究する研究所では、具体的には戦争帰還兵の精神ケアを目的にした、心理学の実験などが行われており、表向きはそのような目的と心理学の研究をメインに学問的な研究を行っていたのである。

しかし、学問というのは政治に従属するということは、私が「ジャパン・ハンドラーズ」で書いたとおりである。心理学は人間心理の解明を目的にしている。人間心理がどのように揺れ動くかということを調べる目的でネズミの反射神経の実験を行っている。厳密に言えば、それを人間に応用できるのかといえば疑問だが、人間心理の動きを解明することを窮極の目的にしていたことは事実だろう。

ものごとのしくみを解明するということは、近代合理主義の精神である。物事を部品のレベルまで崩し、全てを数量化し、設計図を描く。設計図を描けると言うことは、自分たちで設計図を書き直すことが出来るということである。人間の心理を解明し、生来の気質とは別の人格を作り出すという科学信仰の一種がアメリカの社会科学の一分野である、行動科学(ビヘイビアル・サイエンス)である。広告業界のメソッドはつきつめると、この人間心理工学というべき行動科学に基づいている。また、アンソニー・ロビンズなどの自己啓発本(セルフ・ヘルプ)というジャンルの背後にある思想も同じである。

 アルルさんは、その心理学的国民洗脳研究機関の例として、タヴィストック研究所というのを挙げています。詳細はそのサイトの記事を読んで下さい。

 ただ、重要なのは、人間心理工学という学問ジャンルが存在し、それが政治や国際金融資本と結びつくと、大衆洗脳に悪用されてしまうということである。人間というのは、感情に訴えられるとすぐに、おかしなプロパガンダでも受け入れてしまう傾向を持っている。人間心理を知り尽くした、タヴィストックやスタンフォード・リサーチセンター、電通などのような広告産業はそれを商品の売り込みにも利用するし、選挙キャンペーンにも利用するし、戦争の売り込みにも利用する。広告代理店と大手マスコミ関係者とアメリカの意向を受けた政治家たちはグルである。

 何も病者や障害者のケアのための臨床心理学だけが善だ、というつもりはないけれど、少なくともそこでは「治るため」「良くなるため」という相互の同意、契約は最低限利いているわけで、同意も何もなく、するっと私たちの心に忍び込んでくる心理学的テクニックには気をつけた方がよいでしょう。

 ただ、あまりその辺の俯瞰した視点から心理学と社会の関係全体を論じる指南役が心理学界にいないような気がするんだな。
 誰かいい人いますか?

 

 

| | Comments (2) | TrackBack (0)

August 04, 2009

テレビに出られなくなったきっかけ

「売国者たちの末路」には小泉・竹中路線の罪深さと郵政改革の本当の姿、今後の経済について本当に重要な情報に満ちているのですが、ここでは、そんな本筋とは別の面白いエピソードを引きます。

 副島隆彦氏は今は絶対にテレビに出してもらえない評論家なのですが、以前はたまに出ていた時があったらしいです。
 しかし、小泉政権が発足した頃を境に完全に干されてしまった。
 そのきっかけのテレビ出演の様子が生々しい。

 小泉純一郎が自民党総裁になる直前の2001年4月14日、日本テレビ・読売系列の「ウェークアップ!」という番組に副島氏が出演しました。
 一緒にその場にいたのは、自民党総裁選の候補者、橋本龍太郎、麻生太郎、小泉純一郎、亀井静香のオールスター。

副島「このとき、私が麻生さんに『日本は毎年、国債で30兆円分をアメリカに差し出すという密約があるのですか』と聞いた。すると横から橋本さんが急に怒りだして、『お前みたいな若い評論家が何を言うのか』という顔をしながら『私は米国債を売りたいと言った男だよ』と言ったのです。司会をやっていた桂文珍が大慌てで、手で×印を組んでディレクターに合図して、カメラをよそに回されました。私に反論させなかった。この後私はテレビから干されるのですが(笑)。

 あのとき橋本さんが立候補したのは、みんなに相当嫌がられた感じがありましたね。国民からは『またあんなのが出てきた』と。しかし私と橋本さんはこのとき2人だけで気持ちが通じ合いました。橋本さんは『俺は愛国者だ。アメリカに抵抗している』と言いたかったのです。

 これは非常に重要は発言でした。属国の指導者が『米国債を売りたい』というのは、アメリカにとって逆鱗に触れる言葉です。一番大切なのは国民のお金の問題ですからね。

 国家の秘密を臆せず暴く副島隆彦とそれに応える橋本龍太郎、「やばい!」と慌てる桂文珍という取り合わせが妙に面白い。

 あれ以降日本はまだ自由さがあった言論が封殺され、それは隠蔽され、お笑いや出来レースのような政治報道番組ばかりになってしまった感があります。

 もうちょっとましになってほしい。
 でないと地デジを買う気はなくなるな。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

August 02, 2009

植草はガリレオだ!

 植草一秀氏は、小泉・竹中路線に容赦ない批判を浴びせてきた人ですが、それゆえに「敵」からかなり憎まれていたみたいです。当時の氏を巡る状況に関する面白いエピソードがあります。

「売国者たちの末路」から

植草「小泉政権は不必要な不況促進政策を発動して日本の国民を苦しめ、逆に外資系ファンドにはおいしい思いをさせました。小泉・竹中路線は外国勢力と手を携えたものだと思われます。私はこのことに対しても容赦ない非難を浴びせていましたから、とても目障りな存在だったと思います。

 私は自分の事件のあと、知人にこんな話を聞かされました。その知人は外資系の会社を日本で立ち上げて、日本で不良資産の買い取りと資金回収をやっている人です。いわゆる外資一族とツーカーの関係にあるのですが、彼によると外資系ファンドの人々の集まりがあったとき、私のことが話題になった。そしてそこにいた人々が口々に言ったそうです。
植草はガリレオだ。ガリレオは火あぶりにしろ!』」

 興味深いのは、ガリレオは「真実」を言ったからこそ教会から弾圧されたのであり、外資系ファンドの面々も、植草氏の発言は「真実」だと思っていたことがうかがえることです。

 それにしても本書を読んで驚かされるのは、植草氏の胆力。ただの日和見学者が多い中で、どんなに卑劣な目に遭ってもけして動じず誠実に言論を貫く様には、端倪すべかざるものがあります。

 真の武士道を身につけた最上級の人物であると思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 28, 2009

植草事件の背景

「売国者たちの末路」には、植草一秀氏がなぜ痴漢事件にはめられたといえるのか、副島隆彦氏の分析が前書きに端的に記されています。

 それは、植草氏が経済政策についてあまりにも優秀であったためです。

 植草氏は日本国で「郵政民営化」という名の、日本国民の資産の強奪(アメリカに貢いだ)を行った者たちの所業を、最も正確に緻密に分析し指摘してきた一流の経済学者である。そのために植草一秀は、竹中平蔵を守り護衛する、アメリカで訓練された公務員忍者部隊に狙われ、残酷なスキャンダル攻撃で痛めつけられた。例の痴漢冤罪の謀略である。
    (中略)
 当時(2004年4月)から植草事件の勃発の経緯を遠くから凝視していた私にはわかっていたことがある。それはあの当時、金融担当大臣になったばかりの竹中平蔵を、自民党の最高実力者7人が力を合わせて引きずり降ろそうとした。そしてその後任(後釜)に植草氏を、日本国民の総意をもって、折り紙つきの有資格者として金融担当大臣に任命しようとしたのである。その時の自民党の最高実力者とは、青木幹雄、亀井静香、野中広務らであった。

 ところがこのときの日本側の策は、アメリカに見抜かれて一挙に潰された。上記の実力政治家たちは自分の生き残り(政治生命)のために尻尾を巻いた。このあと、ひとり植草氏だけが戦場に取り残され、宿敵・竹中平蔵を防衛する特殊部隊(special forces スペシャル・フォーシーシーズ)に狙われて、業火に焼かれ生身を削がれるような謀略攻撃をかけらた。しかも2回も。私は植草氏への2回目の痴漢冤罪謀略の「被害者」は婦人警官だと今も信じている。彼らは己の罪の深さを知るべきだ。

 あの時期、人事を巡って日米、小泉側、反対勢力と熾烈な戦いがあったのですね。

 副島氏は、「植草氏ほど真剣に国民のことを思い、金融・経済政策の立て直しで政策立案能力を備える人はない」と植草氏を国政に復帰させるべきだと主張しています。
 それが実現すると本当にいいなと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 19, 2009

酔っぱらっちゃった人には武道を

 中川昭一財務相兼金融担当相の「もうろう会見」は何だったんでしょう。

 瞑想、気功、催眠でいつも酩酊、変性意識状態の私には、「格好悪いけど、別にいいんじゃない」と大目に見てたけど、世論は一気にヒートアップしました。
 どうせマスコミから強引に煽動された流れの中でひねくれ者で「陰謀論者」の私は、ニュースを聞いてとっさに

「これは盛られたな」

 と直感しました。
 別に根拠はないけど、かんぽの宿疑惑隠しか政府紙幣論への反撃か、反攻に出た小泉側がこれまでにもあったように、例によって「やりやがったか」と思いました。

 中川氏は強面風だけど、二世議員でどこか愛嬌というか甘いところがあると感じていましたが、やはり脇が甘かった。麻布高校から東大のエリートなんですってね。
 酒に溺れやすいそうですけど、何かがあるんでしょう。

 父・中川一郎氏の自殺(一説には他殺)を見て、この世の裏の地獄を見知ったためでしょうか。

 その弱点を突かれた。

 酒好きは仕方ないけど、中川氏には護身の概念が乏しいと言わざるを得ません。
 武道、特にスポーツではない(つまり正々堂々と戦う、スポーツマンシップに満ちたものではない)、ある意味反則技や姑息な技と呼吸法などの心身の鍛練法でできている古武術や我らが柔拳を学ぶのが良いと思います。
 柔らかい人当たりと隙のない気配りができて、政敵からはめられる危険性は減るかもしれませんよ。

 政治家、志望者は習いに来て下さい。

 なんてことを感じていたら、副島隆彦氏が同様の視点から解説していました。
 副島隆彦の学問道場-気軽にではなく重たい気持ちで書く掲示板

  副島隆彦です。緊急で、現下の政治情勢への私の分析を、手短に書いて、載せてお  く。

1.中川昭一(なかがわしょういち)財務・金融大臣が、やられた。彼は、14日のローマでのG7で、酒の中に
クスリを盛られたのだ。 ロバート・ゼーリック世銀総裁(デイヴィッド・ロックフェラー直系の子飼い、忠実な孫クラス、公表しているユダヤ人)との会談の席だったか、そのあとの、怪しい女記者たちとの30分の食事の時に、薬を入れられたようである。

(中略)

副島隆彦です。中川昭一は、私はすこしだけ話したことがあるが、父親(中川一郎、自殺、しかし本当は殺された)に継いで、立派な政治家だ。中曽根系の後継ホープだが、
立派な男だ。 酒を毎晩、浴びるように飲んで、失禁することも多い、と言われ続けた男だ。やっぱり、アメリカは、弱点を突いてくる。

2.麻生太郎首相たたきは、昨11月から始まった。ホテルのバーで遅くまでお酒を飲んでいる首相と叩き始めた。それから、漢字が読めない(受験勉強をしていない、学習院卒だから、弱点と言えば、そう) と嘲笑した。 それは、麻生と、中川が、昨10月13日前後から、 アメリカに、「もうこれ以上は、日本は、アメリカに金(かね)を出さない。国民の大切な資金を、出さない。米国債は買い増したくない」と、公然と、言い出したからだ。 麻生と、中川は、愛国者である。 

3.世の中で、大事なことは、カネを出すか、出さないか、だ。いい人、悪い人も、正義・悪も、判定は、どうにでもなる。が、日本国民の為に、資金を奪われないように、抵抗するのが、日本にとっての正義であり、善で、あり、愛国者で、いい人だ。いい指導者だ。アメリカの手先ではないということだ。

4.アメリカは、麻生政権潰しに、公然と動き出した。 カネを貢がないからだ。
小泉は、麻生が、「郵政民営化には、自分は必ずしも賛成ではなかった」と、失言(思い余っての本音)した翌日、「笑っちゃうしかない」と言って、政権打倒の火柱をあげた。
そのあと、モスクワに立った。 アメリカが、小泉を、特使(使い走り、メッセンジャー・ボーイ、仲介人間)に立てて、送ったのだ。

5. ロシアは、石油(原油)の値段が、一バーレル32ドルまで下げられて、食をなくした労働者たちが、モスクワでもデモをしている。多くの建設工事が泊まっている。このままでは、いくら、豪腕のプーチン、メドベージェフでも、金が無くなって困る。デタントである。それで、アメリカが、「原油を、上げてやるから、その代わり、米国債を、もう一度、買いなおせ」と、ロシアに、日本を使って、交渉している、ということだ。

ニューヨークの先物の石油市場である、NYMEX(ナイメックス)で、アメリカは、石油価格もあやつっている。どうにでも操作できる。 それで、家来(同盟国)の、サウジアラビアが、悲鳴を上げている。 もうこれ以上の、原油の安値は、アメリカも耐えられない。

6.ヒラリーの、悪(ワル)女が、16日夜、来日して、すぐに、深夜に、カバの中川秀直(なかがわひでなお)と小池百合子と、在ったはずだ。自分たちの手兵、子分だから。
小泉・竹中平臓の、アメリカの手先代表(売国奴の頭目)と連携している勢力だ。

日本に、小池百合子政権を作らせようと、バカヤローのアメリカは、ヒラリーは画策している。日本国民の気持ちなど、何も考えない。帝国は、属国にそういうごり押しをする。

8.日本に、60兆円分ぐらいの、米国債を買わせる腹である。それがヒラリーの現下の仕事(任務I)だ。 これで、累計、700兆円ぐらいになる。 小池百合子ら、見ず転芸者の、アメリカへの屈従を、許してはならない。何が「上げ潮」経済だ。この手先どもめ。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

January 21, 2009

アメリカの教訓

 日本は戦後ずっとアメリカを追いかけてきました。
 福祉も臨床心理学も同様です。
 福祉の世界には北欧を目標にすべきという識者も少なからずいましたが、「主流派」は基本的にアメリカのあり方、考え方が理想で、モデルとしていました。
 臨床心理学は完全にアメリカ主導でした。

 でも最近ふと思います。
 アメリカなんかモデルにして、ほんとにいいのだろうか?
 我々は全然幸せになっていないのではないか?

 日本よりずっと進んでいるといわれるアメリカは、貧困も、自殺者も、心の病気も、虐待も、暴力も増える一方。
 その後を確実に日本も追いかけている。

 何か根本が間違っていないか?

「子どもの最貧国・日本」の著者、山野良一氏も同様の疑問をかの地で学びながら持ったようです。

 アメリカが、60年代という早い時期から児童虐待の問題に社会として真剣に取り組み、世界に先駆けて、厳格な通報システムを法的に定め、実務的に運用していることをご存じの方も多いでしょう。
 しかし、こうして導入された厳格な通報システムが、児童虐待の予防にどこまで効果を上げているかを疑問に思う研究者もいるのです。先ほどの児童虐待死と家族の所得の関係性を調べたリンゼイは、さらに時系列で児童虐待死の数を調べていくと、通報システムが整備され通報数が急増した60年代の後も、児童虐待死はまったく減少せずに逆に増加していることを見出すのです。

 結局、リンゼイやその盟友でもあるベルトン(その主要論文の抄訳が上野加代子編著『児童虐待のポリティクス-「心の問題」から「社会の問題」へ』という本に収められている)は、児童虐待を予防するためには、まず子どもたちの貧困の問題に積極的に取り組むことの方が先決であると主張するのです。児童虐待を発見し子どもを保護することにエネルギーをそそぎ込むのではなく、貧困な家族が十分な子育てできるように、経済的な支援を含めた具体的な家族福祉サービスを積極的に行うことが第一義だとするわけです。

 一見理想的な発想と政策、それを生み出す学問がまるであだ花で、賽の河原の石積みのようにしかなっていない、実に虚しい現実があるのです。

 アメリカの児童虐待対策は、そのような「ずれ」を歴史的に抱えていると著者はいいます。
 それは日本も同様です。
 アメリカ型システムを追求している児童相談所にいる自分にはそれがよくわかります。
 虐待問題が大きくなるにつれ、児童相談所の人員や権限が強化されることはありがたいことなのですが、実はそれが虐待を減らすことにはなりようがないのです。
 消防署を増やしても、火事が減るとは限らないのと同じです。現場に着くのは早くはなるけど。

 児童虐待の問題が、社会的注目を浴びるようになってきてから、救われた子どもたちはたしかに増えたはずです。しかし、私が出会ってきた前記のような家族の状況を振り返ってみると、これまで日本で語られることの多い家族の病理的な側面に介入するだけでは、家族が児童虐待を起こしている原因を取り去ることは難しいのではないかと思い至るようになったのです。

 よくある臨床心理士批判、心理カウンセリングブーム批判は、この点を直感しているところから生じているような気がして、それはそれで正当なものが多いと私は思っています。

「同情するなら金をくれ」だよな、まったく。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

January 17, 2009

貧困の影響・虐待

 貧困が子どもにもたらす影響は、学力低下だけではありません。
 先ず何より確実に児童虐待のリスクが上がります。
 これは関係者ならみんな実感していることのはずです。

 もちろん、貧困ではない、普通以上の家庭でも虐待は起こり得ます。

 しかし貧困家庭で虐待が起こるリスクははるかに高まります。

「子どもの最貧国・日本」によると、貧困と虐待の問題、相関関係は日米の諸研究ではっきり出されています。
 アメリカの研究では、

 貧困ライン以下の所得しか得ていない家庭の子どもたちは、所得が平均的所得以上の豊かな家庭の子どもたちに比べ、なんと約25倍もの高さで児童虐待・ネグレクトの危険に晒されており、貧困ラインと平均的所得の間にある中間的な所得の家庭の子どもたちと比べても約3倍の危険性の中で暮らしているのです。

 さらに性的虐待は18倍、貧困に最も直結するネグレクトは45倍ものリスクがあるそうです。
 つまり虐待の内容とは関係なく、全てにおいて貧困は虐待のリスクを増すのですね。

 よくいわれる親が受けた虐待の影響(世代間連鎖)や親の病理的原因ばかりで虐待の語るのはまったく不十分なのです。

 著者は自らの体験から言います。

 私は、児童虐待があるとされた家族に会い、それまでの生活史を聞く機会に接するたびに、経済的なことを主とした生活上の苦労を経験してきた家族が、あまりにも多いことに気づかされてきました。彼らは、語りきれない過去を背負いながら、現在までも継続した苦労の中で生きています。その辛酸のようなものは、時に、私たち児童福祉司にも想像できないほどの重みを持っているのです。・・・・(中略)・・・・。

 児童虐待の加害者とされる親御さんたちは、人生のどこかで、また現在も、さまざまな苦しみや困難の中で生活しているのです。ある意味、彼らは、日本という社会制度の被害者であり、その結果生じているのが児童虐待という現象なのかもしれません。

 この事実を日本は直視しなければならないと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 11, 2009

貧困の影響・学力

「子どもの最貧国・日本」より、貧困が子どもに与える影響について考えてみたいと思います。

 その端的なものが「学力」です。

 一般に学力は自己責任(例:学歴が低いのは勉強しない奴が悪い)や親が東大なら子どもも東大など親の学歴や職業などによるものが大きいと考えられがちです。
 もちろん、そういう面もあるのは間違いありません。

 しかし本書では、それらは必ずしも大きい要因ではないと、OECDやお茶の水女子大学の耳塚寛明氏の調査結果を用いて否定していきます。
 細かい数字は本書を見ていただくとして、結論は、

 たしかに、子どもの努力を表す学習時間の長さも大きな影響力を持っています。しかし、家庭背景を考慮に入れた後では、子どもの努力の影響力はかなり落ちます。つまり、子どもの努力による学力の効果というものは、家庭背景のもとに生み出されていた可能性を示しているのです。
 2章で指摘してきたように、これまで日本では社会的な階層ではなく、その人の努力によって学校の成績が規定されている業績社会だと長い間信じられてきました。ところが、この研究が示すのは、子ども自身の努力の成果と見えていたものが、実はかなり家庭背景によって影響を受けているという点です。
 つまり、社会的低階層の子どもたちと社会的高階層の子どもたちの間には学力獲得にあたって、スタート時点における家庭背景という明かな差が見られるのです。同じ学力レベルに到達するために、社会的低階層の子どもたちはより多くの努力を必要としていることをこの研究は示しています。

「子ども自身の努力の成果と見えていたものが、実はかなり家庭背景によって影響をうけている」のですね。

 そう考えると、ひと頃あった、いわゆる子どもたちの「学力低下論争」といったものは、ほんとは「ゆとり教育」とか先生の質の問題より、むしろこっちの問題の方が大きいんじゃないでしょうかね。
 ここでも新自由主義とか極端な競争主義の価値観による政策が、日本の子どもをダメにしてきた可能性が浮かび上がってきます。

 そうすると、対策は決まってきます。
 著者はいいます。
「経済的なものがより強く関連しているのであれば、親の所得をどう増やすかを第一義的に考えていかなければなりません」

 その通りだと思います。
 定額給付金もいいけど、そんなものでは子どもは育てられず、日本の未来は救われないでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 07, 2009

貧困ネグレクト・日本

 日本は豊かだ、そう思う人は今はさすがに減ったと思いますが、それでも貧困大国だと思っている人は多くはないのではないでしょうか。

 児童福祉の現場にいるとけしてそんなことはないと肌で感じるのですが、世の中に貧しさに苦しむ子どもがたくさんいることは確かにテレビやマスコミで取り上げられることはありません。

 だから一般の人が気づきようがない。
 お笑いばかりだもんね。

 「子どもの最貧国・日本」によると、OECDのデータでは、80年代中頃~90年代中頃、90年代中頃~2000年までの両時期において、貧困率を上昇させているのは先進国では、日本とニュージーランドだけなのです。

 昔だって貧困の子どもが少なかったわけではなく、80年代は10人に1人が貧困状況にありました。それが2000年になると日本は14.3%(7人に1人の子どもたち)が貧困状況に置かれる事態になっています。
 7人に1人は少ないとはいえないでしょう。
 今はもっと上がっているのは間違いがないと思われます。

 子どもを巡る社会階層や貧困の問題は、バブル崩壊以前にもなかったわけではないのです。あったにもかかわらず、私たちが関心を寄せていなかっただけなのかもしれないのです。・・・(中略)・・・
 日本では、子どもの貧困をめぐる問題は、長い間まったく語られなくなっています。厚生労働省も、65年以降、貧困に関わる公的な測定そのもの(子どもの貧困に関わるものを含めて)やめており、現代に至っても子どもたちの貧困問題を真剣に受け止めようとはしていません。

 国として、貧困を認めず、実態を知ろうともしない、これはとてつもない怠慢です。
 しかし、敢えて著者は言います。

 これは、厚生労働省だけの責任だけではないでしょう。私たち自身の「目」や「耳」の問題でもあると思います。

 と語り、「貧困の大きさは、社会それ自体の豊かさとは関係がない。むしろ貧困を『再発見』していく『目』や『声』の大きさとかかわっている」としています。

 日本人は貧困に関しては、アドラー心理学の「認知バイアス」、苫米地英人氏のいう「心理的盲点(スコトーマ)」を持っていると思います。

 本書はそれを外す絶好の資料になると思います。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 15, 2008

オバマの未来

 風邪で書く気が起きないので、おぼえに入れておきます。

 周知の通り、オバマが時期米大統領になり、米国でも黒人を始め多くの人たちが歓喜したようですが、世界恐慌に真っ逆さまという大変な時になってしまって、ほんと、かわいそうだと思います。

 副島隆彦氏が、彼の「暗い未来」を予測しています。http://soejima.to/
 3年も前に「次の大統領選はオバマで決まり」と断言していた人だけに、やはり傾聴に値すると思います。

 最近は下の記事を裏付けるオバマ閣僚予定者の分析がなされていてとてもおもしろいのですが、会員用ページですので、ここでは引用しません。関心のある人は貧乏研究所のようですので、会員になってください。

 オバマの未来、アメリカの未来は暗い、のか・・・。

 「気軽にではなく重たい気持ちで書く掲示板」2008年12月1日の記事から

副島隆彦から

週刊SPA!誌 の11月中ごろ発売の号に載った私へのインタヴュー記事を載せます。

(原稿。著者校正済み)

外交・経済政策は、転換点に!?
2年後にはオバマからヒラリーへの政権交代!?

―オバマ新政権の先行きは多難である……という言論人が。昨年4月にオバマ新大統領を予言していたという副島隆彦氏だ。

「オバマ新大統領は、4年の任期はまっとうできないだろう。2年で辞任するだろう。そのあとはヒラリー・ローダム・クリントン上院議員が勤める。そして、フランクリン・ルーズベルト大統領がやったのと同じ社会主義的統制の、強権発動の政治体制にして、アメリカは金融恐慌を乗り切るつもりだ」

―予言的発言だが、果たしてその裏付けはあるのだろうか?

「フジサンケイグループも大きくはロックフェラー石油金融財閥と仲の良い、愛国派を気取る日本のメディアであるから、アメリカの大統領がデイヴィット・ロックフェラー(93歳)を頂点とするニューヨーク金融財界によって実質的には決められている、という考えに賛同はしないだろう。それは構わない。

 日本はアメリカの属国なのだ。対等な関係ではない。多大な資金供与をしてきた。オバマは当選直後の演説で『人民の、人民による、人民のための政治体制は、この地上から消え去ることはない』というリンカーンのゲチスバーグ演説を引用して、隠れた特権的な富裕層のための政治はしないと力説して世界中を驚かせた。

が、実際には金融財界を無視した政策はとれない。迫り来る世界恐慌を喰い止めることは出来なくて民衆の不満が高まって辞任に追い込まれるだろう」

―過剰な金融部門のマネーゲームに狂奔したアメリカならば、確かに財界の意向は色濃く政治に反映されそうだ。で、「オバマ後」は誰が担うのか?

「オバマのあとはヒラリーが大統領になる。そういう動きがみられる。ヒラリーはロックフェラー家に忠実だったフランクリン・ルーズヴェルトのニューディール政策と同じ、社会主義的な統制経済化を推し進めるだろう。アメリカは金融機関と基幹産業を救済するために、裏づけのないドル紙幣と米国債の刷り過ぎてハイパーインフレになる。そこでデノミ(通貨単位の切り下げ)を実施して対外借金は実施的に減価する。そしてドルの基軸通貨からの脱落と、アメリカの世界覇権は次第に終わってゆく」

ーそれでは米国債を大量保有する日本は大ダメージ! アメリカとは距離をおけってことでしょうか?

「そういうことだ。ディヴィットが所有する世界最大銀行だったシティグループも来年には破綻する。そのあとを引き継ぐのは甥っ子のジェイ・ロックフェラーで、彼が‘勝ち組’のゴールドマン・サックスのオーナーである。

 ゴールドマン出身のポールソン現財務長官は中国の清華大学で長く講師を務めて、現国家副主席で3年後の国家主席である習近平(ルビ;しゅうきんぺい、シー・チンピン)らを育てた男だ。だから世界覇権はやがてアメリカから中国にシフトする。日本は沈没するアメリカにこれ以上貢がないで、アジア諸国や資源大国であるBRICsとの結びつきを強めていくべきだ」

(別の記事)

――ご本を読ませていただいたのですが、現在の金融危機の状況を5年前に予言していたというのに驚きました。

副島 私はもう90冊、本を書いているんだ。私の本を1冊ぐらい読んだぐらいで驚いたとか言うな! 私はこれまでにベストセラー本を20何冊も書いて出しているんだ。それでも貧乏だ。アメリカの手先をやっているテレビ局5社、新聞5社は、私があまりに本当のことを書くから怖くて近寄らない。

――でも、一般庶民にすれば、『恐慌前夜』の内容はびっくりすることばかりですよ。なぜ現状を予見できたのか、ぜひとも聞きたいところです。

副島 日本国民は洗脳されているんだろ、長いこと。そのための道具がテレビ、新聞だ。

――洗脳? 著書のなかでも、ゲシュタポ金融庁とか、かなり辛辣な批判をされていましたが。

副島 私が、ゲシュタポ金融庁と繰り返し書いたら、やはり、外資の手先になって相当悪いことをしていたようで、金融庁は財務省の中に戻して責任追及から逃れさせることになったようだ。麻生首相と中川財務・金融大臣が決めた。自民党も官僚たちもアメリカが怖いから言いなりなんだ。それで日本国民の大切な資金を今もまだどんどん貢ぎ続けている。

――そのへんは、この本を読んでよくわかりました。

副島  そうか。だからみんなアメリカに洗脳されているんだ、戦後63年ずっと。どうにもならんのだ。まだアメリカのポチたちがそこらじゅうに満ちあふれている。アメリカにしがみついて生きてゆく気だ。電通がただの広告会社の振りをして、お前たちのこの雑誌まで支配している。

――庶民は、世界中で金(きん)の地金(じがね)が底を突きそうだと聞いて、金ショップに列を作っているそうです。

副島 それは大変いいことだ。今も日本では報道管制が敷かれていて、大切な本当のことは報道しないのだ。

――でも、著書の後ろの方でも書かれていましたが、副島さんは自分の本の読者だけは救いたいと。

副島 そうだ。私の本を真剣に読んでくれる人たちだけには、今のアメリカ発の金融恐慌で大損をしてもらいたくない。私はこうやって巧妙な言論弾圧を何とか逃れて、1冊1600円の本の1割の160円をもらって、これで食べているんだ。

――ある種の啓蒙の本ですか?

副島 そうだ。私は啓蒙家(enlightenmentist、エンライトンメンティスト)であり、国民に真実を伝える活動家だ。

――エンライトメント……。

副島 ちがう、エンライトンメント enlightenment ! 「この世に真実の光(ライト) を当てる」という意味だ。私はこの国の大きな真実を暴き立てるように書いてきた。それで数万人の読者を獲得して、これでようやく食べてゆけるようになった。邪魔をしないでくれ。

 なぜ私の予測、予言が当たるかと言うと、それは大きな外側世界の真実を分かりやすく日本国内に伝えているからだ。アメリカ国内にも本当のことを書いている少数の優れたジャーナリストたちはいる。みな虐められている。

 勉強すればわかるこなんだ、頭の良い人間には。洗脳されているバカたちにはわからない。私は敢えて危険な道を選んで生きてきた。あなたたちの背景までも見えるよ。

――副島さんの金融本の読者たちは、今の急激な金融危機突入で、不安で仕方がないから読んでいるのでは・・・。

副島 きっとそうだろう。ひどい目に逢って、ウソばかり教えられて、投資で大損しているから、そろそろ真実を知りたいんだろ。この世界の大きな構造を知りたいのだ。日本人は、自分たち自身がどうもあやつられている、ということに気付き始めている。キミたちとは違うのだ。

――私たち(編集部)はどうにもなりませんか?

副島 どうにもならないね。なぜなら、もうさんざん読者に投資コーナー記事で、毎号、損をさせて本当は責任問題が出ているはずだからだ。 キミらのようなライターのことを、“100円ライター“と言うのだ。私も昔、宝島社で百円ライターをやっていたからよく分かるよ。先輩なんだぞ。

――どうやったらベストセラー本を書けるんですか?私もこのみじめな境遇から抜け出したいんですか。

副島 その頭じゃ無理だな。私をただのそこらの「陰謀論者」扱いする気がなくなったら、私の本を真剣に読んで、それから「副島隆彦の学問道場」サイトに来なさい。本当の文章の書き方を教えてやるよ。

――ありがとうございます。「金儲けさせないで大損させたコーナー」が潰れたらよろしくお願いします。副島さん、それでも庶民は、どうしたらいいか必死で知りたいんですよ。どうしたらおカネを儲けることができて今の重労働の仕事と、貧乏から抜け出せるかと悩んでいるんです。是非、教えてください!

副島 分からん。それは私にも教えられない。今は、黙ってじっとして、これ以上、損をしないでいいように慎重に考えることだ。大恐慌になってもどうせ人間は生きてゆく。まわりも皆、同じだ。どうしたらいいか、どころか、キミら自身が、ウソばっか書いて(机を叩く)! 

 若い読者たちをダマしてきたんじゃないか。こういう時は何にもしないのが一番いいんだ。現実はこのまま進んでいく、それだけだ! どうすればいいですかなんて。健康第一だ。体さえ元気なら、それでいい。それ以上はあまり望むな。

――でも、お金のことでどうにかしなさいっていう本じゃないんですか?

副島 それはそうだ。私は冷酷に客観予測だけをやってきた。こうなって、次はこうなって、その次は、アメリカのニューヨークの金融ユダヤ人どもの大銀行が自己責任の、因業のはてにバタバタつぶれて、と冷静に未来予測をやってきた。自分の主観や願望は一切混ぜない。そうしたら予言は当たる。そうやって私の本のまじめな読者だけは助けた。それだけだ。

――そうですね。他の本とはちがって厳しいことばっかり書いていますね。そしてほとんど当たっています。驚くべきことだ。

副島 いまの最新の情報を教えてやろう。株式や債券はまだまだ下がる。ドル円の相場ではドルが暴落してゆく。来年は一ドル60円で、さ来年は30円だ。やはり金の地金を買うことだ。今年の8月から金は先物市場で奇妙な暴落を始めている。

 米ドルの信認の低下を阻止するために、石油と金をアメリカ政府がニューヨークの金融界とグルになって計画的に暴落させている。だから、いまのうちに金を買っておきなさい。どうせ金(きん)はそのうち暴騰するよ。アメリカが石油(原油)の値段を意識的に暴落させている。

 それは、敵である大産油国のイランとロシアとベネズエラに儲けさせないためだ。あれらは強烈な反米国家だ。それでもアメリカ帝国(世界覇権国)の没落と衰退はもう誰にも止められないんだ。これは大きな歴史の法則だ。自然の流れと言ってもいい。

――誰が金と石油を暴落させているんです?

副島 今一番追い詰められているニューヨークの金融ユダヤどもと、アメリカ政府だ。巨大銀行のトップたちだ。それとシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のレオ・メラメド名誉会長だ。彼が必死でゴルードマンサックスと組んで、アメリカ政府(ニューヨーク連銀)から「金の貸出し」を受けて先物市場(フューチャー・マーケット)で空売りをかけているんだ! 

――なぜ金の空売りを?

副島 今、世界中でまともな人間なら金を買いに殺到している。中国人もインド人も買う。ヨーロッパでは金貨(一オンス)が、1100ドルもするのだ。それなのに先物市場ではわざと700ドルまで落としている。

 日本円でいえば1グラム2300円だ。本当は1グラム300円であるべきなんだ。 ロシアとイランはついにドルとユーロさえも捨てて、金(きん)を国家準備金(リザーブ)にしつつある。今、世界は「パーパーマネー(紙切れでしかないお札や株や債券)から実物経済(タンジブル・エコノミー)へ」になりつつある。

 これは私が5年前に書いた本の書名だ。それから「預金封鎖」だ。緊急の金融統制体制に突入するだろう。  

 ドルは紙切れになるぞ。いくら米ドルの価値を守って暴落させないようにすると言っても限度がある。あと半年だろう。ドルの大暴落が起きる。対実物・現物資産との関係で金(ルビ;きん)が上がる。

――そういう状況下で、オバマが金融危機を回避するには、とにかくドルを刷ることだという人もいます。

副島 オバマが次の大統領になると3年間からはっきりと予言したのも私だ。オバマは優秀で人間もしっかりした、いいやつなのだ。が、ニューヨークの金融財界の言いなりにならなければ済まない。 

 だから、オバマは2年で辞任するだろう。金融・経済政策に失敗して責任を取らされて。そのあとは、ヒラリーが登場するだろう。そのように、実はもう決まっているのだ。これも私の予言だ。今のうちから予言しておくよ。

 ポール・クルーグマンは、すぐには財務長官にしないだろうけど、ワルだから、2、3年後にはなるんじゃないのか。金融恐慌がもっとひどくなって、状況が今よりも悪化していったら、世界中を社会主義的な官僚支配の統制体制にしてしまうだろうね。

 クルーグマンも先生のミルトン・フリードマンもドル刷り散らかし派だ。大銀行を助けるためにいくらでもドルと米国債(国家の借金証書)を発行する。日本では、公的資金投入と言うが、英語では、はっきりとタックス・マネー・インジェクション(税金投入)と言う。

 民間企業を国が助けるのだ。本来はやってはいけないことだ。倒産(破綻)させるべきなのだ。とにかく、お札を刷り散らかすんだ、国債も。あいつらにはもうそれしか手がないんだ。裏付けも実体もないのに、お札だけを刷り散らかしてその場しのぎの救済をする。一体どうなると思う?

――おカネの価値が下がりますね。

副島 そうだ。大暴落だ。だからドルの大暴落は目に見えるようだ。この事態を日本からじっと見つめている私とあいつらとの戦いなんだ。ニューヨークの金融ユダヤ人たちが、目先の強欲に走って、自分たちだけ手早く大金持ちになろうとして、それでくだらない「デリバティブ」と総称される金融商品を死ぬ程、作りまくって、周囲をダマシテ売り散らして、そして、それがついに大爆発したのだ。

 自分たちだけで手数料と利益を何百回も抜きあって、それで善良で健全な金融業者だというふりだけした。天罰がついに落ちたのだ。いい気味だ。デリバティブだけで、残高が4京(4千兆円の10倍)もあるんだぞ。

 どうやって、これだけの巨額の契約を消し込み、解消するというのだ。これをなんとか無かったことにして片付けるということは、血が噴き出すということだ。だから、もうお札経済、紙切れ経済は終わっていくんだよ。

 アメリカは大借金国家だから物価が暴騰してハイパー・インフレになる。だから暴動が起きる。

 日本はまだまだあと2年はデフレが続く。お札(紙幣)に力がある。お札が一番いい。物価も下がって賃金も下がる。時給千円ぐらいでアップアップしながら生きている若者がたくさんいる。従業員の給料も、キミたちだってギリギリまで減らされているだろう。

――まあ、はい。今回の金融危機は、87年(ニューヨークの株暴落)や97年(アジア通貨危機)とは規模も違って、実体経済のバブルクラッシュが同期していないことが特徴だと……。

副島 あのな、実物経済、実体経済という言葉を使い出したのもオレだぞ。副島隆彦が使い出したんだ。その前はそんなコトバは経済学者たちも使わないし、存在しなかったんだ。物流とか流通とか、そういう言葉しか使わなかった。

 急に実体経済(リアル・ウエルス・エコノミー)、実物経済(タンジブル・エコノミー)とか言い出すな。このバカ雑誌が!客(読者)に損ばっかさせた週刊誌とかは反省しなくていいのかね、ウソばっかり書きましたとか。このバカ雑誌って副島が言ったって書いとけよ! 絶対に!

――はい、そうします。それを言うなら、日経新聞の罪ってのはないんですか?

副島 あるよ! あんなもの野村証券とアメリカの手先新聞じゃないか。日本人の資産家や投資家を洗脳して損をさせるための新聞だ。手先のバカ新聞めが。それでも私も日経を読んでるよ。

 産経新聞のようなバカ右翼新聞(愛国派の振りをして本当はやっぱりアメリカの手先)に比べれば、ずっとインテリがそろっていて、世界の金融情報を日本に持ち込むから日経‘翻訳’新聞と呼んでいるのだ。役にはたつよ。

 日経の記者たちは私の本をコソコソ読んでいるから、最近は私の文体が記事ににじみ出ているよ。日本の金融・経済新聞が主体的に何かを報じたってことはない。アメリカの情報を日本語という言語に書き換えるだけだ。翻訳新聞だ。

――要は、単なるスピーカーだったってことですか?

副島 スピーカーねぇ、インターミディエイト(仲介者、媒介者、さや取り業者)じゃないのかな。 「属国日本論」を書いたのもオレなんだぞ、もう18年前だ。日本はアメリカの属国だって。

――いま、そういうこと言ってる人は多いッスね。

副島 そうだろうなあ。タクシーの運転手でもぶつぶつ言っているよ。政治家たちもアメリカの言いなりで仕方がない国だって。オレが初めに言ったんだ! 何十冊もの私の本にもなっている。本屋に置いてあるよ。

 私の苦闘の25年間だ。全部、私が自力でやってきたんだ。だから、言論人や学者たちは、どいつもこいつも私の前に現われられないんだ。偉そうにしてテレビでヘラヘラ言っている。反米でまだましな、金子勝とか森永卓郎でも、自分では虐められていていると思っているのだろうが、私の冷や飯の喰い方に較べればかわいいものだ。

 年季が入っているんだ。もう25年、ずっと日本のメディア(テレビ、新聞)からは干されたままだ。どいつもこいつも、泥棒どもめ、って会えば、まず一言目に言ってやる!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 04, 2005

最近、社会派

 恥ずかしながら私も立派な中年の年齢になりまして、最近は関心の傾向が変わってきたのを感じます。
 根っからの文学、哲学、心理学好きが、最近は社会や政治、経済の動向に関心が向くようになってきたのです。新聞もテレビ欄じゃなくて一面から読むようになったし(アホか)。人生の後半にさしかかってきて、これがユングのいう個性化の過程なのでしょうかねえ。
 つまりは、芸術を愛する内向的な紅顔の美青年が、何にでも顔を出す厚顔無恥のエロオヤジに変貌を遂げたたわけです。人生は儚い・・・。

 そこで、最近私が社会勉強のために巡回しているブログ、HPを紹介させていただきます。

奥田健次の教育改革ぶろぐろ部
 行動分析家、行動療法家の奥田健次先生のブログ。私はメンタリティー的には、行動療法的なものが合うのですが、奥田先生の歯に衣を着せぬ直言に、感じてはいてもうまくいえないことがさっぱりと晴れる気がして、いつも深く納得しています。反小泉心理学者の急先鋒ですね。歴史的にアグレッシブな行動科学者の系譜を見事に継いでおられます。
 それに先生の新撰組のコスプレ姿も良いですね。いつか僕も真田幸村の甲冑でも着てブログに載せてみようかな。

MORITA RESEARCH INSTITUTE CO,LTD
 政治評論家、森田実氏のサイト。反小泉の気骨を感じます。毎日のように更新して小泉政治批判をしているところがすごい。

副島隆彦の学問道場
 異色の国際政治学者、副島隆彦氏のサイト。実は最近副島氏の著作にはまってます。なかなか個性的な人物のようだし、人によって好き嫌いはありそうだけど、私は氏に真の知的誠実さを感じています。日本がいかにアメリカに操られている属国状態に陥っているか、その上で近未来の戦争に向かって日本が駆り立てられているかが理解されてくると、絶望的な気持ちになりますが、読後は気合いも入ります。会員ではないので、「今日のぼやき」「気軽にではなく重たい気持ちで読む掲示板」をよく読んでいます。

小泉内閣の支持率が一桁台になるまで
 いくつかある小泉批判のブログでも、自民党支持者でありながら、誠実に建設的な批判を繰り返しています。苦手な経済分野の勉強にもなります。

立花隆の「メディア ソシオ-プラクティス」
 ジャーナリスト、立花隆氏の小論がほぼ週一のペースで出ています。昨今メディアを賑わす、保守系論壇による女系天皇批判論の非科学性をついた最新のコラムはおもしろかったです。

ヘブライの館2
 栗本慎一郎氏の「パンツを脱いだサル」を読んでから、最近はユダヤ問題にはまっています。そしたらすごいサイトを見つけました。
 ユダヤ問題、国際政治について、様々な角度からの情報量がすごい。ここでも書いた(パンツを脱ごう!「パンツを脱いだサル」読了)アシュケナージとスファラディーという二種類のユダヤ「人種」の歴史、ロックフェラー家とロスチャイルド家の対立、中東問題など、とても興味深い情報満載です。

 思想的立場はみんなそれぞれだけど、今の政治・社会状況に対する深い危機感は共通しています。

 ただいま、鋭意勉強中です。理解が進んだら、いずれ自分なりの意見を述べてみたいと思います。

 

| | Comments (2) | TrackBack (2)

October 08, 2005

パンツを脱ごう!:「パンツをぬいだサル」読了

 パンツを脱ごうといってもヌーディストの勧めではありませんよ(*^_^*)。経済人類学者にして政治家、栗本慎一郎先生脳梗塞からの復活の著「パンツをぬいだサル」(現代書館)を読んで久しぶりに心がグラグラ来たので、感想を載せます。

 栗本さんはこのブログの「恩師」シリーズに載せてもよいほど、個人的には影響を受けた方なのですが、僕と専門領域が違うのできちんとした学問的評価ができるわけではありません。けっこう個性的な人だし、思想的にぴったり合うというわけではないのですが、出世作「パンツをはいたサル」以来著書は面白くて、いつも何かインスパイアーされるのですね。

 本書では、氏が脳梗塞に倒れてからの脳生理学的な知識に基づく氏独自のリハビリの過程やそこから出される現在の医学への批判は、僕の立場でもなかなか鋭くて面白いのですが、何といっても真骨頂は、人類はサバンナにいたからではなく、水棲生物として水辺で生きた時代に直立二足歩行が始まったとする進化論と現在の世界状況に決定的に影響を与える巨額の資金資本とそれ作ったユダヤ人の歴史にまで渡る、気宇壮大な内容にあります。

 パンツとは、人間をただの「裸のサル」ではなく、動物とは決定的に違うところを比喩的に指します。それは、一言でいうと言語、宗教、民族、国家です。

 かくして人は、まずは言語を共有することで同族意識を発達させ、さらに起源神話を作り出すことで自分たちの集団のアイデンティティーの根拠を獲得した。そして、この民族という概念を軸にして、国家という制度が作り出された。

 と、氏はあっさりと人類の歴史を総括します。そういう「パンツ」が現代は異常に肥大化し、人類自身を滅ぼしかねないほど限界に来ているというのが基本的メッセージだと思います。

 本書で説かれている進化論については、次のHPでも紹介されています。 Thunder-r-Revolution

 僕が本書の中で特に面白かったのは、氏が経済企画庁の政務次官だったころ、小泉さん(栗本氏は慶応大での同期生らしい)に経済学を「ご進講」しても、まるで理解する「頭脳」がない、「問題が何かわかっていない」といった裏話的エピソードと、何よりもその小泉・竹中ラインを影で動かし、世界にも多大な影響を与えるユダヤ人の起源についての解説でした。

 およそ今我々が享受している生活や学問の中で、ユダヤ人の影響を受けていないのは皆無でしょう。僕の好きな臨床心理学だって、フロイト、アドラー、フランクル・・・など大きな流れを作った天才、創始者はユダヤ人がとても多いのです。なんでこんなに皆頭がいいの?そして、大戦中はナチスによる悲惨なホロコーストの犠牲者。「シンドラーのリスト」に僕も涙したよ。ところが戦後、イスラエルを建国してからは泥沼のパレスチナ。今のイラク戦争に続く中東の混乱は、すべてイスラエル建国の問題から発しているんでしょ?素朴な疑問として、なんであんなに悲惨な目に遭った民族が、今は絶え間なく人を殺し続けているの?そんな疑問を何となく僕は持っていました。

 人類の栄光と悲劇を背負っているかのごときユダヤ人とは誰か?本書には驚嘆するべき歴史が述べられています。ユダヤ人には大きく分けて2種類いることをご存じでしたか?ひとつは、二千数百年前のパレスチナにいた、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫、つまり人種的に「正統」なユダヤ人であるスファラディーというグループ。僕がイメージしていたユダヤ人は、こちらでした。

 ところが、現代のユダヤ人の多数派は、この直系ではないのです。アシュケナージと呼ばれ、直系のスファラディーとは民族的に全く関係のない人々、「10世紀から登場したが、13世紀以降の東欧に突然大量に登場した」人たちなのです。彼らは元々はカザール人、6世紀末から13世紀までカスピ海と黒海に挟まれた広大な領域にカザール帝国を築いた民族の末裔だというのです。カザール帝国は、西のビザンチン帝国と南のイスラム帝国に挟まれ、対等以上に渡り合った強国でした。ところが8世紀頃、なぜかユダヤ民族でもないのに、ユダヤ教を国境に定めたのでした(キリスト教とイスラム教への対抗策らしい)。ユダヤ民族でもないのに「ユダヤ人」になったのです。その彼らが、カザール帝国滅亡後、東欧に大量に流れていったらしいのです。

 アドラーもフロイトもアインシュタインも、きっとアシュケナージだったのですね。そういえば白人の顔してて、アラブっぽくないもんな。

 アシュケナージは、ヨーロッパで不当な差別や虐待、虐殺に遭い続けながらも、金融や商業、学問、情報の世界で頭角を現していきます。それはそれで、すごいことだと思うのですが、今や彼らアシュケナージの一部の人たち(「権力派」というらしい)の作った巨大な金融システムと深刻な中東問題で、世界中が大変なことになろうとしているわけです。特に、彼らの何千年来念願であり「故郷に帰還」したというイスラエル建国は、何だったのか?という素朴な疑問が浮かばざるを得ません。故郷に帰るなら、カスピ海の方だろって思ってしまいます。

 歴史好きといいながら、ユダヤ・中東問題はよくわからない、複雑な問題だからと、僕は認識するのを回避してきたことに本書のおかげで気づかされました(なんかユダヤなんていいうと、陰謀論とかトンデモ本的見方をされそうでね)。世界にはまだ、認識できていない、学んでいないことがたくさんあるのです。

 栗本氏の言うことを鵜呑みにする必要はないし、ユダヤ人に変な偏見を持つことはいけませんが(氏もそんなことは望んでいないでしょう)、歴史のタブーや真実に迫ろうとする氏の気迫は尊敬に値すると思います。

 「人間」について関心がある方なら、お勧めです。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

September 12, 2005

総選挙結果に、やれやれ

 ご承知の通り、衆議院総選挙は自民圧勝で終わり、何やらイヤな胸騒ぎがしています。元々小泉さんを人間として評価していなかった(デマゴーグとしては大評価)自分としては、自然なのかもしれませんがね、杞憂に終わればよいのですが・・・。

 過ぎたるは及ばざるが如し、栄枯盛衰は世の習いなどと使い古された言葉がふっと浮かびますが、果てさて、蛙の面に何とやらのこの男に通じるかどうか。小泉さんを支持した大衆は自分が「勝ち組」にいるかのように錯覚しているのかもしれませんが、その結末をこれから皆さん時間をかけてしっかり味わってもらおうじゃないか!と啖呵も切りたい気分です(ほんとの勝ち組の人は喜んでいいのよ)。

 僕のいる福祉の世界は、小泉さんやホリエモンの世界とは対極といえます。これまでの彼らの言動を見ていると、僕らに益することはどうもなさそうだと思わざるを得ませんね。近々開かれる臨時国会で、障害者自立支援法もこれであっさり成立するでしょうし(その対応でこれから仕事に追われるぜ)、ストレスと激務で職員が大変なことになっている児童相談所は公務員の「聖域なき人員削減」とかいって本当の必要性なんて何も考えずに人減らしされるかもしれませんし、お金がないという理由で今設置を検討中の発達障害センターは中途半端なものしかできないかもしれません。

 何より、子どもや障害者の人たちがどのような影響を被ることになるか、そして彼ら新自由主義者たちのすることの何が問題なのか、これから権力側のすることを(大きくいえば僕もその一部だけど)きちんと見つめていき、きちんと批判していこう、そのために専門家として自分の力を磨いていこうと決断しています。

 

| | Comments (4) | TrackBack (4)

August 23, 2005

時代は信長を求めているのか?

 ここでは気楽に好きな心理学や武術について書くだけにしようと思っていたのですが、たまにはそこから離れて、時事問題にも触れてみたくなりました。一介の臨床家に過ぎない自分が、あまり政治問題などに口を出すのもどうかと思いますが、長年いろいろな世界やユニークな方々とたくさんの経験をする中で、それなりの人間観を培ってきたつもりだし、具体的な臨床事例を挙げるわけにもいかないので、公的、歴史的人物を取り上げて思考実験をするのも面白いかなと思ったわけです。

 それに実は、僕は歴史が大好きなのです。歴史マニアとまではいかないと思いますが、折に触れ、暇つぶしに歴史関係の本や雑誌を漁ったり、大河ドラマや「そのとき歴史は動いた」などの歴史番組を愛視しているのです。職場の女の子なんかは、そんな僕を「おじんくさい」とバカにするので、「歴史から学ばないでどうする!(大体もうおじんだ)」と叱るのですが、全く意に介してないようです(T_T)。元々人間について関心があるからこそ、心理学や武術に打ち込んでいるのだし、歴史も自分にとってはその一環なんだけどなあ、誰もわかってくれない(涙)。それでは、ご笑読下さい。

 衆議院総選挙で騒がしい昨今、小泉首相は、自らを織田信長になぞらえているようです。以前から熱心な信長ファンらしいし、巷では例の造反議員への刺客候補送り込みを比叡山焼き討ちに例える向きもあるようです。改革者(になりたい人)には、信長のイメージに自らを重ね合わせたくなるのは当然でしょうね。

 そこで、最近ブログで知り合った方のHPにおもしろい記事を見つけたので紹介しようと思います。Thunder-r-Revolution 主宰の長沼敬憲氏はフリーライターや雑誌編集者などをおやりになっている方のようですが、歴史について普通とは違った感覚、見方で解釈をしようと試みていて、歴史好きにはとても刺激的な内容なのです。

 9.11衆議院総選挙を早くも予想する 長沼氏は、今回の衆議院選挙結果を小泉自民の有利と予想した上で、その理由は郵政民営化の賛否自体ではなく、もっと感覚的なレベルにあると考えています。

郵政民営化が本当に必要な改革なのか、国民の多くはよくわかっていない。
その点の不備を民主党や、自民の反対勢力は突いているわけだけど、それって正論以上のものではないわけで、では彼らが代わりに政権を取って「本当の改革」がやれるかというと……、やれるかもしれないが、何の保証もない。

そうなると、8割り方話の進んでいる小泉自民党のほうが、「何かが変わるだろう」という期待感を抱かせる。
繰り返すが、それが正しいのか正しくないのか、そういう話ではない。そんなジャッジはじつは国民にはできない。
大事なのは、理屈ではなく、感覚なのである。
偉そうに言えば、政治家はなによりそれを理解しないと駄目だと思う。

 その感覚として、我々が政治家に感じ取るものを人間としての「器」と氏は呼びます。

人は人を、そんな細部ではなく、もっと大まかな「雰囲気」で判断する。それを曖昧だ、いい加減だと言ってしまったら、世の中は見えなくなる。もちろん、人も理解できない。
なぜならその雰囲気のことを、人は「器」と呼んでいるからだ。

民主党の岡田さんは、話を聞いていると、正しい政策をわかりやすく説けば、国民は理解してくれると思っている節が感じられる。
でも、国民が求めているのは、「正しい政策」ではない。人としての安心感、信頼感を抱かせるだけの「器の大きさ」である。なまじ頭のいい人は、そんな器なんていう目の見えないものは信じない。まやかしだと思ってしまう。

現に岡田さんは小泉さんの人気をまやかしだと思っているだろう。
しかし、小泉さんが曲がりなりに4年間も首相でいられたのは、現状の日本で彼を上回る「器」を持った人間が現れなかったからだ。
それを政策で勝とうとしても駄目だ。
正論をいくら訴えようが、それだけでは負ける。

歴史を俯瞰すれば、小泉さんを凌駕するくらいの「器」を持った人物は、いくらでもいただろう。
しかしいまは、「器なんていう曖昧なものは信頼できない。大事なのはデータだ。科学的な分析だ」と、まだまだそんな価値観がまかり通っている。
器を持った人間が表舞台に現れにくい時代が続いている。

 最新の統計学や社会調査の手法を使えば、近い未来の選挙結果を予測はできるでしょう。でもなぜ、他でもないこの人、この政党が勝ったのかを腑に落ちるように説明しきることは難しいでしょうね。僕も、小泉さんには確かに良い意味でも悪い意味でも、ある種の器を感じていました。悪い意味というのは、見ていると「こいつは危ない男だ」「一流の人間ではないな」という直感があるんですね、他の方はどうでしょうか?あまり主観性や好悪が強くなってしまうと、論じてもキリがないかもしれませんが。ただ、いくら「器」を感じるのは主観的だといっても、僕ら臨床家だって、一見学問的な面接技法や心理テストなどを通して、クライエントさんの器をわかろうとしているともいえるわけです。逆にクライエントさんからは、こちらの器も値踏みされているですね、きっと。人間のコミュニケーションは「器の勝負」であるのは、間違いないでしょう。

 では、小泉・信長に勝るにはどんな器を持てばよいのか。そのHPの別の記事を参照すると、なんと武田信玄というキーワードが出てきました!とかく信長の対抗馬として、守旧派の代表みたいな評価のされがちな信玄を、信長より器のでかい人物として評価することができるというのです。武田信玄という遺産

 ちょっとわかりやすく説明していきます。信玄の場合、甲斐の国(山梨県)の生まれですが、甲斐は貧しい国で主食の米もあまりとれません。彼の家はその貧しい国の守護を代々つとめる家柄だったわけですが、貧しいというだけでなく、家臣や血族とのつながりもバラバラ。このバラバラを武力によってまとめたのは父の信虎です。信玄はこの父を国外追放して実権を握りますが、武力によって貧しさを克服し、家臣団の連携を維持するというやり方そのものは踏襲しました。

 とはいえ、このやり方はほとんどの戦国大名がやっていることでもあります。言い換えれば、そういう課題なり、条件なりが乱世のリーダーとして最低限義務付けられていた。ここで言いたいのは、信玄がこの条件をかなり高いレベルでクリアできたということ。暴君として知られた父の生き方を反面教師として見てきたことも大きかったかもしれませんが、簡単に言えば軍事的な強さだけでは駄目、人の心を無視したら反目される。この当たり前の現実を彼は理解していて、自分なりに実践ができた。だから武田二十四将などと言われる有能な家臣団が育った。反面、信長はこれがうまくできませんでした。

 人徳などというと綺麗ごとのように聞こえるかもしれないが、これはすべての人が身につけられるわけではない。まあひとつの才能だと考えてください。信玄が一流と言われるのは、これが第一に評価されているからです。一方信長は、信玄の父・信虎と、その点はよく似ている。彼が天才だったから家臣がついてこれなかったのだなどと言うと、あの時代にはむしろ難しいことだった人心収攬の術を会得していた信玄が過小評価されてしまう。家臣に愛想をつかされて殺された人を、気の毒と思うならともかく、あまり過大に評価しすぎるのは、テレビの見過ぎというものです。

 生粋の甲州人として、僕も当然武田信玄ファンなので、これはうれしい(^O^)。天才でも精神的に未熟で人間関係スキルのない信長や神懸かり上杉謙信とは違い、真の人間力を鍛え上げた信玄。信長はあっけなく殺されましたが、信玄は思想的、実質的後継者といえる徳川家康に継承され、最近再評価著しい江戸の時代へとつながっていく・・・。その記事では、信長との対比だけでなく、信玄の人間的ポテンシャルを上げるためのライバル謙信との関係、家康の信玄への憧憬も興味深く書かれています。

信長を「何をした人か」で評価する従来の見方が間違っているわけではありません。しかしその評価の方法は時代や国などによって変わりうるものです。事実と評価を混同させてしまうと一つの固定観念ができあがります。作家の明石散人氏によると、信長が現在のように評価されるようになったのは、戦後からだそうです。映画などで萬屋錦之助らのスターが信長を演じたことで、それが一つのイメージとして人々の意識に植えつけられた点が大きいと言っています。確かにそういう面はあるでしょう。

 信玄はそうした信長を中心とした視点のなかで、古い権威の最大の象徴のように位置付けられ、信長との対比抜きには語られにくい存在になってしまった。しかし考えてください。従来の信玄は、上杉謙信と対比されることで、その人物像が浮き彫りにされてきたのです。信玄×謙信という図式は「古い」んでしょうか? 一度「信長は凄い」という前提を取り払って、この二人を見つめ直したらどうでしょう? そうすると、もっと生の人物像が見えてくると思います。そしてそのほうがオーソドックスで堅実な物の見方なのです。オーソドックスを見失うと、多くのことが同時に見失われます。

 想像力を巡らせて考える歴史は本当に楽しいな。ただ、今の日本に信玄に相当する人物がいるかなー。岡田さん?亀井さん?小沢一郎?田中康夫やホリエモンはどう見ても違うだろうし、うーん・・・。やっぱり小泉・信長政権は続くのか?明智光秀はどこだ?とにかく政治家たるもの、本質的な人間力を磨いて世に打って出てほしいものです。岡田さん、僕のところに相談に来れば信玄への道を教えてあげるのになあ、なんちゃって。

| | Comments (2) | TrackBack (0)