May 24, 2020

『アドラーに救われた女性たち』

 日本のアドラー心理学の歴史と共に生きてきた大先輩・鶴田恵美子先生が、ついに本を著しました。

 つるたえみこ著『アドラーに救われた女性たち 親子関係・夫婦関係に悩むあなたへ』(みらいパブリッシング)

 先生から献本いただきました。ありがとうございます。

 本書はタイトル通り長年、女性、家庭支援に精力を注いできた鶴田先生が、その温かい人柄と柔らかい感性を活かして、ご自身の人生を振り返り、アドラー心理学との出会いから発展まで、そして実際の現場での援助のポイントを、わかりやすく綴られたものです。

 実は私は、鶴田先生が創設された日本支援助言士協会の顧問と講師を務めさせていただいており、本書の執筆や出版も企画段階から耳にしていたので、当然応援していました。ついに実現してよかったです。

 個人的に興味深かったのは、戦後・沖縄の粗っぽいというか複雑な社会の状況と、その中でたくましく生きる若き(すみません m(__)m)先生の生き様。まさにアドラー心理学の早期回想みたいなもので、ライフスタイルがうかがえて楽しかったです。

 家族支援の本質が学べます。

 是非、お読みください。

 

 

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May 19, 2020

『みんなの当事者研究』

 ステイホームで時間があるので、積読状態だった本を引っ張り出して読んでいます。

 熊谷晋一郎編『みんなの当事者研究 臨床心理学増刊第9号』(金剛出版)

 2017年に出た、当事者研究に携わる人たちの対談、報告集ですがとても面白いです。

 アドラー心理学の観点からも首肯できる発言や、思わずコメントしたい内容がたくさんあります。

 もちろん彼ら論者、実践家たちはアドラー心理学について全く知らないので、それについて何の言及もないのですが、そこかしこに共通性がうかがえます。

 特に、「中動態」で知られる思想家の国分功一郎氏と東大の当事者兼研究者の熊谷晋一郎氏の対談には、「意志と選択」「原因探しの問題」「仲間」など、アドラー心理学の「主体論」や「共同体感覚」に近いワードが続々と出てきます。

 目を引いたのは、あの「浦河べてるの家」を起ち上げたことで知られる、向谷地生良氏の「当事者研究とソーシャルワーク」という論考。氏は、ベてるの家の実践の意義をどのように説明するかを探求しているうちに、ゴールドシュタインという人の「認知ヒューマニスティックアプローチ」にその解を見出したそうです。

 その認知ヒューマニスティックアプローチは、「自己、システム、人間関係などに関して、人がどのように思考し、意味づけ、認知しているかの深い認識こそが、実践に対して信頼しうる理論的基盤を提供する」という考え方であり、クライエントとワーカーとの「対話」を重視するそうです。

 そこでは、認知ヒューマニスティックアプローチの説明が表になって表されているのですが、どこかで散々聞いた話ばかりです。

 さもありなん。向谷地氏によると、ゴールドシュタインはこの認知ヒューマニスティックアプローチをまとめ上げるにおいて、「ベック(Beck A)が提唱する認知療法や認知/実存的な立場をとるフランクル(Frankl V)の研究を参考にしていた」そうで、二人ともアドラー心理学に直接間接に強い影響を受けていた人たちです。アドラーの子孫みたいな人たちです。

 ここでも、アドラー心理学の普遍性が確認できたような内容でした。

 そう思うのは私だけかもしれないけど。

 

 

 

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May 16, 2020

ステイホームで集中稽古

 前回、コロナによる自粛強制下における武道・武術団体の苦境について述べましたが、学習者個人にとっては必ずしもこの事態は悪いものではないかもしれません。生活や経済的な問題を除けば。

 ステイホームしていれば、一人稽古をする時間が山ほどあるからです。

 都会の人は部屋が狭かったり、音を出せないアパートなどに住んでいると難しいかもしれませんが、私のような田舎で、室内のスペースもある程度あったり、家の外が何の密もない環境ではけっこう練習できます。そういう人は、意外に多いと思います。ただ下手に「外でやってます」と言えないだけで(言うと非難されかねない)。

 山ごもりならぬ家籠りで、普段できないことができているかもしれません。

武道やっててよかったな」とこの時期に思うのは、何の道具も器具も要らないこと。せいぜい剣と棒っきれぐらい。身一つできること。それでいて効率よく全身を使った運動になることです。太極拳が改めてよくできていることを実感しています。

 そもそも本格的な伝統武術は基本殺人技なので、人に見せることはなく家の中でひっそりと伝授されていたところもあるので、元々ステイホーム向きなのです。

 私からの提案は稽古の中に、普段の生活の中ではなかなか意識できない体の細かい部分を意識化して、動きの精度を高める稽古をすることです。

 例えば股関節などどうでしょう。

 高岡英夫先生の『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』(カンゼン)のワークで股関節を意識しながら、体を動かすと深いところが感じ取れるようになれて、実に快適ですよ。

 お勧めです。

(私も老眼になってきたので、フォントを大きくしました。読みやすくなりましたかね)

 

 

 

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April 17, 2020

『不登校に向き合うアドラー心理学』増刷決定!

 一億総不登校、ひきこもりとなってしまったこんな時期ではありますが、昨年末に私が編者になって出した『不登校に向き合うアドラー心理学』(アルテ)が増刷されることになりました。

 一般書とか自己啓発書ではないので部数は少ないですが、ありがたいことにけっこう評判がよく売れているようです。

 本書は、アドラー心理学を不登校臨床、支援の現場でどう活かすことができるか、教師、カウンセラー、ソーシャルワーカーによる報告だけでなく、元当事者や保護者へのインタビューなど、エピソードも満載です。

 自粛中にアドラー心理学の「応用編」を学ぶには格好の本と思います。

 是非、お読みください。

 それにしても、このコロナ騒ぎが終わったら、学校は、不登校問題はどのようになっているだろうか、新たな研究課題が出てきそうな予感です。

 

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March 27, 2020

『インテグラル理論』

 まさに東京ロックダウン前夜か、という感じになってきましたが皆さん、お元気でしょうか。

 まあ私の山梨は元々ロックダウンされているようなところで、ホントにするとしても主要幹線道路と鉄道を止めればロックダウンできてしまいます。数年前の大雪の時はまさにそうでしたね。

 新型コロナや自粛についていろいろ思うところはありますが、せっかくの自粛ですから本を読んだり勉強する時間にしたいですね。

 アドラー心理学をさらに進化させるために、そしてポスト・コロナの世界を展望するために、最近トランスパーソナル心理学のケン・ウィルバーに改めて注目しています。大学時代、『意識のスペクトル』(春秋社)で心理学、神秘思想、宗教学に開眼した私は一時期傾倒していましたが、臨床現場に出るにつれて次第に関心がなくなり、最近約30年ぶりに戻ってきました。

 昨年出た、ウィルバーの思想をまとめたのが、ケン・ウィルバー著『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』(加藤洋平監訳、門林奨訳、日本能率協会マネジメントセンター)

 以下は研究顧問を務めていたある企業の幹部と行った研究会で、私が書いたレポートの一部です。日本の古神道と臨床心理学、発達発達学を統合しようという試みの一部です。

 覚えにここでも載せておきます。

 本書の概要を知ることができると思います。

(転載貼り付け)

 統合と意識進化

はじめに

 ケン・ウィルバーは、トランスパーソナル心理学の代表的論客として知られている。80年代前半、「意識のスペクトル論」によってアメリカの心理学界に衝撃のデビューをしてから30年以上経つが、現在も精力的に著作を発表をしている。

 特に最近は「ティール組織」のアイデアを提案し、組織論の世界でも注目されているという。

 本書『インテグラル理論』はウィルバーの著書『The Theory of Everything』の最新訳であり、彼の関心の中心である人類の意識進化論と人間科学に関するあらゆる科学理論を統合する枠組みを、「インテグラル理論」として提案している。ウィルバーの仕事は、○○株式会社の研究開発、○○の関心、理論と重なるとことが多いと思われるので、ウィルバーの発想の主なところを抽出し、比較のための資料として供したい。

問題意識:意識進化の時代的必然性、統合への関心

 ウィルバーは将来の人類社会の方向性を、「意識進化」「統合」という方向で見定めている。

「人類は孤立した部族や氏族から始まり、小さな農村へと、古代国家へと、征服を求める封建帝国へと、国際的な法人型国家へと、そして地球共同体へと、歩みを進めてきた。この驚くべき進展の先に、統合的共同体(インテグラル・ヴィレッジ)が現れることは、もはや必然であるように思える。

 言い換えれば、今日、意識進化の最先端は、来るべき統合的時代ー少なくとも、その可能性―の一歩手前にまで到達しているのである。統合的時代とは、全ての人間が、人類が現在もっている全ての知識、知恵、テクノロジーに触れることができる時代である。そしてもちろん、私たちは遅かれ早かれ、全てを説明する「万物の理論」を手にすることになるだろう・・・。  p34」

 これは、現代における意識進化の必要性、必然性を訴える○○とほとんど同じ問題意識に立っているといえる。網羅性、階層性を重視するところも同様である。

ウィルバーの仕事

(1)意識進化モデルの構築

 初期のウィルバーの意識進化モデルは、心理学の心の発達理論を、仏教やスーフィー、キリスト教やユダヤ教の神秘主義の理論を接続したところに特徴があった(意識のスペクトル論)。

 本書では、さらに発達心理学や組織心理学の最新の理論を駆使して、さらに詳しく8段階のモデルを構築した(スパイラル・ダイナミクス)。各段階を色で表現しているところが特徴的である。(詳細は本書を参照)

 

世界観1 ベージュ 古代的 生存の感覚 本能と生まれ持った感覚と研ぎ澄ます

世界観2 パープル 呪術的 血族の精神 神秘に包まれた世界の中で調和と安全を求める

世界観3 レッド  呪術的-神話的 力のある神々 衝動を表現、自由になる、強い存在

世界観4 ブルー  神話的 真理の力  目的、秩序、未来を確実にする

世界観5 オレンジ 合理的 努力への意欲 分析、戦略を立てる

世界観6 グリーン 多元的 人間らしい絆 内なる自己を探求、他者を平等に扱う

(以上、第1層)

世界観7 イエロー(ティール) 統合的 しなやかな流れ 複数のシステムを統合、調整

世界観8 ターコイズ 全体的 全体の眺め シナジーを起こす、巨視的視野

(以上、第2層。ウィルバーの図は第1層が最下位にある)

 

 ウィルバーの見立てでは、現代は人口比において、ブルー段階にいる人は40%、オレンジ段階は30%で、ほとんどの人は秩序や制度、合理性の世界(ブルー、オレンジ)に存在していることになる。

 世界の多様性を認め、ポストモダンやエコロジーに関心があり、新しい世界像に関心のある人(グリーン)は10%程度しかいないという。

 それらよりもっと原始的な意識(途上国や未開社会、紛争地域にいる人:レッド、パープル)は20%程度もいるとしている。

 そして、統合的な意識に達した人、ティール組織を実践できる人(イエロー)は1%ぐらいしかいないと見ている。つまりほとんどの人は、平等性、無支配性の高い組織を作って運用するほどのレベルに達していない。

 そのためウィルバーは、人類の意識進化の道筋を描きながらも、そこに至るにはまだまだ時間がかかる、100年単位の出来事と見ているようである。そこで、意識進化の障害になるところも考察している。例えば、ベビーブーマー世代の自己中心性や、エコロジーや精神世界に関心の高いグリーンの人たちの、非合理主義や反科学主義には警鐘を鳴らしている。

 バラ色の理想をただ描くのではなく、発達の妨げになる個人心のあり様や社会の問題にも目配せしているところは参考になると思われる。

 そのようなウィルバーの現状の社会に対する認識は、広範な文献や研究を網羅しているだけあって、妥当性が高いと思われる。ただ、その意識進化の速度については、我々との認識の違いがあると思われる。

 禅を中心に修行していたウィルバーは、意識進化の方法は本書では明示していないが、瞑想を中心にした「気づきのライフスタイル」を徹底させることにあるように見える。いわば、アナログの修行方法、生活態度を中心にしている。

 その過程で、人の心理的ブロックやトラウマ、誤った価値観などで意識進化が停滞したときは、サイコセラピーや代替療法などで修正していきながら、コミュニティーの改善や政治的実践を行う(ディープエコロジーなどと呼ばれる)といった方向性と推測される。

 したがって天才と呼ばれたウィルバーでさえ、基本的には修行的、伝統的なアナログな方法による以外のイメージは乏しく、デジタルデバイスを使用しての意識進化の可能性はまったく考慮していないようである。

 また、仏教や神秘主義思想の該博な知識があるウィルバーも、日本の神道に関してはまったく言及がないので、知らないといってよいだろう。むしろ、多神教的、呪術的な宗教を意識の発達の初期の段階と捉えている(パープルやレッドの段階)ので、もしウィルバーが一般的な神道について教えられれば、意識進化の初期の段階と位置づけたかもしれない。

(パープル、レッド、ブルーの説明 p51-53)

(2)意識進化とはどんな状態か

(イエロー(ティール)、ターコイズの説明 p59-60)

 現在の人類が意識進化した状態では、柔軟さ、自発的、機能的であることがもっとも重視される。差異や多源性は統合される、自然で様々な流れが相互に依存しあう。

 全ての存在が網目細工のように絡み合っているという認識。多種多様なレベルの相互作用を認識できるようになる。どんな組織にも調和と神秘的な力を感知し、フロー状態が遍満している。

 ウィルバーは、「発達とは自己中心性の減少である。」「発達においては基本的に自己愛の減少と意識の拡大という二つの出来事が起きる。」と端的にまとめているが、自己愛(ナルシシズム)の狭い世界から人が抜け出して、「公」という広い視点を得るプロセスを意識進化とする○○のアイデアを、別の面から表現しているといえるだろう。

 ウィルバーの描く意識進化した状態と、我々の描くそれとの異同は、今後の論点となるかもしれない。

 

 

 

 

 

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March 15, 2020

『何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損をしない方法を教えてください!』

 新型コロナウイルスの影響は悪いことばかりですが、数少ない良いことは、確定申告の期限が一か月延びたことですね。

 私は気持ちにゆとりができた分、逆にやる気になったのか、学校の仕事もなくて暇だったこともあって、先週一気に仕上げて、税務署に提出に行きました。例年この時期は激混みの税務署はホントに人がまばらで、駐車場も難なく入れて、すぐに提出することができました。

 公認心理師という国家資格ができて、これからは開業(私設とこの業界ではなぜか言います)カウンセラーが増えるでしょう。私のような零細開業心理士は、慣れない確定申告に右往左往すること請け合いです。私も遅まきながらようやく最近わかってきました。

 そんな金勘定に弱いカウンセラーさんが税金のことを学ぶには、この方の本や動画がお勧めです。

 大河内薫・若林杏樹『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)

 長ったらしいタイトルですが、マンガ家の若林さんが税理士の大河内先生に鍛えられながら税金について学んでいく、「マンガで学ぶ確定申告書の作り方」です。大河内先生はなんと日本大学芸術学部卒ということで、クリエイター、芸術・芸能系のクライアントに特化、支援している方のようです。まさにフリーランスの味方ですね。

 Amazonの節税対策部門で第1位のベストセラーなのもうなづけます。

 もっと早くこの本が出てほしかった。

 これから開業するカウンセラーさん、「思い切り臨床をやりたい!」とはやる気持ちを抑えながら、先ず税金やコストのことを考えてスタートしてくださいね。

 

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March 10, 2020

『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる』

 スポーツや武道、格闘技だけでなく、日常生活全般において、よい動きをするための最重要ポイントは股関節です。股関節を意識できて動かすことができれば、その人のレベルはグーンと上がること請け合いです。

 ただ、股関節はとても意識しにくい箇所といわれます。普通の人は自分の股関節をありありと感じることは難しいし、先ずできないと思います。

 イチローが打席に立つ前に必ずやっていた股割り動作や、力士の四股、太極拳や形意拳などの中国武術の気功(立禅、站椿)などの専門的トレーニングが必要です。

 そこで、高岡英夫先生の『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』(KANZEN)は、誰でも股関節の意識を高めることができるための、理論とエキササイズがあり、お勧めです。

 私も自分の稽古の前に、本書にある股関節を感じるためのベーシックな方法をしています。型をしているときに股関節の動きが何となく感じられて、深いところから動いている感覚があります。また、普通に歩くときもとても快適です。

 とても効果的じゃないかな。

 新型コロナのせいで自粛、自重だらけの今、室内で過ごす時間が長くなっている人が多いと思います。こんな時は室内でできるトレーニングが必要です。高岡先生のメソッドは常にゆるむことベースなので、とても快適に取り組めると思います。

 

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January 22, 2020

AAとアドラー心理学

 前記事の『アドラー心理学を生きる』(川島書店)に、心理臨床家や依存症支援者にとって注目すべき情報があります。

 アルコホリック・アノニマス(AA)の成立にアドラー心理学が影響していたかもしれないのです。

 AAは1930年代、ニューヨークシティのウィリアム・R・ウィルソン(ビル・Wとして知られる)とロバート・ホルブルック医師(ボブ医師として知られる)の二人で始められました。ビル・Wはアルコール依存症の当事者でした。彼は「12のステップ」という依存症の世界ではあまりにも有名なプログラムの発想を提案しました。

 AAはその効果から、日本を含め世界中に広がりました。それまでの医療の枠を超え、当事者が参加し発言すること、仲間意識を醸成し、人々とつながり孤独を癒すことが治療の本質であることを世界に知らしめたことで、依存症の治療に多大な影響を与えました。

 AAに始まるさまざまな自助グループ、近年盛んな当事者活動、当事者研究を見ると、まさにアドラー心理学でいう共同体感覚が極めて重要であることがよくわかります。ただ、アドラー心理学を知らない臨床心理学者、心理臨床家、医療者は何とか違う言葉をひねり出そうとしているように見えます。オープンダイアローグの中で起きていることを、研究者たちはためらいながら「愛」と言ったり、当たらずとも遠からずで、共同体感覚といった方がしっくりくると私には思えます。

 本書では、AAのアプローチとアドラー心理学のアプローチがいかに類似しているかを簡潔に指摘しています。私も精神病院勤務時代と開業してからずっと、依存症治療にかかわり、AAに通っている患者さんに会っていたので(送迎したときに参加したこともあります)、ずっと同じように感じていました。

 そして近年の研究で、単に似ているだけだなく、実際にAAの創成期にアドラー心理学の影響がうかがえることがわかったのです。

 なぜなら、ビル・Wの母親、エミリー・グリフィス・ウィルソンは「ウィーンでフロイトの元同僚であったアルフレッド・アドラーに学び、サンディエゴでアドラー派のアナリストとして活動していたから」です。

 したがって本書では、ビル・Wはアドラー的知識を持っていたのではないかと述べています。

 これは驚くべきことです。

「ビル・ウィルソンは、アメリカ文化におけるもっとも傑出した指導者の一人になった後でも、常に母親による癒しを求めていた。ビルの母は彼が11歳の時に彼の元を去ったが、それでもお互い手紙を通じて緊密にやり取りをし、それはビルが成人してからもずっと続いた」(p280)

 ビル・Wは母親から勇気づけを得て、陰に陽にアドラー心理学の発想を学び、もしかしたらというかきっと、当時ベストセラーだったアドラーの本も読んだかもしれません。詳しいことはわかりませんが、ビルのお母親も、おそらく夫(ビルの父親)といろいろあって幼い息子と離れざるを得なかったのでしょう。それでも関係を切らずに連絡を取り合っていたわけで、この二人のドラマを知りたい気もします。

 まさに臨床心理学の秘史といえそうです。

 この他に、精神科デイケアを始めた一人にアドラー派の精神科医のビエラがいたことを私は知っていました。このAAの話も北米アドラー心理学会参加時に聞いていました。デイケアと自助グループという、現在の精神医療の最重要な2つの柱にアドラー心理学が影響していたことを知り、うれしく感じたと共に「やっぱり」という思いも強くしました。

 

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January 18, 2020

『アドラー心理学を生きる』

 今年最初の本の紹介は、やはりアドラー心理学本。これはけっこう重要な本だと思います。

 アドラー心理学の最重要概念である「勇気」について、理論的に考察し、かつ実践に役立つように目指された本です。

 ジュリアン・ヤン他著『アドラー心理学を生きる 勇気のハンドブック』(今野康博・日野遼香訳、川島書店)

 昨年の4月に出た本です。私は本書の原書を持っていたので内容は知っていましたが、ぜひ多くの人にも知ってもらいたいと思っていたので翻訳を出していただけたのは本当にありがたいです。なかなかアドラー本人以外のアドラー派の人による文献は翻訳されないので貴重です。

 本書はとかく曖昧になりがちな勇気について、非常に丁寧に考察しています。アドラー心理学内部だけではなく、西洋哲学、東洋哲学も網羅し、参照した上で、勇気とは一体何か、人類の知の歴史、発展においていかに重要な概念であるかを説いています。これはアドラー心理学をきちんと考える上で、大変重要なことだと思います。

 著者のヤンさんは、中国系(台湾人)のようなので、特に中国哲学(儒教、道教)とアドラー心理学を絡めて論じているところところがいいですね。

 特に本書は、仕事、愛、友情、所属、存在、スピリチュアリティといったライフタスクと勇気との関係を考えているところが出色です。これを参照することで、私たちは勇気について考えたり、書いたり、話すときに厚みを出すことができるでしょう。臨床にも役立つと思います。

 アドラー心理学の基礎を学んだ方は、是非お読みください。

 

 

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December 22, 2019

『不登校に向き合うアドラー心理学』の書影が出ている

 Amazonに、拙編著『不登校に向き合うアドラー心理学』(アルテ)の書影がようやく出てました。

 こんな感じです。別に私がモデルではないんですけどね。親子とカウンセラーの図です。

 よろしくお願いします。

 

 

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