『太極拳講義』
太極拳に関する本は数多くありますが、自分が所属する流派、団体の太極拳でないとほとんど役に立たないものです。
一般の方は知らないでしょうが、太極拳にはたくさんの流派、団体、組織があり、それに応じて型がたくさんあるからです。
他の団体の太極拳の分解写真を見てもほとんど参考になりません。
武術マニアの中には、各流派の違いを見て研究したり、楽しむ人もいますがまあ少数でしょう。
しかし、太極拳の本質的なところは、基本的には流派を問わず共通するところがあります。
沈剛監訳・著『太極拳講義』(文学通信)はその要望に応えてくれる本だと思います。
著者は、呉式太極拳の伝承者で中国から日本に移住した方です。日本語も堪能です。
呉式太極拳はいわゆる伝統武術の名門のひとつで、名人、達人を輩出した流れとして斯界では知られています。
私は20年ほど前か、沈先生が来県した時に知人に紹介されてお会いしたことがありますが、とても穏やかで謙虚、でも推手の達人で、「いかにも太極拳家らしいな」と感じました。
本書はその呉式太極拳で伝えられている内容を紹介しているのですが、個々の技ではなく太極拳の発想法や哲学の根源的なところ、そして太極拳の歴史を詳しく説いているので、他の太極拳修行者にも大いに参考になります。
沈先生は、「そもそも「太極」とはなんでしょうか。気を動かすのが太極です。正しい練習を続けていれば、いずれ気を動かすことが出来るようになります」と言います。まさに伝統武術家の物言いです。
これを受け入れて日々修練するるのが、太極拳修行者です。
武術を現代的に解釈するのもよいけれど、伝統を伝統のままに伝えることはそれ以上に大切です。
現代的な知の枠組みでは、とらえきれない宝物がまだ眠っているかもしれない、いや眠っているからです。




















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