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August 13, 2025

武術の目的

 前回、中国武術の意義について述べましたが、武術・武道(格闘技も含む)を学ぶ人の目的は、当たり前ですが人それぞれです。

 そこには、アドラー心理学でいう「目的論」が関係してきます。人生目標とか、社会や対人関係の中でどのような目的をもって人生を進めるか、ということですね。

 武術・武道は実に幅広い関心領域を網羅しているので、多様な目的に応じることができます。

 体育や健康、美容を目的にするなら、それ目的のボクシングジムや武道教室はたくさんあります。

「強さ」を実感し、他者や社会から承認されたければ、剣道、柔道、競技空手(型だけでなく、フルコンタクトも含めて)、各種格闘技を選ぶでしょう。基本的にはそれらはどれだけ「実戦的」をうたっていても、スポーツです。

 最近はやりの身体操作を学びたければ、高岡英夫氏や甲野善紀氏はじめ、現在活躍している身体論者、実践家を訪ねるとよいでしょう。ちょっとマニアックですね。

 よりスピリチュアルな関心の強い人は、合気道系(大東流を含む)の中に、かなりの実力者やぶっ飛んだ人たちがいます。

 最近はロシアの格闘術をルーツにするシステマが注目されていますが、リアルな戦闘力と心身の深い学びが得られるということで、若い人たちに人気があるようです。

 私も臨床家として身体操作や心身相関的なものにも関心があるので、高岡英夫氏の運動科学を中心にいろいろと渉猟してきましたが、それらはつまみ食い程度で、あくまで取り組んできたのは伝統的な中国武術でした。

 私にとってこの選択は半ば無意識的なもので、アドラー心理学的にはライフスタイル、つまり私の人生目標や行動・思考パターンに影響されていたといえます。

 つまり中国武術家の宮平保先生のように、リアルな護身術をマスターすることが第一で、そして歴史好きなので最近勃興した新しいものではなくできるだけ古いもの、伝統的で本格的なもの、などを総合して選択した結果だと思います。

 現代社会は法や警察が整備されているので、護身術やケンカ術、あまつさえ殺人につながりそうなものは不要だという意見もありますが、私はそうは思いません。

 私の特殊な仕事も関係していると思いますが、いまだに暴力は社会の隅々に存在しています。

 たとえ過剰防衛になるリスクがあったとしても、やり返さなければならない事態に遭遇することは十分にありえます。

 特に最近議論が喧しい外国人問題がこれに絡んできそうですが、ここでは止めましょう。

 というような見解は正しいというより、私の世界観、アドラー心理学のライフスタイル論でいう「他者イメージ」「世界像」に関係しているところです。人や世の中をどのように見るか、ということです。

 武術・武道に関心のある方は、ご自身の求めるものをよく吟味して、何に取り組むか決めるといいと思います。

 

August 09, 2025

中国武術にタックルがないわけ

 伝統的な中国武術は、一般にスポーツ的な試合には不向きです。

 学校でやっているようなスポーツ武道であれ、プロがやるような格闘技であれ、ルールがあり、平等な条件で、素手でのみ組み合ったり、突き合ったり、寝技でゴロゴロし合ったりするようなことです。

 そういうものには全く不向きです。

 でもそれは弱さを意味しません。

 目的が違うからです。

 一言でいうと護身、あからさまにいうとケンカ、場合によっては生死がかかった状況で勝つ、生き残る、最悪殺すための技術と思想です。

 その辺を実演を交えて、説得力をもって示してくれているのが宮平保先生です。

 何年か前、『秘伝』誌やYouTubeなどで登場した時は、武道・格闘技界に衝撃を与えました。

 宮平先生は、中国武術でどうしてタックルが発達しなかったかを下の動画の7分ぐらいのところから説明しくれています。

 タックルはされる方ではなく、する方が危険な目に遭う可能性があるからです。

 実際の戦いでは、隠し武器(暗器)が使われることがあります。

 相手がタックルしてきた途端、こちらは暗器で仕留めることができます。

  だから、「どうぞ、タックルして来てください」というわけですね。

 暗器には各武術ごとに特殊なものがありますが、日常の物でも代用できます。

「素手の拳法を20年30年極めたとしても、相手が徒手武術を使え、さらに暗器も研究している人だったら、君は一発で殺されるよ」

 と、宮平先生が暗器使いの中国人老師から聞いた言葉が印象的です。

 その話を聴いた若き日の宮平先生は、格闘技的な強さを捨てたそうです。

 以前どこかの動画で宮平先生が、

「中国武術は避難訓練のようなもの」

 とおっしゃっていたのが中国武術について、本質を突いていると思います。

 それにしてもこの先生、冷静に淡々と楽し気に、けっこう残酷なことをおっしゃっているのがすごく面白いです。

 武術のリアルを教えてくれる稀有な方ですね。

 

 

July 01, 2025

『太極拳講義』

 太極拳に関する本は数多くありますが、自分が所属する流派、団体の太極拳でないとほとんど役に立たないものです。

 一般の方は知らないでしょうが、太極拳にはたくさんの流派、団体、組織があり、それに応じて型がたくさんあるからです。

 他の団体の太極拳の分解写真を見てもほとんど参考になりません。

 武術マニアの中には、各流派の違いを見て研究したり、楽しむ人もいますがまあ少数でしょう。

 しかし、太極拳の本質的なところは、基本的には流派を問わず共通するところがあります。

 沈剛監訳・著『太極拳講義』(文学通信)はその要望に応えてくれる本だと思います。

 著者は、呉式太極拳の伝承者で中国から日本に移住した方です。日本語も堪能です。

 呉式太極拳はいわゆる伝統武術の名門のひとつで、名人、達人を輩出した流れとして斯界では知られています。

 私は20年ほど前か、沈先生が来県した時に知人に紹介されてお会いしたことがありますが、とても穏やかで謙虚、でも推手の達人で、「いかにも太極拳家らしいな」と感じました。

 本書はその呉式太極拳で伝えられている内容を紹介しているのですが、個々の技ではなく太極拳の発想法や哲学の根源的なところ、そして太極拳の歴史を詳しく説いているので、他の太極拳修行者にも大いに参考になります。

 沈先生は、「そもそも「太極」とはなんでしょうか。気を動かすのが太極です。正しい練習を続けていれば、いずれ気を動かすことが出来るようになります」と言います。まさに伝統武術家の物言いです。

 これを受け入れて日々修練するるのが、太極拳修行者です。

 武術を現代的に解釈するのもよいけれど、伝統を伝統のままに伝えることはそれ以上に大切です。

 現代的な知の枠組みでは、とらえきれない宝物がまだ眠っているかもしれない、いや眠っているからです。

July 14, 2024

空手、合気、中国武術の統合

 極真空手草創期から活躍していた西田幸夫師範(極真空手清武会代表)は自らの武を完成させるため、大東流合気柔術、中国武術など各種武道を積極的に学んで鍛錬し続け、類まれな境地に達していることは関係者には知られていたことでした。

 最近、これも不世出の武術家、合気道養神館の塩田剛三先生のお孫さんである塩田将大先生のYouTubeチャンネルに登場していました。

 西田師範の武術家としての姿勢と高度な技量に魅了される動画です。

 実は西田師範が学んでいる中国武術は私の団体なので、同じ教室で稽古をご一緒したことが何度もあります。

 西田師範は「俺は極真だ」なんて偉ぶるところは全くなく、大変謙虚な物腰で、ミーハーな私はいつも「すごいなあ」という羨望の眼差しで見ていまた。

 だから中国武術に関していえば、大変僭越ながら、私とは兄弟弟子ということになります。

 もちろんレベルは全く違い、遥か遠い存在です。

 その意味でも、西田師範のご登場はうれしいですね。

 塩田先生と西田師範のコラボ動画は連続シリーズでいくつかあります。空手の三戦の意味、空手の型を合気と中国武術の勁という視点からの解説など、武術愛好家には必見の内容です。

 リンクした動画では太極拳、形意拳、八卦掌の動きも垣間見られます。

 呼吸と自律神経のことも触れられているので、カウンセリング関係者にも面白いと思います。

 是非ご覧ください。

 

 

 

June 24, 2024

本来の弓術

 地上最強の武道は何かと問われたら、極真空手でも講道館柔道でもなく、私は弓道(弓術)と答えたい。

 その確実な殺傷能力はすべての武道、格闘技を凌駕します(矢が当たれば)。

 実は私の武道デビューは、弓道なのでした。

 高校で弓道部に入ったのですね。

 卒業後は弓道とは縁がなくなりましたが、時代劇で弓をしている場面が出たりすると、なまじ心得があるだけに俳優さんの動きが気になることがあります。

「上体がぶれててダメだな」なんて勝手にダメ出してしまいます。

 ただ弓道が現在の形になったのは、明治以降です。

 確かに床の上で静止した的に向かって矢を放つ現代弓道は、生の格闘場面とはだいぶ違います。むしろ上品で気品がある趣です。だから女性にも人気があるし、誰にでも取り組めるように発展してきたといえます。

 では昔日の弓道(弓術)はどのようなものだったのか。

 流鏑馬にその片鱗が残されていますが、今は儀礼化されていますし、実際の戦場はもっと多様な場面があったはずです。

 その再現を試みている武術家の動画を見て驚きました。

『秘伝 2024年7月号』の弓道特集の関連動画です。

 動画を見ると、マシンガンのような連射や矢がフライパンを射抜いたり、ボーガンのように弓を横にしたまま射つ技など非常に興味深い。

 これを見て、弓術はすごいと改めて思いました。

 昔日の武士たちはもっと技量が高かったはずです。こんな弓の兵士が大量にいる軍は強かったでしょう。

 古来弓の技は、武芸の中で最も高いランクに位置づけられていたのもわかります。

 

August 18, 2022

『護道の完成』

 太極拳などの中国内家拳を学んでいると、人が暴れている時に抑えることが上手になるような気がします。

 この場合の暴れているというのは、暴漢とかの悪い人ではなくて、患者や障害者と呼ばれる人が激しい衝動やパニックで暴れている状態のことです。

 実際昔、障害児施設で働いていた時に、暴れている子をひょいとかわしながら後ろに回って和らげたことがありました。

 また児相時代に、保護された乱暴な中学生が殴りかかってきたときに、太極拳の技でこれまたひょいとかわして倒した(勝手に子どもが倒れただけですが)ことがあります。その子はその後、私を尊敬してくれるようになって、あっちこっちで「俺の攻撃が通じなかったすごい人がいる」と吹聴して困ったことがあります。

 だから、太極拳をベースに何か護身術的な方法を考えられるかもしれないと思っていましたが、私の日常臨床ではめったに暴力行為はないので何となくそのままになっていました。

 しかし、我が子が自閉症で強度行動障害を呈するようになると、事情が違ってきます。

 当然、本気度が違います。

 若い頃から格闘技、武道の修行(兼ストリートファイト?)三昧だった人が、息子さんがそのような状態になって、それまでとは全く違う護身術を考える必要に迫られました。

 相手が敵や暴漢ならぶちかましたり、制圧すればよいのでしょうが、我が子や本来弱者である障害者であれば、たとえパニックになっても傷を負わせることなく、本人や周囲の人が安全に収まるための新しい方法が必要になります。

 そのために開発された護身術を護道と呼びます。

 廣木道心著『護道の完成 自他を護る実践武道』(BABジャパン)

 本書は、著者の護道開発までの半生を綴っているのですが、全編とても興味深かったです。

 一昔前の大阪のやんちゃな武道・格闘技少年たちの生態(「ちょっとスパー」と称してすぐに本気で戦い出す)は特に面白く、著者と彼らの「実戦」の様子もとても冷静に記述されていて、著者の記憶力や頭のよさも感じられました。

 著者も言っていますが、正直それまでの心理的、福祉的なパニックの対応方法はかなり不十分なものでした。

 基本、関わらない、様子を見る、冷静になるまで安全を確保する、つまりパニック行動を強化しないという応用行動分析学による方針のみでした。

 それでは施設や家庭の「現場」では不十分なのは明らかです。

 しかし暴力を制しようとすると、かえってエスカレートして虐待に発展してしまうこともあり得ます。

 他にやり様がなかったとも言えます。

 その点、この護道の発想や技法は大変使えるものだと思います。

 これは、我々援助職が学ぶべきではないか、とも思いました。

 

September 29, 2021

母子を守る護身術

 YouTubeの武術系動画で最近面白かったのが、空手家・菊池克紀氏が「護道」創始者・廣木道心氏とのコラボ動画です。

 護道については以前から『秘伝』誌で目にしていたので、気になっていた存在でした。

 普通の武術と違うのは、創始者の廣木氏のご子息が自閉症と知的障害をお持ちで、パニックになって自傷したりする行動障害があり、その対応のために編み出されたものだということです。

 パニック時に相手を傷つけないことが最初の目的だったようです。

 実際子どもといっても、思春期以降は親よりも大きくなることもあるので、その時の力は大変なものです。

 大きな事故につながってしまうこともあります。

 それ以前から廣木氏は各種の武術、格闘技を学んでいたので、それらを応用して編み出したようですが、それを普通のお母さんが使えるようにしているところが注目すべきところです。

 もちろん、日常の護身にも使えるようです。

 廣木氏は護道開発にあたり、心理学もいろいろ学んだようで、NLPも実践している様子が動画から見られます。

 心理臨床家は自分自身とクライエントを守るためにも是非、知っておきたいですね。

 こういう時、私は中国武術の技術を使っていますが、護道もいつか学んでみたいです。

【護道】不覚筋動!肩をピストン止め?【誰でも何歳からでも強くなれる】

June 02, 2021

『身体知性』

 2017年に出て一部で話題になった本です。

 佐藤友亮著『身体知性 医師が見つけた身体と感情の深いつながり』(朝日新聞出版)

 現役の医師で合気道家が、西洋医学と東洋的身体論を架橋する試みています。

 合気道家で思想家の内田樹氏のお弟子さんみたいです。

 前半は西洋医学の認識論の歴史が、フーコーの臨床医学の誕生の理論やダマシオのソマティック・マーカー仮説などで紹介され、後半は武道の身体観とオープンダイアローグ、「べてるの家」の当事者研究が取り上げられているところがユニークです。最終章には内田氏のとの対談もあり、なかなか充実の内容です。

 私には、本書に出てくる概念や知識は既に知っているものが多かったですが(当然、特に後半は)、前半の西洋医学の認識論の歴史が詳しく語られているのが面白かったです。

 多くの身体論者は反西洋医学の立場の人が多く、西洋医学への見方がかえっていい加減というか甘い感じがしていましたが、西洋医学を専門とする医学者が自らの経験を踏まえて、文献的に丁寧に説いてくれているので、すごく参考になります。

 何かにつけて、引用に使わせていただきたいと思います。

December 23, 2020

騎馬武者は存在した!

 いわゆる歴史通を自称する人たちの中で、「武田騎馬隊なんて存在しなかった」「騎馬による戦闘はなかった」「武士は馬から降りて戦った」なんて言い方をする人がいます。

 その主な理由は、日本産の馬はサラブレッドに比べて小さくて背が低く、今でいうポニーに相当する馬だから、というものです。馬は荷物を運ぶために使われただけだ、なんて言う人もいるようです。

 でも鎌倉や戦国の絵巻物を見ると騎馬武者が突撃している場面が描かれていますし、文献的にも武士たちが馬を大切にしていたことが多々うかがわれるようです。甲府市では武田神社だったか、馬を大切に埋葬した戦国時代の墓も見つかっています。

 そんな騎馬武者否定の、一見合理主義者たちに反論するかのごとく、騎乗による武術は確実に存在していたことを証明する試みがあるようです。

 これを見ると、和種馬こそ山野や戦場を駆け巡るにふさわしいことが、十分にうかがえます。

 むしろサラブレッドのような競争馬では、貧弱過ぎて戦場では使えないでしょう。

 馬上武芸検証「武と馬」1、太刀、打刀の早駆け・紅陽台木曽馬牧場

 軍馬術、武芸のとしての乗馬1 甲冑騎馬武者・紅陽台木曽馬牧場

 新陰流の師範など、乗馬と甲冑武術に心得のある古武術家たちが参画しているようです。

 森の中を疾駆する姿など、これがメチャクチャかっこいい。

 まさに絵巻物の再現。

 昔日の身体能力の高い武士たちなら、きっとさらに巧みに乗りこなし、武器を扱っていたでしょうね。

 この場所はなんと山梨、富士山麓の牧場らしいです。来年、暖かくなったら是非うかがってみたいです。

 馬に乗りたい!

 

September 10, 2020

太極拳の力

 太極拳独特の動きから生まれる力を「」といいます(中国語、英語の発音では jin)。

 勁により相手の力を受け流し無効化し、勁を発して相手を吹っ飛ばしたり、地面に叩きつける。

 今や武術系の動画は日本や中国、台湾からよいものがたくさん出ていますが、私は英語の勉強もかねて英米発のものもよく見ています。

 けっこう良いものがあって、楽しいです。

 中国系アメリカ人か、アメリカに渡った中国人かよく知りませんが、すごくうまく勁について説明、デモンストレーションをしてくれている動画があります。

 勁はけしてマジックでも神秘な力ではなく、トレーニングで身につけられるものと明言しているのがよいですね。

 そのためには陰陽の陰から始めることを、この老師は冒頭で説いています。すわなちリラックスし内側を見つめ、感じること、徹底的に争わず受け身であることなどが語られているようです。

 字幕付きなので、難しくないと思います

より以前の記事一覧