January 29, 2019

巨人たちの家族布置

 前記事で紹介した『ジェノグラム』(金剛出版)には、フロイト、アドラー、ユングといった「深層心理学の3巨人」のジェノグラム(家系図)が詳細に掲載されています。これがとても興味深い。

 ユングはあの独特の理論が表しているように、神秘主義的傾向が濃厚です。同書にはユングの5代にわたる系図が出ていますが、ユングの仕事である医師は父方に多く(祖父と曾祖父、曾々祖父)、聖職者は父方に2人、母方になんと12人もいます。さらに「霊能者、あるいは霊との交流がある」という人がユングを含めて5人もいます。加えてユングの母親は超自然現象を信じ、精神病で入院しています。

 これは尋常じゃない。ユングの業績は、遺伝的器質による資質、才能によることは明らかです。

 ついでにその家系図には、ユングの妻エンマと並んで、患者で愛人だったトニー・ウルフもしっかり入っています。この人はユング好きには有名な人ですね。

 フロイトは、本書では実に詳細に描かれています。

 フロイトの父母世代は、何か犯罪的な後ろ暗いことをしていたと言われ、父親はフロイトの異母兄と共に「事業上の問題」「偽札偽造事件」にかかわっていたそうです。さらにフロイトの妻マルタの父親は詐欺で投獄されたことがあり、フロイトがマルタに熱烈な恋をしたのは、二人の共通の出自による共鳴、共感のようなものだったのかもしれません。

 そういう家の中で、ユダヤ人の長男フロイト坊ちゃんは、輝ける希望の星だったのでしょう。相当甘やかされたみたいです(これはエレンベルガーの本から)。

 そしてユングにもあったけど、フロイトは女性問題も抱えていたようです。妻マルタの妹ミンナと不倫関係にあったみたいです。フロイトとミンナは何回も一緒に旅行に出かけ、なんとマルタの妊娠中にも、ミンナと旅行に行っていたとか!

 ミンナはフロイトとの不倫をユングに話したことがあったり、妊娠、中絶の証拠もあると本書にあります。

 さすがリビドーのフロイトとでも言いたくなりますね。

 同様の女性問題はフロイトの長男、マーティンにもあって、これまたなんと、自分の妻の妹と関係があったそうです。まさに父親と同じ!家族問題の深さを感じずにはいられません。

 ちなみにフロイトの後継者、アンナも少し違いますがレズビアンで、パートナーの夫はそのためか自殺しています。フロイト一族、いろんなことがあり過ぎ。

 何かと病理思考でどこか性悪説的な精神分析学は、今でも好きな人には強烈な磁場を放っていますが、フロイトの抱えていた問題が反映されていたからこそ、リアリティーがあったのかもしれません。

 それに比べるとアドラーは、兄ジグムントとの確執、弟の死、自らの病と身体障害という問題はありながらも、総じて健康な感じがジェノグラムからします。アドラー心理学の健康志向、未来志向を感じさせるものです。

 この3者を並べると、フロイトとユングの行き過ぎたところを、アドラーが中和というか健康な領域に戻しているように、私には感じられました。

 いやあ、家族って面白いですね。

 それにしても、有名人は何もかも暴かれて大変だ、と同情もしたくなりました。

 

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January 24, 2019

『ジェノグラム』

 私が好きな心理学的ワークにジェノグラムというのがあります。家系図を作りながら、家族成員の情報を書き入れ、相関図のように家族関係を何種類かの線で結びます。完成するとクライエントさんの人生と家族の概要が一覧できるようになります。

 私はアドラー心理学の家族布置の方法として、ジェノグラム作りをクライエントさんと共同でよく作ります。とても面白い面接になります。クライエントさんからも好評を得ています。

 もともと家族療法の技法として登場したものですが、昨年のその決定版といえる本が翻訳、出版されました。

 モニカ・マクゴールドリック、ランディ・ガーソン、スエリ・ペトリー著、渋田田鶴子監訳『ジェノグラム 家族のアセスメントと介入』

 大きくて厚い本で、目にするとビビってしまいそうですが、その分内容はとても濃く、情報量は膨大です。

 ジェノグラムの基本はもちろん説明されているのですが、本書の白眉は、実にたくさんの著名人のジェノグラムが掲載されて、それを俎上に家族の力動や関係性が解説されていることです。これが実に興味深い。

 アメリカ人の著者ですから、もちろん欧米の人ばかりですが、我々の知っている人が多数います。

 芸能人ではマリア・カラス、ピーター・フォンダ、ジョディー・フォスター、ルイ・アームストロング、黒人メジャーリーガー・ジャッキー・ロビンソンなど。

 政治家がすごくてビル・クリントン、ダイアナ妃、イギリス王室、ワシントン、チェ・ゲバラ、ブッシュ家、ケネディ家、マーティン・ルーサー・キングなど。

 学者ではアインシュタインなど、そして心理系の方は必読、フロイト、アドラー、ユング、ベイトソン、エリック・エリクソンが登場します。

 彼ら偉人たちの「家族問題」が白日にさらされていて、面白いこと面白いこと。特にフロイトは彼の人生に添って何枚ものジェノグラムを使って解説されていて、「なるほど、こういう人生を送った人なんだ」と知ることができます。

 夫婦、親子、親族との困難な関係、アルコール依存症、精神病、虐待、自殺等様々な問題の中で生きてきたことがわかって、彼らも大変だったんだなあ、だからこそ偉大な仕事を成し遂げたんだなあ、という共感もわきます。

 臨床家はそのためだけでも読む価値があると思います。

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December 23, 2018

フロイトと催眠

 高石昇・大谷彰著『現代催眠原論』(金剛出版)には、かのフロイトがいかに催眠が「下手」だったかが暴露されてます(知っている人は知っているけど)。

(引用開始)

 …フロイトの催眠は患者のニーズを無視した、粗雑で柔軟さにかける、荒っぽいアプローチであったという。

  フロイトにとって催眠とは患者を駆り立て、強制することによって自分が患者から得たいと思った情報を引き出す策でしかなかった。催眠という極めて力動的な現象や、催眠関係から生まれるさまざまな反応を度外視した、融通性に欠ける、実にぞんざいな使い方であった。(Klein[大谷(訳)]1958 ,p63[強調原文])

 催眠誘導に関するフロイトの理解はまったく歪んだもので[…]「私は患者の面前に指を立てて「眠れ!」と大声で怒鳴った。すると患者は驚きと困惑の表情をみせて椅子に沈み込んだ」。まさかと思うかもしれないが、覚醒に至ってはさらに劣悪であった。「さあ今はもうこれで十分だ!」と叫ぶのが彼のやり方であった。(Rosenfeld [大谷(訳)] 2008,p.62[強調原文]

 こうした記述から、フロイトの技術は荒々しいもので、このため効果が思うように上がらず、その結果彼が催眠に見切りをつけた理由が十分納得できるであろう。 p43‐44

(引用終わり)

 これではとても催眠はかからなかったでしょうね。僭越ながら、私より下手だと思います(笑)。 

 そしてフロイトは、「俺には催眠は無理だ」とあきらめて独自の道を進み、精神分析学を創始したわけです。

 ここで大事なのは、フロイトは、催眠を極めてその限界を悟って、精神分析学を創ったわけではけしてないということです。それこそアドラー的にいうと、催眠ができない劣等感の補償として、天才的な思考力と文筆力で精神分析学を創った、と考えることができます。

 それ自体は素晴らしいことで、さすがフロイト、ということですが、やはりそこには限界があったかもしれません。

 数学が苦手な人が高等数学を語る、野球の素人がイチローの能力の秘密を語る、武道の初心者が奥義を語る、極端にいうとそれに近いところが必ずあったはずです。天才フロイトにしても、人の心や行動について、わかっていないところ、見えていないところが多々あったでしょう。

 現に行動主義者からの執拗な批判は今に至るまで止まないし、アドラーもユングも、フロイトの後継者たちも、「それはないんじゃないの」「それは言い過ぎじゃないの」「これ言わなきゃダメでしょう」と、次々と反論や修正をしてきたわけです。

 その結果、精神分析学はホーナイなどの「ネオ・フロイディアンはネオ・アドレリアンだ」とエレンベルガーに言われ、コフートの自己心理学も和田秀樹先生から「アドラーそっくり」と言われる程、アドラー心理学に近づいてしまいました。

 でもそれを、日本の精神分析学の人は絶対に言いません。言えないというか、まあ、指摘されると嫌な気持ちになるんでしょう。だから私も普段人前では、悪いから言いませんけどね。

 その点においても、今後の心理臨床界は、催眠に改めて注目するといいかもしれません。

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December 19, 2018

『現代催眠原論』

「催眠は心理療法の母」、「全ては催眠から始まった」とはよく言われることですが、催眠ほどわかりにくく、誤解されやすいものはありません。

 でも誤解されるのは無理はないかもしれません。そもそも、正解がはっきりしないからです。

 いったい、催眠とは何だろうか、実はこの疑問は心理学の根本疑問の一つだと思うのですが、実はいまだに決着がついていません。いまだに欧米の心理学者、セラピストたちの意見の一致はないのです。

 しかし、催眠は心理療法だけでなく、シャーマニズムや宗教も関係し、人類最古の精神技術でもあります。催眠に比べたら、キリスト教の告解や座禅なんて、まだまだ新参者かもしれません。というか、多くの宗教システムの中に、実際は催眠は入り込んでいるはずです。

 武道・武術も、修行システムや実際の技の中に催眠的要素は多々見られます。だから心理療法家だけでなく、武道家も催眠はたしなんでおいた方がよいと思います。

 現代の催眠研究の最前線の知見をまとめ上げたのが、高石昇・大谷彰『現代催眠原論 臨床・理論・検証』(金剛出版)。斯界の最高峰の先生方による、催眠の超基本文献です。分厚いけど、心理療法をうまくなりたい人、さらに能力を上げたい人は絶対触れておくとよいと思います。

 日常臨床で多少催眠的なことをやったり、瞑想を実施する私には、とても勉強になりました。

 次回以降、内容の学術的で本質的なところは長くなるし面倒だから書きません(勉強してください)が、読んで面白かった個所を紹介します。

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October 29, 2018

『ウクレレきよしの歌謡医学エッセイ』

 昭和歌謡をヒントに人間心理、面接の極意を語る、とても面白い本です。

 長田清『ウクレレきよしの歌謡医学エッセイ 歌は世につれ予は歌につれ』(幻冬舎)

 著者は沖縄出身、沖縄で活動している精神科医。ブリーフセラピー関係の会報誌にとても面白いエッセイを書いていたので、何となく存じ上げてはいました。それが歌謡曲、ポップスにこんなに造詣の深い人だとは知りませんでした。「

 懐かしのメロディーにはよりよく生きるヒントが隠れている。

 昭和歌謡にまつわる自身のエピソードを織り交ぜ、精神科医のストレングス(強み)で歌詞から人間心理を読み解く。  

 中条きよしの『うそ』に直観力を感じ、SMAPの『世界に一つだけの花』に解決志向アプローチ、『 Let It Go~ありのままで~』にマインドフルネスの概念をみる。

 沖縄在住・精神科医の捧腹絶倒エッセイ    (帯より)

 今年の日本ブリーフセラピー学会の懇親会で、この長田先生が舞台でウクレレを抱えて気持ちよさそうに歌っていたのを見て、翌日出店していた書店で早速買い求めて、サインをいただきました。本の通りに気さくで、腰が軽くて、面白い先生でした。

 面接や仕事で疲れた合間にどうぞ。

 

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October 12, 2018

脳のモジュール構造と自閉症

 前記事の小林朋道著『進化教育学入門』(春秋社)から。

 人の知能はいろいろな知能の種類からできているという「多重知能論」というのが今の心理学の定説となっていますが、それを進化心理学がさらに進めて、「進化的適応」という観点から、人は生きる環境に適応でき、繁殖できるためにさまざまな「課題専用モジュール」を脳に作り上げたと考えたようです。

 いわばパソコンの各種ソフトのように、ある課題に向けて動き出すソフトウェアがあらかじめ脳にビルトインされているのです。

 その方が汎用性のあるソフトを作るより、より早く適切に反応できたりして、生存に有利だったためです。

 例えば「同種専用モジュール」は、集団内の他人といかにうまくやり取りするかという課題のために、相手の感情を読み取って判断するソフト。

「物理専用モジュール」は狩猟採集の道具や住居をうまくつくるために、物理的な対象の把握や操作のためのソフト。

「生物専用モジュール」は食物になる動植物や有害な動物にいかに適切に対応するか、生物の特性の把握や操作のためのソフト。

 同種専用モジュールの下位には、「言語専用モジュール」があると想定されています。これは言葉を習得して生み出すソフトで、言語学者のチョムスキーのいう普遍文法に相当すると考えられます。

 本書では、自閉症についても言及しています。

 自閉症と判断された人の中には、物理専用モジュールがとくに発達しており、計算や図形の認知・記憶等に驚くような能力を示す人もいます。また、同種(ヒト)以外の動物について、顕著な理解・記憶能力を示す人もいます。

 突出するモジュールにはさまざまなケースが見られますが、自閉症は、「同種専用モジュールの不調」を根本に据えることによってよりよく理解できる、という点では多くの研究者が同意していると言えるでしょう。 p126

 我々が知っていることを進化心理学的に言い換えているわけで、確かにそうだろうなと思います。

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October 09, 2018

『進化教育学入門』

 実は私、けっこう動物好きで、小さい頃から動物園や動物番組が大好きでした。ペットも犬、猫、カブトムシやクワガタはもちろん、ウサギ、ニワトリ、蟻、鈴虫、コウロギ、金魚などいろいろ飼いました。

 動物番組といっても人と動物の交流を面白くしたバラエティではなく、アフリカや海などを長時間本格的にロケしたドキュメンタリーです。ここはNHK嫌いの私も、同局のスペシャル番組を大きく評価するところです。

 だから昔から動物行動学も好きで、最近は、進化心理学というのに注目しています。。

 動物としての人は、学習をするにも恋をするにも、どんな行動にも動物で働いている原理が当然働いているはずで、そこを外してはいけないと思うわけです。

 前記事の七沢研究所のスタッフと心の進化についての勉強中に勧められたのが、

 小林朋道著『進化教育学入門 動物行動学から見た学習』(春秋社)

 動物行動の原理から考えられる効率的な学習法が説かれているのですが、単なる勉強法というより、なぜ科学的知識を身につけるのが難しいのか、動物としての人の思考の在り方との齟齬を指摘しているところが面白かったです。

「動物行動学で学習の理論を統一する」のが本書の目論見です。

 著者は高校の先生から大学の先生になった人のようで、理科で工夫を凝らした授業をした様子が描かれていて、こんな先生だったら生物学が好きになっただろうな、と思いました。

 すごく説得力があり、勉強になりました。

 次回以降少しメモします(時間があれば)。

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September 21, 2018

『催眠トランス空間論と心理療法』

 9月は割と研修講師が多くて、13日(金)は山梨県南アルプス市にあるケアプランいなみで、ケアマネジャーなど約15人にメンタルヘルスの話をしました。

 さて、最近読了した本です。催眠に関心のある方は必読です。

 松木繁『催眠トランス空間論と心理療法 セラピストの職人技を学ぶ』(遠見書房)

 といっても臨床心理士やカウンセラーにどれくらい催眠に興味を持つ人がいるかわかりませんし、そう軽々と学び、身につけられるものではありませんが、実力をつけるには、催眠をやるやらないは別として、知っておくべきだと私は思っています。

 年末には公認心理師が世に大量に生まれます。心理の基礎資格として、多くの人が持つことになります。これからは心理職サバイバルの時代になると思います。そうなれば、逆に専門性が問われ、どれだけの付加価値をその人が持っているかが問われるようになるかもしれません。

 その時、変にスピリチュアルではない「正当な催眠がわかる、できる」というのは、いいかもしれませんよ。

「催眠は心理療法の打ち出の小槌」と言われています。いろいろな心理療法との組み合わせも可能です。催眠精神分析、催眠認知行動療法というのも既にあるらしいです。

 そこで本書ですが、日本で催眠療法の第一人者である著者が、催眠の本質を独自の「トランス空間論」として説明しています。では、それは何かというと、難解というわけではないのですが、ここでの要約が大変なので本書を見てください。

 実は「催眠とは何か?」というのはいまだに解けない難問で、「状態論」とか「非状態論」とか、世界中で議論が戦わされてきました。著者はそこに一定の視点を与えようと挑んでいると思います。

 本書でさらに面白いのは、後半にやはり一流の催眠療法家や心理療法家が次々と出てきて、自らの方法論と「松木理論」との対話を寄稿しているところです。私も存じ上げている先生が何人もいます。

 その中に、アドラー仲間で共に活動している八巻秀先生(やまき心理臨床オフィス、駒澤大学教授)もいます。だからアドラーも出てきますよ。

 なんか名人たちの面接室の楽屋裏(?)を覗いているみたいで、そこも大変面白かったです。

 玄人向けですが、是非どうぞ。

 

 

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September 17, 2018

『J‐マインドフルネス入門』

 マインドフルネスブームの中に一石を投じながらも、臨床的にも面白い本です。

 山田秀世著『J‐マインドフルネス入門』(星和書店)

 マインドフルネスといっても本書は、仏教瞑想をベースにしたマインドフルネス瞑想ではなく、そのエッセンスは既に森田療法にあったことを主張しています。

 既にマインドフルネス瞑想と森田療法の共通性は専門家の間で認識されていて、何年か前に関係団体間でシンポジウムなどは開かれたこともありました。

 著者の山田先生は、

 でも、その本質的な側面(マインドフルネスのこと=ブログ主注)、つまり「今ここの体験を重視して、それを評価することなく、そのあるがままに受容していく」という方法や態度は、実は日本固有の治療法である森田療法の核心をなす部分にほかなりません。

 森田療法は、不安や症状と闘ったり排除しようとする姿勢をよしとせずに、それらを“あるがまま”にうっちゃっておくことを特徴としています。 p1

 と説明しています。

 マインドフルネスは本質的にはある心的態度であり、瞑想はそのための一つの手段に過ぎないわけですから、確かに十分に考えられることです。

 本書は森田療法のエッセンスと、ストレスマネジメントに役立つ簡単なテクニックの解説が、森田療法の達人で、日本笑い学会員でもある山田先生ならではの軽妙な筆致で説かれています。臨床家にも、一般の方にも役立つと思います。

 私は先月参加した日本ブリーフサイコセラピー学会京都大会の書籍コーナーで本書を見つけて早速購入し、参加していた山田先生にお会いしてサインをいただきました。

 しかも前々記事で書いたように、私はヒューマン・ギルドで山田先生の森田療法のワークショップに出たことがあったので、先日受けた公認心理試験になんと森田療法が出題されたのを見て、(そこだけは)「やった!」と思いましたね。 国試受験

 けっこう恩を受けています。

 そうそう、森田正馬とアルフレッド・アドラーはほとんど同時代人です。山田先生もこの二人の思想に出会って精神科医を志したと、紹介欄に書いています。マインドフルネスだけでなく、森田療法とアドラー心理学も共通性の高さが認められます。

 この二つはこれからも要注目ですよ。

 

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September 12, 2018

『可能性のある未来につなげるトラウマ解消のクイック・ステップ』

 ブリーフセラピーやエリクソン催眠の視点からトラウマを扱うときの格好の参考書です。

 ビル・オハンロン著、前田泰宏監訳・内田由香里訳『可能性のある未来につなげるトラウマ解消のクイック・ステップ 新しい4つのアプローチ』(金剛出版)

 私はオハンロンさんが好きで、ワークショップにも出たことがありますし、これまで何冊もここで紹介をしてきました。本書はトラウマ治療に焦点を当てていて、いつものやさしいオハンロン調を感じられて、とても気持ちよく読めました。

 トラウマを解消するためには、そのトラウマになった過去と向き合い、何度も追体験することが必要だとされてきた。その追体験の過酷さから、トラウマを克服するのは困難だとされてきたのだ。

 本書は、オハンロンが「解決志向」「未来志向」「可能性療法」「インクルーシブ」「スピリチュアリティ―」「エリクソニアン催眠」「ストレングス」「ポジティブ・サイコロジー」といった枠組みや概念を通じて提示してきた臨床に関する豊かなアイデアや手法をトラウマ解消のために生かした、臨床家向けの実践書である。(表紙裏解説より)

 特に未来志向のところは、アドラー心理学のセラピストも十分に活用できると思います。オハンロンさんはフランクル(この人もアドラーの弟子だった)のエピソードを引いた後、いいます。

 セラピーでは大抵(時間と因果関係に関するほとんどの西洋の概念では)、私たちは過去が現在を作っているという考えを持っています。私は、未来(あるいは少なくとも、私たちの想像上の未来)は、現在に対してかなり大きな影響を及ぼしていると提言します。 p60

 アドラー心理学の目的論と重なるのは明らかです。トラウマ治療をする前に、本書をちょっと開いて目に入ったとこを読むだけで、セラピストは勇気づけられると思いますよ。

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